二人の蜜月1
春という良い陽気も手伝って、アマリアの肖像画製作は順調だった。
既にほぼ完成状態になり、気が済めばいつ終わっても良い段階まできていた。
しかしアマリアとしては時間があるならもっと、もっと良いものにしたいと思う気持ちがある。
よって「もう少し描き込みます」とフレイディに伝えていた。
フレイディは「もうじゅうぶん完成に見えるがねぇ」と、しげしげと絵を見ても不思議そうにしていた。
絵には詳しくないと自分で言っていたので、そう感じるのは自然だ。
ただ、子供の頃から肖像画は何枚も描かれているのだ。
画家がそういうこだわりを持つものだということは知っているようで、「気が済むまで描き込んでおくれ」と言ってくれた。
フレイディの爵位継承式典用肖像画。
晴れ舞台に相応しい出来のものにするのだ。
その決意がアマリアをより集中し、またやる気を出させていた。
これまで以上にアトリエにこもることになった。
また、頻繁にフレイディを呼び出した。
「光の具合を見たいのです」とか「お顔の造形を照らし合わせさせてください」とか、色々と要求することもあった。
フレイディは「宮廷画家様は仕事熱心だ」と苦笑しつつも、大抵それに応えてくれた。
そのフレイディ。
想いを告げ合っても、特になにも変わらなかった。
なにも変わらなかった、というのは関係的にということだ。
なにしろ既に婚姻している夫婦なのだから、これ以上進みようがない。
恋仲というのも、気持ちの上ではそうなったとはいえ、名乗るのには『夫婦』のほうが結びつきは強い。
よってやはり特に変わった点はないのだった。
けれど、やり取りは少し変わった。
フレイディはアマリアからも気持ちを告げ、想いが同じものとして通じ合ったのを、とても嬉しく思ってくれたようだ。
事あるごとに、アマリアに愛を注いでくれるようになった。
触れたり、抱きしめたり、肩を抱いたり……、体が触れ合うことも格段に増えた。
勿論、これまでのものとは少し違う意味だ。
今までのものは、『アマリアに好意を抱いてほしい』という気持ちでの、ある意味、求愛といえるものだっただろう。
それが今は『二人の気持ちを確かめたい』というものになった。
一歩も二歩も進んだこと。




