014 血の海 ~父の思い~
今回は少し長めです。
達也は一人で『息子を殺された』と犯人を殺そうとする能力者と戦います。
そして、達也の姉、『三国』の本性も……?
語り部 達也
「危ない!!!」
僕は叫ぶ……しかし……
目の前には3人の男の死体。
刃物で腕……だけじゃない、足や首も切断されていた。
高校生達の一生は呆気なく幕を閉じた。
「くっ」
守ってやれなかったのは無念だが今はそんなことを悔やんでいる場合では無い。
せめて、三国や男の子を守らないと。
人通りの少ない路地裏で良かった。
ここなら思う存分戦える。
「ほぉー!は!おい!見てくれたかぁ!この俺の鮮やかな剣さばき!あ?何だよ!?ガキかよ!?おいおいおい!逃げなくても良いのかよぉ?」
土煙の中から出て来たのは、がたいのいい四十過ぎの髭面の男だった。
そして、持っている刀。
あれは……うん、間違いない。
僕の能力で作られた刀だ。
その刀は赤い血の色に刀身を染め、斜め上に軽く曲がっている。
見た目は明らかに80キロ以上あるほど重たそうだがそれをもろともしないのが僕の能力の特徴だ。
―持ち主の特徴に合わせる―
確かあの刀の持ち主は……
「貴方はたしか、茅場さん……ですね?」
「お?何だよー、どっかで会った事会ったか?あ!分かった!お前さん今、噂になってる達也様だな!?へっへーうれしいぜ!お前さんみたいな強そうな奴と戦えるのは!!」
嬉しくてしょうがない、という感じで男……茅場さんは笑っている。
しかし流石、高ランクの武器の使用を許可される事はある。
だいたいの人が見抜けない僕の力を悟るとは……
「考え事なんかしてないで、さっさと殺し合おうぜ!!ひゃっはーーー!!!」
相手が刀で切りかかってきたので僕も異空間から長槍を取り出し受け止める。
確かにすごい力だが、受け止められない程でもない。
僕は槍で刀を無理やり押し直し、
「どうしてこんなことを?少ないとはいえ人もいるんですよ」
「なに、どうせ記憶操作の能力者……リカか、あいつが記憶消してくれるんだろぉ!?それに」
彼は若干重々しい口で言った。
「俺の息子はそこの女に殺されたんだよ……体で誘惑されてなぁ!!!そうだろ!三国さんよぉ!!!……だが、お前さんが真の犯人って言われたぜ!!」
それはどういうことだと聞く前に、彼の視線は三国に真っ直ぐに注がれていた。
僕も反射的にそちらに視線を向ける。
敵との戦いでのよそ見は命取りだと言うことは分かっていたが何故か不思議と安心感があった。
とても不思議な安心感が……
―三国は笑っていた―
そして、彼女は言う
「いいよ、いいよ、達也!!!その調子でもっと苦しんで!!私のおもちゃとしてねぇ!!」
最低だなこの女……
「茅場さん、僕との戦いに意味はないと思うんですが」
「ああ、そうだな!!だが、その女は息子にこう言ってくれたんだよ、『もし力を貸してくれたら体で払う』って、俺にもその権利ぐらいあるだろぉ!?」
成る程。
高校生とのやり取りに飽きたから適当な小学生をいじめさせて茅場さんに始末を頼んでいたのか……
ついでに僕の始末も……
それにしても茅場さん……あんたはそんな悪い人じゃないだろ!?
だって貴方の息子は……
続く