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フレイディの不思議1

 ある夜の湯上がり、アマリアは自室の窓辺で涼しい風を感じていた。


 もうだいぶ暑くなってきているが、夜は風が涼しくて、湯で火照った体に心地いい。


 そのぶん、冷えすぎるといけないので、ほどほどにしなくてはいけないが。


 その通りのことを、やってきたひとに言われてしまった。


「お嬢様、ほどほどにしてくださいませよ。お風邪など召されたら困りますわ」


 こんこん、とノックのあと入ってきたのはアマリア付きのメイド、ハンナ。


 トレイにティーカップを乗せている。


「わかっているわ」


 アマリアは振り返って苦笑した。


 椅子を立って、室内にあるソファへ移動した。


 腰掛けると、その前のローテーブルに、ハンナがあたたかなココアの入ったカップを置いてくれた。


「ありがとう」


 アマリアはお礼を言い、それに手を伸ばした。


 就寝前には大抵、ココアかホットミルクが出てくる。


 冷たい飲み物が美味しい季節ではあるが、眠る前にはあたたかなものを飲むように、昔からそう育てられている。


 体があたたまっていたほうが寝付きやすいそうだ。


 ココアに口をつける。


 甘さも温度も、アマリアの好みちょうどにされているココアは心地良く喉を通っていった。


「近頃、絵画に励んでおられますね」


 そのアマリアの近くに立ちながら、ハンナは何気なくそんな話題を出してきた。


 ハンナはアマリアが子供の頃から世話をしてくれている専属メイドで、アマリアにとっては母ほどの年齢に当たる。


 母がもう亡いアマリアにとっては、母親に近くも感じている存在だ。


「ええ。なるべく早く仕上げたいの」


 アマリアはそのハンナのほうを向き、見上げて、にこっと笑った。


 絵の進捗は滞りなかった。


 デッサンはとうに終えて、色塗りもだいぶ進んでいる。


 遅れていないことも嬉しいし、単純に描いているのが楽しくもある。


「レノスブル家のご令息にご依頼など、素晴らしいですね。お嬢様の絵が認められて、わたくしも嬉しいですわ」


 その言葉の通り、ハンナの声は明るかった。


 子供の頃から世話をしてもらっているだけあって、アマリアの絵画好きはよく知られているのだ。


 ハンナのことも、何度か描いたことがあるのだし。


「そう? ありがとう」


 素直な褒め言葉が嬉しくて、アマリアも声が明るくなった。


 そのまましばらく今、描いているあの絵の話をしていたのだけど、ココアがなくなったあと、別の話になった。


「フレイディ様はあまり浮いたお話も耳にしませんし、お嬢様のことも安心してお任せできますわ」


 椅子に戻ったアマリアのうしろに立ち、長い銀の髪をとかしてくれながら、ハンナは不意にそんなことを言う。

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