08 急転
覚悟を決めて飛びかかるつもりで、
腕輪『コニタン』の『収納』から解体ナイフを出そうとしたら、
後ろで扉が開く音。
「間に合った、かな」
その声、
シナギさん!?
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うなだれて、床の上にへたり込んでるのは、ローガンフージュ。
痛いほどの鋭い殺気、銘刀『ぶなしめじ』を突きつけているのは、シナギさん。
何だろ、これ、
急展開にも程があるって。
「本当、間に合って良かったです」
いえ、こちらこそ、危ないところを助けていただいて。
それで、その、コイツがシュレディーケさんに何かしたらしいんですけど……
シナギさんが、『ぶなしめじ』をアイツの喉元に。
……増した殺気の鋭利さに、僕も動けなくなる。
「……解放します」
アイツの後ろの空間が歪んで、
中から出てきたのは、
シュレディーケさん!
と、ルルナさん!?
「眠っているだけです……」
床の上、目を閉じたままのふたりの身体、触ると、温かい。
良かった……
「今回のコレの処遇は、フォリスさんに一任されています」
「どうしますか」
シナギさんの、真っ直ぐなまなざし。
アイツは、あきらめたような表情で、僕を見上げている。
正直、何が何やらわけ分かんないです。
詳しい話しを全部聞いてから、判断させてもらって良いですか。
ってか、シュレディーケさんたちをこんな所にこのままにしておけないですっ。
僕の望みは、一刻も早くシュレディーケさんたちを連れて我が家に帰ること。
僕が、シュレディーケさんをおんぶして、
シナギさんが、ルルナさんをおんぶしてくれて、
アイツは、大人しく後からついてきて、
エルサニア公民館を、脱出。
アイツは『エル女会』の幹部たちに、何やら伝言、いや、命令していた。
しばらく留守にする、とかいろいろ。
幹部の女の人たちが、例の熱に浮かされたようなまなざしで熱心に聞いていた姿、やっぱり気持ち悪かった。
帰り道、どうしてコイツは拘束もされていないのに逃げ出さないのか、シナギさんに聞いてみた。
「俺の『ぶなしめじ』は、この世界で首があるモノなら、絶対に逃れられない死を与える事が出来ます」
「例え、龍でも、えろスライムでも、精霊でも、です」
えーと、精霊って、もしかして、
「このローガンフージュは、精霊なのです」