薔薇の庭と和解2
アマリアは彼を見上げる。
「なんでしょう?」
シンプルに聞き返したが、そのあと言われたことに少々驚いた。
「いや、償いをすると約束しただろう。あれを用意したんだよ。見てほしいなと」
優しい言葉に嬉しくなってしまう。
だって、今日のお呼ばれが『償い』に相当するものなのだろうと思っていたのだから。
また別に、わざわざ用意してくれたなんて。
「あら! 本当に。お呼ばれだけでもじゅうぶんすぎると思っておりましたのに、お気遣いいただき、すみません」
声も明るくなった。
アマリアの反応を見て、フレイディはほっとしたように表情を緩めた。
「いやいや、アマリア嬢の大切なものを傷めてしまって申し訳なかったからね。気に入ってくれると良いのだけど」
「いえ、そんな。ですが楽しみです」
宮廷へ帰るのがもっと楽しみになったアマリア。
建物に近付いたとき、フレイディが少しだけ道を外れた。
「レオン! レオン! いるならおいで!」
急に声を上げるのでアマリアはちょっとびっくりした。
しかしすぐ気付く。
あの大型犬だ。
きっとこのあたりに小屋などがあるのだろう。
その呼び声に反応したように、たったっと向こうから軽快な駆ける音が聞こえてきて、ガサッ、と大きな音と共に藪を掻き分けて、レオンが顔を出した。
「レオンさん!」
アマリアの顔は明るくなる。
つい名前を呼んでいた。
レオンのほうもアマリアのことがすぐわかったらしい。
すぐに二人の近くまでやってきて、アマリアの足元にまとわりついた。
ふわふわした白い毛並みがアマリアの長いスカートに擦れる。
「こんにちは、お邪魔しております」
アマリアはレオンの歓迎におかしくなってしまいつつ、挨拶をした。
フレイディがかたわらにやってきて、膝をついてレオンの背中を撫でる。
「ほら、レオン。先日のことをお前からも謝るんだ」
促すような手つきからか、言葉からか、レオンはそれを理解したらしい。
顔を上げて、アマリアを見つめ、すっと腰を落として『おすわり』をした。
そしてくぅん、と鳴いたのである。
まったく、完璧な『謝罪』であった。
アマリアの目元が緩む。
ふっと笑って、スカートを持ち上げた。
土につかないように気を付けてしゃがむ。
「もう良いのです。ありがとうございます」
少しためらったが、手を持ち上げた。
レオンの頭に触れる。
白い毛並みはふわふわしていて、滑らかだった。
アマリアの手の下で心地良く滑る。
「ありがとう、アマリア嬢。本当にすまなかった」
フレイディのほうはレオンの背中を撫でていた。
優しい手つきだ。
「これほど謝っていただいて、じゅうぶんすぎるほどです。もうおしまいにいたしましょう?」
アマリアはフレイディ、レオン、二人に笑ってみせた。




