契約の残り時間3
ただ、それを口に出すのはためらわれた。
違っていたら、そう望んでいるのかと思われてしまうかもしれない。
やはり約束をたがえることになるだろう。
「まぁ、今回の一日は我慢するよ。だから帰ったら一緒に過ごそう」
けれどアマリアがどう答えたものかと思っているうちに、フレイディは表情を変えた。
ぱっと笑顔になる。
アマリアは逆に、きょとんとした。
「え、ええ……、そういたしましょう」
でもおかしなことを言われているわけではない。
そう答えた。
実際、一緒に過ごそうと誘ってもらえるのは嬉しいし、楽しみなことだ。
「次はアマリアも一緒にディトとして行きたいな」
うきうきした様子でフレイディはそう話しはじめ、アマリアも楽しい気持ちになってそれを聞いた。
「ディト……ですか。あまりしたことがないです」
実際、すぐに同居することになってしまった経緯もあって、外へ遊びに出掛けたことはほとんどなかった。
外出は何度もしたが、すべて家の用事だったのだ。
アマリアの返事に、フレイディはもっと顔を輝かせた。
「本当かい! では特別なところへ行かなければね。少し遠いが、レノスブル家の別荘があるのだ。そこへ行ってみるのはどうだろう」
「まぁ、それは楽しそうです」
あそこがいいか、いや、別のところも良い、などと算段をはじめたフレイディ。
アマリアは楽しくそれを聞いたが、同時に少し疑問も出てきた。
すなわち、残り一ヵ月ほど。
肖像画の仕上げも佳境なのだし、それに集中したい時期だ。
ディトも別荘もやぶさかでないが、そんな時間はあるだろうか?
ただ、今それを言うのは不適切だろう。
別に、いつが予定とは言われていないのだし。
なのでアマリアは言うのをやめておいた。
ただ話を聞いて、こういうことがしたいという提案を色々聞いて楽しんだ。
しかし、そのあとそれぞれ分かれて一人になったあと、少し考えてしまった。
フレイディ様は、寂しいとおっしゃったり、なのにまるでだいぶ先も一緒に過ごすようなことをおっしゃったり、あまり一貫しておられないような気がするわ。
そのようなことが浮かぶ。
アマリアにとっては少々首をひねってしまうような剥離であった。
それでもやはり、指摘するところでも、追及するところでもない。
それに聞いてしまうのは少し怖いような気もする。
思って、アマリアは自分で驚いた。
怖いというのはすなわち、終わりの日が来るのが怖い、という意味に決まっていた。
私は、本当のところ、どの程度の寂しさや惜しさを感じているのかしら。
そうも考えてしまったアマリアは、やはり自分の心の奥底は、いまいちわかっていなかったといえるだろう。




