14 諸々
あれからのフォリス家、なんだか諸々良い感じ。
シュレディーケさんは、冒険者活動に一生懸命。
以前と違うのは、これまで以上になんでも相談してくれるようになったこと。
予定している冒険依頼の詳しい内容を、ふたりで検討したり。
あまり長期間になりそうだったら、僕の希望を優先して、お断りしてくれたり。
だってさびしいもん、離ればなれ。
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ルルナさんは、メイドさんに一生懸命。
以前と違うのは、お城でのお仕事よりも、我が家での仕事をちょっとだけ優先させてくれるようになったこと。
ちょっとだけ、我が家にお泊まりすることが増えたくらいですけど。
もちろんお泊まりの際は、僕が居間のソファーで、おふたりは寝室。
でもさびしくはないですよ、おふたりが仲良しなことが我が家の優先事項なのです。
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イーシャさんとは、その、いろいろとありました。
シュレディーケさんの潜入捜査の件、思っていた以上にアレな展開だったことを、
すごく気にしていて、すっごく謝ってくれたけど、
僕もちょっと意固地になっちゃって。
なんだかこじれそうになったんだけど、
シュレディーケさんが執り成してくれました。
ごめんなさい、イーシャさん。
ありがとう、シュレディーケさん。
あと、僕がリスト爺ちゃんと仲良くなれたことを、とても驚いてました。
ツァイシャ女王様やメネルカ魔導国のフィルミオラ女王様には、
"精霊王"としてのリスト爺ちゃんは、国の行く末を左右するほどの特別な存在なのだそうです。
どうやら爺ちゃん、以前から女王様たちの夢枕に立って、
いろいろとアドバイス(?)していたそうで。
えーと、物理的にベッドのそばに現れるのって、"夢枕に立つ"で合ってる?
なんにせよ、深夜に眠っている乙女の枕元に立っちゃうのはダメでしょって、後で爺ちゃんを叱らないと。
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リスト爺ちゃんは、時々我が家に遊びに来ます。
爺ちゃんはとっても楽しそうだし、僕も結構楽しいんだけど、シュレディーケさんは凄く緊張してるみたい。
どうやら、爺ちゃんといっしょにいるだけで、圧が半端無いらしいのです。
で、みんなに聞いてみたら、イーシャさんもシナギさんも、リスト爺ちゃんからは凄いプレッシャーを感じているみたいなのですよ。
はて、何も感じない僕が鈍感なのかな。
「フォリスちゃんやヒメちゃんみたいに、普通に接してくれる子がいると嬉しいんじゃよ、わし」
ふむ、どうやらプレッシャーを強く感じる人と、ほとんど感じない人がいる、と。
まあ、これはこれで良いのかな。
爺ちゃんが喜んでくれているなら。
実はリスト爺ちゃん、『癒数寄 (イエスキ)の霊樹』という大樹の精霊なのだそうです。
とてつもなく霊格が高くて、いつに間にか"霊樹の精霊"ではなく"大陸の精霊の王"と呼ばれるようになったとか。
本人は争いごとは嫌いなのに、その並外れたチカラ目当てでいろいろと厄介ごとに巻き込まれちゃったみたいで。
で、降りかかる揉めごとを極力平和裏に収めているうちに、みんなからの信頼がどんどん集まってきちゃって、
"精霊王"とか"創造神"と呼ばれるようになったのです。
爺ちゃんも、こう見えて結構大変だったのですね。
「だからファンクラブ活動、とっても大切なの、わし」
うん、気持ち分かります。
癒されますもんね、ヒメさまを見てると。
「でも、ちょっとだけ不満なの、わし」
「シナギちゃん、思ってた以上に奥手だし」
「フォリスちゃん、ハッスルしてみない?」
ちょっと待った!
ダメですよっ、リスト爺ちゃんっ。
"らぶらぶに無理強いは厳禁"
それが我が家の家訓なのです。
らぶらぶは自然な形で醸し出されるべしという真理を歪めることは、
いかに爺ちゃんといえども許しませんよっ。
「ごめんね、フォリスちゃん」
「わし、反省……」
分かってもらえれば良いのです。
それよりも今は、シナギさんとヒメさまとの間ですくすくと育つらぶらぶを、
生温かい目で見守ってあげましょう。
「でもわし、結構短気だし……」
もう、長命種でしょ、お爺ちゃんっ。




