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第4話

「事情は分かった。まあ父さんも、そんなに心配してはいなかったよ」

「むしろ、楽しんでたよな…?」


俺のジト目を受け流すなよ親父。

こっち見ろ、全くもう。

今、俺と義妹はそれぞれの親から説教を受けてた。いや、俺の方はどっちが説教されてたか分からないな。


そんで、寧々子と美夜さんの方は、どうなってるのか…。


「いい?母さんが何故怒ってるのか、分かる?」

「ん、痛かった…」

「そうね、圭人さんに痛い思いさせたこと。それともう1つあるの」

「むー、脱いだ?」

「そうね、女の子なんだから、簡単に肌を見せては駄目よ」


…寧々子の、あの短い返答でよく把握出来るな、流石母親だ。

まあ内容は、一応ちゃんとまともなお説教だ。


「いいこと?女の肌は武器であり、切り札よ。

使うなら、必ず仕留めなさい」

「うん、分かった」


あちゃー、駄目だー。


「本当は、もっと効果的な方法があるのだけれど…お母さんが寧々に、ちゃんとしたバストをあげられなかったばかりに…ごめんなさいね」

「なんでそんな酷いこというの…?」


…悲しい会話だな。

他は結構、遺伝してると思うんだけど。


「まあまあ、今日は新しい家族の顔合わせだ。そのくらいにして、夕飯にしよう」

「そうね、今晩はお父さんが、お寿司の出前をとってくれたのよ」


もう用意してあったのか、美夜さんが手早く並べていく。結構な量だな。

既に誰の為なのか、何となく察しているけど。


「おすし…!おすし!?おすし!!」

「なんか寧々子のテンション上限突破してるけど大丈夫ですか?!」

「食べ始めたら落ち着くから大丈夫よ」


美夜さんの言った通りで、食べ始めると寧々子は、それはもう粛々と味わって寿司を食していた。

手が一切止まらないので、結局一人で半分食べてしまったが。

いや、いい食いっぷりだった。



事件は夕飯の後に起こった。


「そうそう、父さん達な、明日から旅行に出掛けるから」

「ごめんなさいね、引っ越したばかりなのに」

「また本当に急な話だな」


落ち着きがない親たちだ。


「ん、お母さん新婚旅行?」

「ええ、そんな所ね」


なるほどな、そういう事なら息子としては最大限協力してやらないとな。

どこに行くんだろう、三泊三日で温泉とか?それはちょっと盛り上がらないな。

思い切って海外に十日間とか?


「一年くらい夫婦でブラブラ旅行してくるから、その間は兄妹二人で仲良くするように」

「わかった、まあ子供じゃないんだから大丈夫だよ。たまにはゆっくり羽を伸ばして…おい待て、いま一年って言ったか親父」

「そう言ったな、圭人」


ほうほう、そうきたかーなるほどな。


「いやいや!!仕事とかどうすんだよ!?」

「それなんだか、父さんの会社、結構ブラックだったろ。

もういい加減我慢の限界で、会社のみんなで証拠集めて、出るところに訴えて辞めてきた。

おかげで未払いの残業代やら退職金多めに入るし、立役者である元上司がな、何人かの同僚たちと一緒に、来年新しく会社立ち上げるんだ。

そして父さんも、そこで頑張る事にした。

それで、せっかくだから来年までは、皆今まで使う暇の無かった金で遊び倒すらしい」

「あなた達兄妹の学費や生活費は、大学卒業分まで、余裕で取ってあるから大丈夫よ」


用意周到だな。でも、確かに親父は休日出勤や残業があたりまえだった。

それが、ここ最近は定時上がりだったから、おかしいとは思ってたけど。


「いやでも、流石に一年とかは無理だろ…」


テーブルに突っ伏したままの体制で、すでに居眠りしてる寧々子を見ながら考える。

たしかに父子家庭で育った俺は、一通りの家事スキルはあるが…この、気まぐれな義妹の面倒を見ながら、自立した生活を送れる自信は無い。

というか、昨日まで他人だった男女二人でって…問題あるだろ?


「寧々ちゃんなら、やる時はちゃんとやるから大丈夫よ?

お掃除、洗濯はもちろん、料理の腕もバッチリよ」

「ん、まかせて」

「うお!起きてたのか…」


寝てると思ったが。

まあ眠そうだけどな。猫みたいに丸めた手で、まぶたをくしくし擦ってる。


「それにな、父さんも何も考えずに、こんな提案した訳じゃ無いんだ。

進学か就職か。圭人も寧々子ちゃんも、これからどういった進路に進むかによっては、早ければ高校を卒業したら独り暮らしになる」

「だからね、早い内に一度、そういった生活を経験すべきだと思うのよ」

「そして、それならば一人よりは二人のほうが、父さんたちも安心出来るしな」


なるほどな、確かに一理ある。

それに考えれば、俺がしっかりすればいいだけの話だし。


そうして話を聞いてみると、毎日必ず連絡を取る事や、家計簿をつける事など、かなり具体的だ。あまり好き勝手出来ないように考えてある。


「まあ一年と言うのは目安だ。その前に…その、母さんの体調次第では、早く戻る事になるだろうからな」

「旅行中、デキちゃったら帰ってくるわよ?うふふ」

「か、母さんそんな子供達の前で…いいのかい?三日位で帰って来てしまうぞ?」

「やだ、あなたったらうふふ」


子供の前でイチャイチャし始めるな。

しかめっ面の寧々子と目が合う。

俺も今、同じ表情だ。


「うぜえ」

「うざい」


もう、今から行ってこい。

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