肖像画の依頼1
「まぁ……! こちらをすべて!?」
目の前にずらりと並べられた品を見て、アマリアは目を丸くしてしまった。
声も高くなる。
「ああ、勿論。気に入ってくれるなら持っていっておくれ」
そんなアマリアの横で、フレイディはただ、にこにこしていた。
アマリアが嬉しそうに驚いてくれて嬉しい、という気持ちが溢れていた。
「まぁ、まぁ……これほどたくさん、お店のようです!」
物珍しくなって、アマリアは並べられた品々……絵の具や筆、キャンバスなどの様々な画材に近付いた。
確認するように、回りを歩く。
「そうかな? 見繕いに行った店はもっとたくさん並んでいたよ」
なんと、伯爵令息自ら足を運んで選んできてくれたのだという。
アマリアはそれにも感動してしまった。
「そうなのですね! 私はお店にあまり行ったことがございませんので……、いえ、それより!」
もはや目をきらきらさせてしまったアマリア。
ばっとフレイディを振り返り、数歩近付いて、その手を取っていた。
「ありがとうございます! とても嬉しく思います!」
きゅっと手を握って見上げた先の、フレイディの目が丸くなった。
驚いた、という感情が目に浮かぶ。
でもすぐに、ふっと緩んだ。
金色の瞳が優しい色になる。
「気に入ってくれて嬉しいよ」
そのあと詳しく品物を見た。
絵画やその道具にはまるで詳しくないから、有識者を呼んで選んでもらったとか、レノスブル領で一番大きくて有名な画材店へ行って、買ってきたのだとか、フレイディは話してくれた。
アマリアはやり取りをしながら、楽しくてならなかった。
こうして明るく話ができることにも嬉しくなる。
それは目の前に並べられて、贈り物だと言われた大好きな絵を描く道具たちよりも、嬉しいくらいかもしれなかった。
フレイディは「気に入らないものは置いていっていいよ」と言ったが、そんな勿体ないことをするものか。
むしろ残していくほうが失礼だ。
アマリアはお気持ちに甘えることにして、すべて持ち帰ることを決めた。
すぐに同行していた御付きが、馬車に積み込む支度をはじめてくれる。
そのことで、アマリアは部屋の隅にあったものに気が付いた。
何枚か、置かれているそれは額に入った絵画だった。
だが飾られているわけではない。
丁寧に置かれてはいるが、壁に掛けられてはいなかった。
「フレイディ様、あちらの絵は……?」
アマリアの視線を追って、フレイディは初めてそこに『それ』が置いてあることに気付いたらしい。
気まずそうな顔になった。
「おや、まったく、片付けておけと言ったのに……すまない、私的に使った絵だ」
しかしアマリアは興味を惹かれてしまった。
見てみてもいいかフレイディに許可を取り、近付いた。
まじまじと見る。




