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02 噂通り


「こんにちは、フォリスさん」

「どうやら今日はお散歩ではなさそうですね」


 こんにちは、シナギさん。


 ご明察、恐れ入ります。


 実は、突然ですがお願いごとがあるのです。



 湖面にぷかぷか浮いてるウキを静かに眺めているこの釣り師さんこそが、


 はるばる東方からの剣客にして、この湖を守護する用心棒、シナギさん。



 わけあって、このエルサニア王国で暮らすこととなり、


 わけあって、精霊ヒメルミネアさんを護衛する用心棒となった、


 超一流武芸者にして凄腕用心棒な、ヒメ湖ハウスのご主人。



 見ての通り、普段はとても穏やかなお兄さんですが、


 ひとたび荒事が巻き起これば、


 お腰の銘刀『ぶなしめじ』で、


 狙った悪党の首を一刀一閃で落としてしまう、


 味方であれば頼もしいことこの上ない達人剣客。



 その二つ名、誰が呼んだか"若先生"



「もしかして、狩りに関する事、ですね」


 凄いです、怖いくらいにお見通しなのです。



「いえ、先日の一件、ロイさんから伺っていたのです」

「生粋の狩人たるフォリスさんが、新たな相棒を得ての大活躍」

「俺も男ですから、我慢出来なくなる気持ち、良く分かります」


 まさにそれなのです。


 つきましては、ぜひヒメ湖周辺での狩りのご許可をいただければ、と。



「もちろんです」

「と言いたいのは山々なのですが、ひとつだけ、お願いしてもよろしいでしょうか」


 何なりと。



「えーと、獲物のお裾分け、お願いしたいな、と……」


 あーなるほど。


 ヒメルミネアさん、ですね。



「あのヒメさまの食欲ときたら、加減知らずの天井知らずもいいとこでして」


 そんなにスゴいのですか、食いしん坊ヒメさま。



「恥ずかしながら俺の助っ人用心棒としての稼ぎでは全く足らず」

「エルサニア王国やメネルカ魔導国から、我が家が不自由せぬようにといただいている結構な額の生活費のおかげで何とかなっている有り様……」


 うわっ、まさかそれほどとは。



「こんな小さな湖の精霊なのに、底無し沼にも程があろうってな感じで……」



「小さいは余計ですよっ、シナギさんっ」

「それに、こんな綺麗な湖の精霊さんをよりにもよって沼に例えるなんて、お姉さん、悲しくて泣いちゃいますっ」



 おっとびっくり、


 いつの間にやらシナギさんにひざ枕していたのは、


 噂の精霊、ヒメルミネアさん!



 ---



「こんにちは、フォリスさん」

「噂の精霊お姉さん、ヒメルミネアさんですよ」


 えーと、ごぶさたしております。


 ってか、どうやってシナギさんのひざ枕ポジションに潜り込んだのですか。


 シナギさんのような達人のふところに、これほどまでにあっさりと……



「ふふっ、精霊乙女の秘密、ですよ」


 むう、精霊乙女、真に侮り難し……



「いえいえ、フォリスさん」

「こんな奇行、とっくの昔に諦めてますから、もうほっとくのが一番かと」

「よだれを太ももに垂らさなければ、ですがね」


「ひどーい、乙女の秘密をバラしちゃうなんて、いくら夫だからってあんまりですっ」


「誰が夫ですかっ、そんな事実はカケラも無いですって」

「そんな嘘八百、ミナモに誤解されたらどうするんですか」


「つまり、好きって801回ささやいたら、真実になっちゃうのね……」



 うわぁ、こりゃたまらんっ、


 これが噂の、ヒメ湖甘々事案。


 そりゃああの優しいサイリさんだって、さじをブン投げちゃいますよ、コレ。



 こんなダダ甘空間、そばにいるだけで胸焼けしちゃって、


 狩りに差し支えまくること間違い無しっ。


 つまりは、この場からの速やかなる撤収こそが最善手。



「というわけで、おみやげを持ってきてくれなかったフォリスさんは、狩りで頑張ってきてくださいね」


 心得ました、奥様。


 では早速。



「ちょっと、フォリスさんっ」

「奥様じゃないですって」



 がんばれ、シナギさん……



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