肖像画の依頼2
どれも素敵だった。
ざっくりと描かれたものではあるが、高い技術を持った者が描いたのだとわかる。
すべて油絵だったが、モチーフは様々だった。
植物、花、庭、静物……。
アマリアはその一枚一枚を、しげしげ見ていった。
「素敵ですね。丁寧に描かれています」
褒めたのだけど、フレイディは何故か、言葉を濁らせた。
「うん……そうだろうけどね」
不思議に思って、アマリアはフレイディを振り返った。
フレイディはそのアマリアに苦笑を向けてくる。
「実は、肖像画を頼もうと思って描かせたサンプルなんだ」
「肖像画!」
言われたことでアマリアの顔は、ぱっと輝いてしまった。
肖像画。
人物を本格的に描くもの、アマリアも大好きだ。
家では父や親戚、御付きなどしか描いたことがないけれど、どのときも楽しかったものだ。
でもフレイディの様子はあまり嬉しそうではないし、それどころか、困った、という様子ですらあった。
その通りのことが、次に出てくる。
「しかしあまり心に響かなくてね……、また別の画家に描かせようと思っていたところだ。領内の画家にはほとんど描かせてしまったから、よそに頼もうかと悩んでいたんだよ」
アマリアはぱちぱちと目をまたたかせてしまった。
確かに、肖像画というなら、長く残るのだろうし、本当に気に入る絵柄の画家に頼みたいだろう。
しかしよそに頼むまでというのは相当だ。
よっぽど大事に使うためのものなのだろうか。
アマリアはそれを聞いてみようかと思ったのだけど、その前にフレイディの表情が、がらっと変わった。
ぱっと明るいものになる。
「そうだ! 画家様ならここにいるじゃないか! どうだろう、アマリア嬢。肖像画に取り組んでみてはくれないだろうか?」
その目は真っ直ぐにアマリアを見ていた。
その明るくて、飾り気なく、素直な瞳と表情は、何故かアマリアの胸を高鳴らせた。
勿論、それだけではない。
言われたこと、その内容自体がだいぶ大ごとである。
「……ええ!?」
驚きの声しか出なかった。
目も真ん丸になってしまう。
「私はアマリア嬢の絵を見て、大変心を惹かれたんだ。ここにある絵たちにはちっとも心が動かなかったのに、まったく違っていたよ。直感的なものだけど、それだけに確信できる。アマリア嬢ならきっと素敵な肖像画を描いてくれると!」
しかしフレイディはすっかり前向きになってしまったようだった。
今度はあちらから、がしっとアマリアの手を握ってきて、熱を込めてお願いしてくる。




