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とりあえず勇者やめて農家始めました。  作者: クレアンの物書き
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モンスター達との農業生活



太陽の光が眩しく、辺りには気持ちの良い風が吹いている。



草木から漂う自然の匂いと、実った野菜や果実から漂う甘い香り、さらにはあまり良い匂いというわけじゃないが、家畜達からの獣臭も結構気に入っていたりする。



「……勇者やめて良かったなぁ〜」



何か古びた剣ではなく、クワを持ちながら…



“元”勇者な俺はポツリと言葉をこぼした。



「…おーい、クリスー!サボってないで魔木運ぶの手伝いなー!」



「ん、了解ー!でも、サボってたわけじゃないからなぁ!」



怒鳴り声が俺を呼んでいる。



別にサボっているわけじゃないが、少しぼーとし過ぎたみたいだ。



「まったく…そう怒鳴らなくてもいいだろうに……男が寄ってこなくなるぞー」



いつものように軽口をたたく。



「ぅっ…うっせぇ!俺の勝手だろ!!それに、この程度で寄って来なくなる男なんてこっちから願い下げだ!」



プンスカ怒る彼女。



まぁ、口が悪い時は多々あるがなかなかにいいやつである。



「へいへい、ならその怒鳴り声で寄ってくる俺は対象ってことか?」



「なぁッ///いゃそのっそりゃッ…そのっ///」



「ハッハッハッハッ、冗談だ冗談。人間の男になんざ興味はないだろ。あれ…どうした、顔真っ赤にして?」



顔を真っ赤にしてプルプル震える彼女を心配すると…



「ッッ…ッ!///こんのぉッ馬鹿クリスッ!!///」



「おわぁッ!?」



ぶぉぉおんッ!



ミーナな豪腕?が俺の顔をかすめる。



…危うく当たるところだったッ…



「おいこら、ミーナ!?危ないだろ!!」



「うッうるさい!!///黙って殴られろ!!///」



顔を真っ赤にしながらの猛連打。



正直、素人の一撃なんていなすなりかわすなり、手に力を貯めて受け止めるのすら簡単ではあるが…



「そんな理不尽のめるか!」



殴られる趣味はないので却下です。



それに…



「女の一撃なんだ!軽いものだろ!///」



「女は女でも“ミノタウロス”の一撃は洒落にならんわ!!」



幾度と繰り出される拳を避ける俺。



最初の頃よりなんだか研ぎ澄まされてきてんだよなぁ…



正直、この時ばかりは勇者だった頃の経験に感謝していた。



やっぱり、いくら平気だって言っても、女性の一撃でも痛いのは痛いからね。



それと、今俺をぼっこぼこにしようとしている彼女は、ミノタウロスのミーナ。



見た目は人型だけど、栗色のショートヘアと体が人間より巨大なのと頭から生える小さな角と、ぶらぶら揺れる尻尾が特徴的かな?



あと、ミノタウロスの女性って事で胸はシャレにならんぞ、やったな世の中の男ども!!



はぁ…誰に何を説明してるんだか…



いろいろあって、彼女には農家の手伝いをしてもらってるんだけど…



何故か、怒りやすくてねぇ…



たびたび俺がなんかいうたびに殴ってきたりするんだよなぁ…




いや、悪い子じゃないよ?



でも、何でだろうね?



「はぁッ…はぁッ…ちょッいい加減にッ」



とりあえず、毎回ミーナがくたくたになるまで避け続けている。



「いい加減もクソもッ!ちょっ…ぉ…おわぁぁっ!?」



「ッ…!」



大量の魔木を持ちながら拳を突き出していたため、ミーナはバランスを崩してしまった。



とっさに足に力を込めればミーナに向かって飛びかかった。




ドォォッ…!……ゴロっ…ドサドサッ…ゴロっぼとっ…



魔木がそこら中に散らばる音が鳴る。



ひとまず、庇ったはずが押し潰されているのは情けない姿だわ…



まぁ魔法で、魔木を弾いたから怪我はないはずだけれど…



「…か…間一髪ッ……」



「………だ…大丈夫っ?」



「あぁ、問題はない…ただ、相変わらずカッコつかないな…俺」



ミーナの下敷きになりながら喋る俺…



条件反射みたいに体が動くから、毎回助けに飛び込んだのに結局魔法を使うっていうこんな結果になるんだが…



毎度のことながら、怪我がないのは奇跡だよ全く…



「……あのなぁ…」



流石に、少しは嗜めるように声色が低い声を出すが…



「……ご…ごめん…なさい……」



しゅんっといつも元気に立たせている牛耳までへにゃっとさせながら落ち込む姿を見せられては…何も言えなくなった。



「…全く……少しは落ち着くようにしろよな」



自分自身、甘いのは理解しつつも…



何も言えなくなってしまうのは、どうにもできなくて困る…



はぁ…と溜息をはきつつ、自分の上に載っているミーナの頭を優しく撫でた。



「ふにゅッ!?///」



顔を真っ赤にして、変な声をミーナが出した。



「あっ、わりぃっ…嫌だったよな」



「ぃ…ぃゃ…その……べ…別に嫌じゃねーしッ……///」



「ん?」



「なっ…なんでもねぇしッ!!///」



勢いよく立ち上がると、落ちた魔木を集めて歩いて行った。



「……ふぅ……やれやれ…まぁ怪我がないだけマシかな?」



俺も立ち上がると、んーと背伸びをして体をほぐす。



「…んんッ……さて、俺も仕事しないとな。まずは魔木をはこんで…それから畑から見に行くかぁ」



クワを背負い直すと、ミーナが持ちきれなかった魔木を拾っていく。



この生活を始めて早一年…



勇者を辞めてから色々ありましたが…



それなりに充実した農家生活を送っていた。






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