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隣人

作者: 近藤ハジメ


 隣人は殺人鬼だ。

 まだ確たる証拠は無いが僕はそう思っている。


 僕の名前は大久保晴信。市内の大学に通う大学二年生だ。実家は大学があるこの街から遠く離れているため、アパートを借りているのだが、最近隣の部屋がとても騒がしい。


 それこそ眠れない程に騒音が続くのだが、その騒音は隣人が監禁している人物が鳴らしている音なんじゃないかと疑っている。


 僕がいるのが301号室だ。302号室が騒音の原因だと思うのだが、303号室の住民は音も何も感じないらしい。ならば上下の部屋はどうかと聞いてみれば、どちらの住民も騒音どころか音一つしないと言っていた。


 しかし俺にはこの騒音がいつも聞こえるんだ。


 床を叩いたりはしないが、まるで這っているかの様な摩擦音と口を猿轡されている様な呻き声な聞こえる。


 もしかして誰か監禁されているのか?


 だが、そうなると不思議だ。

 あの部屋にはここ三ヶ月、誰も出入りしていない。


 配達員さんやご両親さんが来ていたみたいだけど、誰も出て来ないんだ。


 なのに、音が聞こえるんだ。


 おかしいだろ? 

 きっとベランダからハシゴでもかけてるんじゃ無いかな。僕には確認する手段がないけれど、それくらいしか可能性がないもんな。


 それにしても、今日は音が聞こえにくいな。


「はあ、もう」


 まあ原因はわかっているんだけどね。

 僕はこのリビングの隣の部屋にある、寝室に向かった。


 そこにいたのは、僕なんかの彼女だと誰も信じない様な美女だった。


「ほら、しー」


 僕は彼女の口に指を当てて言う。


「音が聞こえないじゃ無いか。最近隣の部屋が煩いからな、早く犯人を突き止めないといけないんだ」


 そう告げると彼女は素直に音を出さ無くなった。

 こうして素直に静かにしてくれて本当に助かるよ。


 この人は少し前まで302号室にいた、斉藤さんだ。


 あの頃はニートをやっていたんだが、暗闇のどん底にいた僕にも挨拶をしてくれて、僕はもう一度陽の光を浴びることができたんだ。


 まあ、はは、一目惚れってやつなんだけどね。


 それから何度か告白をしてやっとOKをしてもらったんだ。


 今は同棲している。

 え? 家事の分担は、って?

 うーん、斉藤さんは家事が苦手だからね。

  

 前に料理をしてもらおうとしたら、僕の足に包丁が落ちて来たことがあったよ。

  

 あれは流石にびっくりしたなー。


 まあ、それからは僕が料理をする様になったんだ。苦手なことを無理してやる必要なんてないし、今の時代になって家事の分担なんて当たり前だからね。


 さて、音の観測を頑張ろう。

 このままじゃ斎藤さんも安心出来ないからね。

 僕も斎藤さんには一人で出歩いて欲しくないから、最近はリモートで仕事をしてもらっているよ。


 あまり斎藤さんの仕事中の姿なんて見れないから、この前なんてつい鋭い視線で見入ってしまったよ。


 さて、ようやく静かになった。


 リビングで隣人の音を聞く事にしたが、また斉藤さんが物音を立てているみたいだ。


 はあ、仕事だから仕方がない事だけど、こう音を立てられたらたまったもんじゃないな。最近は他の住民からも苦情を言われる様になってしまった。


 うーん。仕方ない。

 少しだけ静かにしていてもらおう。


 暖かい飲み物に落ち着けるサプリを入れて、斉藤さんに持っていってあげる。


 そんなに喜ばないでよ、こんなの彼氏として当たり前のことだよ。


 はい、飲んで。

 これを飲んだら少しだけ斎藤さんとの時間を作るからさ。

 

「何時間かだけだけど、恋人としてゆっくり過ごそう」


 そう言うと斎藤さんは涙を流した。

 やっぱり寂しかったみたいだ。

 これからは隣人の観察だけじゃなくて、恋人との時間も大切にしないとな。




 





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