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出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました  作者: 瑠美るみ子


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43 責任の取り方(上)

「アルカナ君! アルカナ君じゃないか! 久しいな! 卒業以来だ!」


 午後のティータイムに差し掛かる頃。客人を出迎えたソフィアは、夫の弟でありかつての教え子でもあるアルカナとの再会を喜んだ。

 客間では義弟と小さい女の子が並んで座っていた。その胸元には人形ほどのゴーレムを抱いている。アルカナが会釈をすれば、隣の彼女も同じように頭を下げた。どこかで見たような顔立ちにソフィアは引っかかるも、義弟の声で意識を戻される。


「ひ、ひひ……お久しぶりです。ラミネル先生……」


「おいおいおい、アルカナ君。よそよそしいではないか! どうせなら『ソフィア義姉様』と呼んでくれよ! ラミネル先生だと、夫と区別がつかないしな!」


「じゃ、じゃあ、ソフィア先生で……かつての恩師に義姉様は難しいです、ひひっ」


 ソフィアはアルカナの記憶の姿よりは老けていたが、相変わらずの快活さで同い年のエフォリウスよりも若々しい。下手したら十も年下の自分よりも元気なのではないかと、アルカナは苦笑した。


「それで、今日はいきなりどうしたんだい? 小さな女の子まで連れて。アルカナ君の隠し子ってわけでもないだろう」


 ソフィアが対面に座って、じっとレクティタを見る。ソフィアの垂れ目で柔らかい印象とは裏腹に、その眼差しは鋭かった。


「初めましてお嬢さん。私はソフィア・ドゥ・ラミネル。こう見えて子爵だ。君の名前は?」


「はじめまして。レクティタです。こっちはゴーイチ。エフォリウスさんからのアドバイスで、とうぼーしてきました。魔法がくいんから」


 はきはきと喋るレクティタに、ソフィアは方眉を上げた。


「レクティタ? ……ああ、なるほど。あなたが例のお方なのですね。そしてフォーと会ったと……へぇ……何があったのか詳しく聞いても?」


「もちろんです! えっとね、まずねー。レクティタがアルカナのかばんに忍び込んでー」


「レクティタ隊長。ひひ、ソフィア先生には僕から話すから……」


 長くなりそうなレクティタの説明を遮り、アルカナはかいつまんでこれまでの出来事を話した。


 部隊での研究から魔法学院での事件、そしてレクティタが魔法を発動し魔人の腕を消し炭にした後のこと。

 魔人のミイラが突然暴走した挙句、学院内で魔法を行使したのだ。ミイラの管理責任者であるエフォリウスとパウロはもちろん、傍からは魔人の腕の暴走を止めたアルカナも事件の経緯を聴取されるのは必須だった。

 レクティタの存在を知られるのはまずい。幸い、姿が透明であるため彼女を見た目撃者は少ないが、いつまで魔法を維持できるのか不明である。そもそも、アルカナが学院に来た理由──軍事絡みであることを、エフォリウスは学院長に知られると厄介だと考えた。

 なので、エフォリウスはアルカナが持ってきた鞄を渡して、弟に言ったのだ。

 「人が集まってくる前に、レクティタ殿下を連れてラミネル家に逃げろ」、と。


「フォーらしいね。自分は後始末をするから、二人の事は私に投げてきたと」


「ひひ、僕が兄様に甘えすぎたせいです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません……埋め合わせは必ずどこかで」


「いや、これはフォーの自業自得で君達のせいではない。最初からアルカナ君に協力すれば済んだ話だ。それに、それだけの話ではないからね、彼は」


 最後は二人に聞かせるのではなく、独り言のように呟いてからソフィアは立ち上がった。


「さ、今日は色々あって二人とも疲れただろう。客室を用意しよう。ああ、その前に昼食は食べたかい? ちょうどティータイムだから、ついでに一緒にどうだ?」


「むっ、おやつですか。アルカナ、食べよう食べよう」


 レクティタはアルカナを見上げ、彼の服の裾を引っ張る。アルカナは困ったように笑った。


「ひひひ……馬車の中で一応食べたけど、お腹苦しくない?」


「へいき。むしろ、お腹ぺこぺこ。おやつは別腹です」


「いひ、そっかぁ。ひひ、じゃあ、お言葉に甘えていただこうか」


 「うん!」とレクティタはニコニコと頷いた。彼女の満面の笑みに可愛らしさを覚えるが、同時にアルカナは困惑していた。


(な、なんで急に懐かれたんだろう……)


 今朝まではまともに目も合わせられなかったはずが、学院での事件後、レクティタはアルカナに臆することなく接してきている。普通に会話できるようになった彼女の変わりように、アルカナは疑問を抱かざるを得なかった。

 なので、彼はこっそりゴーイチに聞いてみることにした。ソフィアに誘われてレクティタが立ち上がった時、アルカナは「ちょっとゴーイチと話してもいい?」と言って彼を預かったのだ。

 ソフィアとレクティタが仲良く雑談しながら、部屋から出て行く。アルカナも少し遅れて二人の後を追った。


「いひ、ゴーイチ。どうして隊長が僕を平気になったか、理由はわかる?」


 両手で掬うように小さなゴーレムを掌の上に立たせ、アルカナが小声で尋ねれば、ゴーイチも小声で答えた。


『ワカラナイ。デモ、レクティタ。アルカナノ、ミカタ、イッテタ』


「ひひ……僕の味方? えっ、僕って隊長の敵だったってこと? ひひ……敵じゃなくなったから怖くなくなったのかな……?」


『アト、ニセモノオバケ、ダカラ。アルカナ』


「??」


『ホンモノオバケ、キケン。コワイ、キモイ。アルカナ、チガウ。ダカラ。アルカナ、ニセモノオバケ。レクティタ、イッテタ』


「ひひひひ……それでもお化け扱いなんだ、僕。子供の考えって摩訶不思議だね……ひひっ」


 結局、一変したレクティタの真意はわからないまま、アルカナはゴーイチを彼女に返し、ソフィアと今後について話を進めた。



*****



 エフォリウスがラミネル家に帰宅できたのは、空が白み月の輪郭が薄くなってきた頃であった。

 屋敷の門の前で辻馬車から降り、御者に多めの報酬を渡す。真面目な門番が門を開けて会釈をしたので、エフォリウスは軽く労ってから屋敷へと戻った。


 文字通り昨日一日、エフォリウスは魔法学院に拘束されていた。事件の騒動の聞き取りはもちろんのこと、なぜミイラが暴走したのか原因究明と、貴重な資料を破壊した責任についても会議で問われていたのだ。


 案の定、アルカナについても言及された。学院は一度、魔法軍側に契約を反故され無許可で発明した魔法を兵器転用された過去がある。以降、学院側は軍事関係者を毛嫌いし、卒業者でも容赦なく冷遇する。完全に軍と関係を断ち切れないのは、予算という人質を取られているためであった。


 エフォリウスの想像より、アルカナについての追及が強くなかったのは意外であった。軍の中で厄介者扱いされている部隊所属だからか、キルクルス家の威光に怖れをなしたのか。はたまた禁忌を犯したと噂されるような男に関わりたくないのか。

 どの理由が一番なのかエフォリウスには判断が付かなかった。一応、アルカナが尋ねてきた理由を「親戚の事で相談に来た」と誤魔化しておいたが、これが功を奏したわけではないだろう。


 ともあれ、レクティタの存在を隠蔽できたのは、エフォリウスにとって今日一番の功績である。

 直接彼女と関わりがあったパウロは、魔力を一度に大量に失い気絶したからか、記憶が混濁し事件の前後を覚えていなかった。幸い命に別状は無いため、安静を取って二日ほど休みを取らせた。

 後日パウロも暴走事件について追及されるだろうが、キルクルス家の親戚の子である「ティタ」と「第四王女レクティタ殿下」の二つが繋がる可能性は無いはずだ。

 そして、彼女が魔人のミイラが暴走した原因であることも。


「……ネイオニー」


 エフォリウスは無意識に持っていた鞄を触った。中には、アルカナに頼まれていた魔導書と──ネイオニーの卒業論文、実験記録表が入っている。

 これをレクティタに渡すべきか否か、エフォリウスは未だ迷っていた。答えが出ないまま、彼は屋敷のロビーを抜け、己の書斎へと歩いていく。

 廊下の蝋燭は所々消えていたが、空の薄明りが窓から差し込んできている。使用人が起きてくる前の、静寂で冷えた時間。エフォリウスは唐突に妻のソフィアが寝ているか気になって、書斎ではなく夫婦の寝室へと向かった。

 だが、道中で客間の一つが開いていて、中の灯りが廊下に漏れていた。エフォリウスが顔を覗かせれば、妻のソフィアが長椅子で寛いでいた。その手には、酒が入ったグラスが握られている。


「あっ。おかえり、フォー」


 ソフィアはグラスに口を付け、夫のエフォリウスを手招きする。彼女が何故ここにいるのか、向かいのソファでぐったりと仰向けになっている弟を見てすぐ合点がいった。コートを脱ぎ、妻の隣に座る。テーブルには、空の酒瓶が両手の指の数ほど置いてあった。


「ソフィ、まさか一晩中呑んでいたのか?」


「卒業した教え子が酒を飲めるようになったんだから、一緒に飲むに決まっているだろう?」


「ザルの恩師に付き合わされて、酔い潰されたように見えるが」


「アルカナ君まだ若いんだし、これくらい平気だよ」


 「いやあ、アルカナ君も丸くなったね」と悪びれもせず言って、ソフィアはまた酒を煽った。


「昔は『試験が満点なら天才なの? 安い言葉だね』とか『クラスメイトなんて箔付け目当ての馬鹿ばっか』とか尖っていたのに。一年で飛び級しすぎたから受験資格はく奪された時なんか、学院長を『元帥気取り』と批判してバチバチに喧嘩売っていたのにねぇ……」


「……それ、本人に言ったのか?」


「うん。ちゃんと内省していたよ。思春期特有の傲慢さと未熟さに気づいたようで、良い反応をしてくれた。あの生意気な天才児君が、よくまともな大人になれたよ……だから酒のつまみにしたんだけど」


 ハハハッと笑うソフィアに対し、エフォリウスは魘されているアルカナに同情した。

 この様子ではおそらく、過去の態度を随分と揶揄われたに違いない。入学当時のアルカナはわずか十歳。新入生の大多数が十六歳前後なことを加味すれば、彼の知能が飛び抜けていたと理解できる。

 これで精神年齢も知能と同じくらい早熟であれば良かったものの、不幸なことにアルカナは実年齢相応であった。世の中を斜に構えて見る時期だったのだ。傲慢になるのも致し方ないだろう、とエフォリウスは弟を擁護した。


「あまり虐めてくれるな。昔のあいつは若すぎたのだから。それより、レクティタ殿下はどうした?」


「メリオラの部屋で一緒に寝ているよ。すっかり二人とも仲良くなってね。ウィタも可愛がってくださった。酷い生い立ちだというのに、殿下は明るく振る舞ってご立派だったよ」


 メリオラは今年七歳の息子で、ウィタは昨年産まれたばかりの娘だ。子供同士は打ち解けるのが早いなと感心していると、ソフィアは空になったグラスをテーブルに置いた。


「それで、フォーはどうしたいの?」


「……どう、とは?」


「とぼけないで。レクティタ殿下のことだ。あれほど彼女とそっくりなのに、私が気が付かないとでも?」


 ソフィアは脚を組み、夫へ顔を向けた。妻からの指摘に、エフォリウスはバツが悪そうに目を逸らした。



「レース君だ。君がレオナルド殿下の学問補佐にと推薦した、ネイオニー・トゥ・レースについてだよ」



 エフォリウスは無意識に息を呑み、腹の前で手を組んだ。だが無言のままでは、隣にいる妻は許してくれない。エフォリウスはゆっくりと、吐き出すように言った。


「……悪意があったわけではない。純粋に、彼女の糧になると思って推薦したんだ」


「知ってるよ。若手の宮廷魔法使いにとっては、王族の学問補佐は出世コースの一つだ」


「なのに、まさか……まさか、王に手籠めにされるなんて予測できるわけがないだろう……!」


 エフォリウスは力なく項垂れ、手で顔を覆った。真っ暗になった視界に、かつての己の過ちが浮かんでくる。


 七年前。エフォリウスは学院長から、レオナルド王太子の学問補佐候補を一人選んでほしいと依頼されていたのだ。

 背景には、前任の王太子の学問補佐が、ジェロイの不興を買って宮廷を追放されたラティオの教え子であったことが発覚したという事情があった。

 ラティオは傍流の王族であったが、成人した際に王籍を抜け公爵位を授かり、宮廷に勤めていた。魔法使いとしても優秀で途中から宮廷魔法顧問へと昇格し、部署を横断して相談に応じていたところ、気さくな性格で身分問わず親身に接し宮廷内で人望が膨らんでいったのだ。

 王位継承権さえあれば。次期国王があの方だったら良かったのに、と囁かれるぐらいに。

 これらが当時王太子であったジェロイの逆鱗に触れた。そして、国王に即位した七年前も、ラティオに関する言葉は禁句であった。

 だが、ラティオと関わらないで仕事をした者は宮廷におらず、特に優秀な魔法使いほど彼から教えを乞うていた。王太子の学問補佐──王族に王国魔法の手本を見せる役目に選ばれた者なら、なおさら。

 このような事情からジェロイ国王はレオナルドの学問補佐の後任を、「ラティオの息の掛かっていない者にしろ。この際、身分は問わない」と王太子の教育係に命じた。必然的に選出条件は厳しくなり、優秀かつ若手、それも魔法学院を卒業したばかりの者を探す羽目になった。

 そうなると、魔法学院に直接尋ねた方が早いわけで。

 学院長は、各教授に直近の卒業生の中から優秀な生徒を選んでほしいと依頼をし──

 エフォリウスは、ネイオニーを推薦したのだ。


「──推薦さえしなければ、彼女は、王に目を付けられることも無かったのに……」


 グラスター王国は身分社会だ。上流階級と括られても、王族と貴族の間には遥かに高い壁がある。ただの一介の宮廷魔法使い、それも男爵令嬢が国王に顔を覚えられる機会など、滅多に無い。

 その機会を、エフォリウスは作ってしまった。アルカナ並みに優秀な彼女なら、王太子の学問補佐に選ばれることなどわかりきっていただろうに。

 一人の生徒の人生を潰してしまったのは自分だと、エフォリウスはネイオニーが王の手籠めにされたと知った時からずっと、自責の念に駆られていた。

 苦し気に呻く夫の背に、ソフィアは悲痛な面持ちで手を置いた。


「すまない、フォー。私は君を責めたいわけじゃないんだ。ただ教えて欲しい」


 ソフィアの声が、少し掠れる。


「レース君が教え子だったことを、レクティタ殿下に伝えるのか?」


「………」


 黙ったままのエフォリウスに、ソフィアはハッキリと言った。


「もし迷っているようなら、私は反対する。こんな真実を伝えられたって、レクティタ殿下に負担をかけるだけだ。まだ彼女は幼い。正しく話を処理できるとは思えない。それに──」


 ソフィアはエフォリウスの背を撫でるのを止め、彼の手を握った。


「レース君の不幸は、フォーの責任ではない。こんなの、私達ではどうしようもないよ。君が、罪の意識を持つ必要はないだろう……?」


「───」


 ソフィアが放った慰めの言葉は、


「──それは、結局」


 奇しくも、エフォリウスがアルカナに言ったそれと同じであった。


「私の本音じゃないんだ、ソフィア」


 思いもしない発言だったのか、ソフィアがわずかに身動ぎをする。


「都合の悪い現実から目を逸らしたり、見て見ぬふりをすることが自衛だと思っていた。でもな、ソフィア。私は私が思っているより、関わった生徒について無関心にも無責任にもなれないみたいだ」


 エフォリウスは妻の動揺に気付きながらも、淡々と話し続けた。


「レクティタ殿下はネイオニーではないとわかっている。彼女に真実を伝えることは、私の罪滅ぼしに付き合わせているとも自覚している。でも、隠すよりはマシだ。ネイオニーが生きていた過去を伝えられる者は、きっと多くない」


 エフォリウスは一度言葉を切り、重ねられているソフィアの手を取った。顔を上げて、彼女と目を合わせる。


「次の機会はおそらくない。今しかないんだ。だから今日、私はレクティタ殿下に全てを話す。そして、殿下の力になることも誓おう。……それくらいの覚悟がなければ、罪滅ぼしにならない」


 黙って聞いていたソフィアが、静かに口を開いた。真剣な声だった。


「その判断がジェロイ陛下の不興を買うかもしれないって、わかっているの?」


「ああ」


「……今ここで、離婚されたって文句言えないよ?」


「承知の上だ。……だけど」


 エフォリウスは目尻を下げ、微笑んだ。


「君はそんなことしない。そう言い切れる」


「………」


 何の疑いも無く言い放つエフォリウスに、ソフィアは一拍置いた後、黙って彼の脛を蹴った。


「いてっ」


「君ってそういうところ悪質だよね。やだやだ。メリオラにはちゃんと教育しないと」


 ソフィアは足を組み直し、わざとらしくそっぽを向く。エフォリウスが不安気に妻の名を呼べば、ソフィアは小さく噴き出した。


「そんな怯えた顔しないでくれよ。フォーが言ったんじゃないか。私は君と離婚しないって」


 惚れた弱みだね、とソフィアは笑う。


「君がそこまで腹を括っていて、私が協力しない理由は無いだろう? 夫婦なんだから。一蓮托生だ」


「……ありがとう。ソフィア」


「礼は要らないさ。まあ、本当に立場が不味くなったら、キルクルス家の方も頼らせてもらうがね。使えるコネは使うに限る。そうだろう?」


「最終手段だな。実家を頼るのは後が怖い」


「お義母様が怖いの間違いだろう? ハハハ。君も一杯飲むかい?」


「……そうだな。一杯だけ。午前は学院に戻るからな。殿下との話はその後になる」


「何言ってんだ。仕事なんて休みなよ。私が教務長(お父様)に伝えておくから」


「いや、そういうわけには……」


「いいから飲め飲めー」


「ぐふっ!?」


 ソフィアは無遠慮にエフォリウスの口に酒瓶を突っ込んだ。無理矢理酒を飲まされて文句を言うも満更でも無さそうなエフォリウスに、ソフィアは気を良くしてさらに夫を揶揄う。まるで夫婦二人きりのような雰囲気になった客間にて、存在を忘れられた男が乾いた笑いを溢した。


(ひ、ひひ……)


 途中から意識を取り戻していたアルカナが、心の中で悲し気に呟く。


(いつになったら起きれるんだろう、僕……)


 完全に起きるタイミングを失った彼は、兄夫婦の仲睦まじい交流を邪魔しないよう、寝返りも打てずに天井を仰ぎ見ることしかできなかった。

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