22 秘密
「どうしてモルガナさんは、フォリスさんを避けていたのですか」
おっと、これまたストレートですね、サイリさん。
でも、僕も知りたいのです。
「フォリスさんに接触するのは私の人生の一大事」
「と、以前から私の未来予測能力が全力で警告を発していた、なり」
あー、確かに危険でしたね。
僕がモルガナさんに会おうとした結果、あの通り見事に"モフり潰され"ましたもん。
さすがはモルガナさん、あんな未来までばっちり丸見え。
「……そんなんじゃない、なり」
モルガナさんの表情は分かりません。
絶対に人前では脱がないと噂されているだぼだぼローブ、
目深に被られたフードの奥のお顔、
誰も見たことがないはずのその表情が、
明らかに曇っているという雰囲気、僕にだって分かります。
わけを、聞かせてもらえませんか。
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モルガナさんこそがまさに、
リスト爺ちゃんが会いたがっていた、
行方知れずの、娘さん、その人でした。
「きっとこれからフォリスさんが」
「狩人お得意のえっちっちな縛り方で私を念入りに縛り上げて」
「会わせるためとか言い訳しながら私の華奢な身体を抱き上げて」
「お姫さま抱っこで何処かへと連れ去るなり」
やりませんって。
鈍感小僧と評判の僕だけど、
乙女が心底嫌がることは絶対にやらんのです。
でも、どうしてそれほどまでお嫌なのですか。
いえ、言いたくないなら無理にとは。
「言いたくないから言わん、なり」
「人の歴史はその人固有、百花繚乱千差万別」
「その全てを完璧に理解するなんて、本人にだって無理難題」
「人から分かってもらおうとは、思わん、なり……」
……分かりました。
リスト爺ちゃんには、凄腕"占い師"モルガナさんでも分からなかったって伝えますね。
もうひとつだけ。
本当はモルガナさん、今日こうなるってこと、予測していましたね。
「どうあがいても揉め事を避けられないと分かっていたら」
「一番ダメージが少ない道に進む」
「そう自分を導くのも"導き手"の技、なり」
「……ごめんね、モルガナさん」
「さすがにデリカシー無さ過ぎだった」
いえ、サイリさん。
僕が無理言ったせいで、ご家族にご迷惑を……
『今日のことは、ボクたちだけの秘密ってことだよね、サイリパパ』
「うん、そうだよ、みんなには絶対に内緒」
「ナルンは賢くて優しいね」
「では、私たちはそろそろ」
はい、行きましょう、シュレディーケさん。
本当にすみませんでした、モルガナさん。
サイリさんも、ナルンさんも
巻き込んでしまって、ごめんなさい。
家長はこんなんだけど、フォリス家のこと、これからもよろしくお願いします。




