12 ルール
居間のソファーでくつろいでいるのは、
凄く威厳があるような、めっちゃ親しみやすいような、
どこからともなく現れた、不思議な雰囲気のお爺さん。
「申し訳ございませんっ」
あらら、さっきまで余裕こいてたローガンフージュさんが、
床の上で土下座。
ってことはもしかして、このお爺さんが、
精霊王のリスト様?
「わし、そういう呼ばれ方はあんまりスキくない」
「リスト爺ちゃんって呼んどくれ」
えーと、おはようございます、リスト爺ちゃん。
でも、家長としてひと言言わせてもらいます。
呼び鈴鳴らさずに居間に直接『転移』してくるのは、今後は禁止で。
「厳しいのう、フォリスちゃんは」
突然の来訪は、このお姉さんの件、ですよね。
「フォリスちゃんは、どうしたいのかのう」
……どうもこうも、今回の件って、僕なんかには分からんことだらけなんですよ。
この状況で処遇を一任されても、困っちゃいます。
まずは、精霊さん界隈でのルールとか、きちんと教えてもらわないと。
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精霊ルール、教わりました。
精霊さんたちは、こっちの世界とはそれなりに普通に関わるけれど、国家のアレコレみたいな社会的活動とは、極力関わらないようにしているそうです。
社会の方から精霊さんたちにちょっかい出してこない限りは。
それというのも、社会との関わりの深さが精霊さんのチカラの源となるから。
信者が多いほど神様のチカラも増す、みたいな感じなのかな。
「わし、神さま扱いされるの、あんまりスキくない」
ごめんなさい、リスト爺ちゃん。
どうやら、大昔に精霊たちの間で、凄く大きな揉めごとがあったようなのです。
信者数を競い合った精霊による宗教戦争みたいな争いが。
世界中を巻き込むような、酷い争いごとだったそうです。
で、そういうので競い合うのはもうやめようぜって、リスト爺ちゃんたちが音頭を取って、今の不干渉体制になった、と。
「わしらも、ファンクラブとかで盛り上がってた方が楽しいんじゃよ」
ちょっとだけ尊敬しちゃうかも、リスト爺ちゃん。
「フォリスちゃんも、会員登録よろしくっ」
えーと、善処します。
「フォリスちゃんは、アランちゃんと違ってノリが悪いのう」
アランさん……
で、結局どうすれば良いのでしょう、このお姉さん。
僕としては、家族友人にちょっかい掛けてこないなら、もう関わりたくないのですが。
「処す?」
「存在消しちゃうことも出来るよ、わし」
絶対イヤです、そういうのは。
要はミスコンでズルしようとしたってことだけなので、今後はイベント参加禁止、くらいでお願いします。
「優しいのう、フォリスちゃんは」
「じゃあ、今後は精霊懇談会のイベント事への参加禁止」
「あと、本人の『老願封樹』への謹慎処分」
「いずれの処分も、解除には精霊定例議会での過半数の承認が必要」
「こんな感じで許してもらえんかの、フォリスちゃん」
はい、そんな感じでよろしくお願いします。
ってか、精霊定例議会があるのなら、最初からそこで処罰を決めた方が。
「それだと、人族の時間感覚だと結構先の話しになっちゃうぞい」
あーなるほど、長命種の方々とは、時間感覚、相当違いますもんね。
じゃあ、そんな感じになりましたけど、
がんばってくださいね、ローガンフージュさん。
リスト爺ちゃんも、いろいろとありがとうございました。




