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薔薇の庭と和解3

 本当にもう怒ってなどいない。


 それよりも……。


「それに、私こそ申し訳ございませんでした。突然のことにかっとなったとはいえ、あれほど声を上げて睨みつけるなんて……」


 今思えば、激高してしまったことに恥ずかしくなってくる。


 どれほど度量の狭いことだっただろう。


 ちょっと眉を下げ、謝ったアマリアにフレイディは驚いたようで、手を軽く横に振った。


「なにを、きみに非はまるでないだろう。怒られて当然だったよ」


「ですが……」


 アマリアが声を濁らせたのを途中で止めて、フレイディが続ける。


「それにきみに叱られて、なんだか嬉しかったんだ」


 ……嬉しかった?


 アマリアは疑問を覚えた。


 顔を上げてフレイディを見ると、彼はにこっと微笑んできた。


「こういった身分で、成人もしていると、悪いことを悪いとはっきり言ってくれるひとは少ないからね。先ほどのハリソンなどは身内のようなものだからともかく、よその方は皆、当たり障りなくおっしゃるだろう、そういったものを感じなかったのだから」


 目を丸くしてしまった。


 なんと素直な方だろうか、と感じ入ってしまう。


 でも、と思った。


 自分が感じたことを素直に口に出したのは、きっと良かったのだ。


 相応しかったかどうかはわからない。


 でも、フレイディがそれを嫌だと思わなかったのは確かだ。


 それならきっと、良かったのだろう。


「……私はただ、かっとしてしまっただけです」


 言ったことは、はにかむような声になった。


 フレイディはそのアマリアに、もう一度笑ってみせる。


「その素直さが嬉しかったんだ」


 フレイディの手が持ち上げられる。


 アマリアの銀の髪に、軽く手が触れてきた。


「本当にありがとう」


 髪の表面だけを軽く撫でられて、アマリアはちょっと目を丸くしてしまった。


 お礼と、親しみを込めてくれたのだ。


 それは嬉しい。


 でも……。


「ちょっと、子供扱いなさらないでくださいませ!」


 そうだ、これはほんの子供にするようなものではないか。


 アマリアは膨れてしまう。


 フレイディは途端、慌てた様子で手を引いた。


「そ、そうか、すまない……ああ、またこれだ。私はもう少し、慎重になるべきだな」


 頭に手をやり、謝ってくるフレイディ。


 アマリアはすぐ、膨れたのを解いて、代わりに笑った。


「お気持ちは嬉しかったですけど」


 その場にあたたかな空気が流れた。


 レオンが「自分もかまって」と言いたげにアマリアとフレイディの間に割り込んできて、アマリアは今度、遠慮せずレオンを撫でてやった。


 あのとき絵の具だらけだった汚れはもうすっかり落ちて、真っ白で美しい毛並み。


 あの絵の具の汚れが落ちたのと同時。


 自分たちの間にあったわだかまりも落ちていったようにアマリアは感じて、明るい気持ちでいっぱいになった。

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