肖像画の依頼3
「え、え、あ、あの、そんなはずはないですわ……、私のものなどただの趣味ですし……、画家さんのほうが上手に決まっております」
そこまで褒めて、気に入ってくれたのは嬉しいけれど、身に余り過ぎることだと思う。
流石のアマリアもたじたじになってしまう。
確かに絵を描いてほしいと言ってもらえたのは嬉しいし、描いてみたいと思いはした。
でもなにか、大きなことに使うらしいのだし、すぐに「いいですよ」などと言えるものか。
「上手い下手の問題じゃないさ。絵に一番大事なのは、心を惹くことだと私は思っている。それがきみの絵には詰まっているんだ」
更に食い下がられる。
おまけにずいっと顔を近付けられて、アマリアの心臓はもう一度、どきんっと高鳴った。
顔も赤くなりそうになる。
整った顔立ちと、美しくて優しい、そして今は熱のこもった金色の瞳に、こんな間近で見つめられれば。
「無理なお願いなのはわかっている。が、良かったらサンプルだけでもいい。描いてくれないだろうか」
そこまで言われて、アマリアは根負けした。
これ以上見つめられるのは恥ずかしいし、それに、自分も描いてみたいと思ったのだ。
これほど熱心に頼まれれば、嬉しいし、断る気持ちなど、もはや建前しか残っていなかった。
「……かしこまりました。では、小さめのものでよろしければ……」
アマリアの受け入れる返事に、フレイディの顔も声も、ぱっと明るくなった。
声などは弾んだくらいだ。
「本当かい! ありがとうっ!」
ぎゅうっと手を握られて、アマリアはますます居心地悪くなってしまう。
貴族の男性がそうあるように、白い手袋をしていて、それ越しではあるけれど、これほどしっかり握られてしまっては、体温がしっかり伝わってくる。
アマリアには大変くすぐったいことであった。
「では、日程はおいおい……、ああ、なんと嬉しいことだ! アマリア嬢をお招きして良かった!」
やっと手を離してくれても、フレイディは大変嬉しげだった。
アマリアのほうも嬉しい。
嬉しいことは嬉しい。
だが既に感じていた。
これはだいぶ大ごとになる。
いや、大ごとかつ、重大なことに巻き込まれてしまったのだろうな、と。




