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TRE~宝を奪われた能力者~  作者: ニコニコ大元帥
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第1章 第4話~竜巻・轟音・光線~

 僕ら3人は人気のない廃虚街を通って王宮に向かい歩いていた。最初は大通りを堂々と行こうとしたけど、警備兵や宝狩り部隊が多く、顔バレしてしまう可能性があったため、念には念をということで廃虚街を歩いている。芸笑と武動は宝狩り部隊の恰好をして、僕は腕を縄で縛られ拘束された風に装って、とりあえずこれで誰がどう見ても「宝狩り部隊に掴まった可哀そうな少年」に見えるだろう。


「いよいよやな」

「ああ。悲願の達成までもう少しだ」


 芸笑と武動のその声は若干高い。2人は相当やる気に満ちていると見える。


「2人とも頑張ってよ。僕にできるのはこうやって2人に協力して応援することしかできないからね。せめて何かしらの能力があったら加勢できたのに……」

「いや。ここまで協力してくれただけでもありがたい。他の国では誰一人協力してくれる人がいなかったしな。みんな怖がって真王に逆らおうとしなかった」

「そうそう。口では真王を倒したいとか言っといて結局行動に起こさん連中ばっかりやった。結局みんな流れに身を任せるのが楽で安全だと思っとったんやろう」


 2人はそんな事呟きを漏らす。反真王派の人々は少ないと聞いていたけど、そういった理由からなのか。確かにこの国も何万人という人々が宝狩りの被害に遭い、TREにさせられ、多くの人々が不満を抱えていた。だけどみんなそこまでで誰一人行動を起こそうとしない。きっと誰かがやってくれる。きっとそのうち慣れる。そんな他力本願な思いや地位の高い者が言った言葉なんだからしょうがないとか考えてしまうのだろう。


「それともう1つ」

「ん? 何武動?」

「TREになってれば……なんて思わないでくれ」

「え?」

「こういう状況においては宝物や、大切なものを奪われずに済み、TREにならなかった方が幸せな人生だぜ」

「そういえばそうやな。ワイらは何かしらの宝物を奪われたからTREになった被害者やからな」

「だから奏虎。お前はTREになっていない自分をもっと幸せに思ってほしい」

「うん……なんか僕だけごめんね」

「はっはっは! 気にすんなや! 確かに自分の好きな事をし続けられるのはうらやましいが、TREになったからといって悪い事だけやないで!」

「え?」

「今日ワイらが真王を倒してこの世界の英雄になるんやからな!」

「……ぷっ! あははははは! 芸笑は面白い事言うね!」

「当たり前や! 元とは言えワイはお笑い芸人なんやからな!」

「へっ! そりゃあいいや! 世界を救ったお笑い芸人! 良い響きじゃ……」


 言葉の途中で武動は歩みを止めて立ち止まる。その顔から笑顔が消え失せ、険しい表情になり、何かを探すようにキョロキョロと周囲を見渡し始めた。


「ん? どうかしたの武動?」

「なんか忘れものか?」

『ダアアアアアアアア!!』


 突如街中に響き渡る大声量の叫びが聞こえてくる。廃虚街に誰かいるのか!? 一体誰が……


「っ! あぶねぇ!」

「「うわぁ!?」」


 何かを察知した武動は僕と芸笑を抱え思いっきり横跳びする。直後、今まで僕等がいた場所に青白い閃光が一線飛んできた。


「うお!? なんだ!?」

「ビ、ビームや!」


 芸笑の言う通り。それも直径1m程の太い光線だ。破壊力もさることながら突き抜けた壁を見てみると穴の周りにはヒビ一つ無い綺麗な穴を作り出し、埋め込まれていた鉄筋は跡形もなく融解している。半端ない貫通力にとんでもない温度の光線だ。


「TREに攻撃されてる!?」

「そう考えた方が良いやろうな! なんせワイらは今宝狩り部隊の恰好をして人質連れているんやからな!」


 芸笑の言う通りだ。芸笑も武動もとても良い人だし、こうやって真王を倒しに行こうとしているが、それを知っているのはこの場で僕だけだ。傍から見れば彼らが変装しているとはわからないし、人質を連れた本物の宝狩り部隊に見えるだろう。それを良く思わない人だって当然いる。ここは武動の言った通り慎重に……


『ダアアアアアアアアア!!』


 再び叫び声が聞こえてくる。まずい! このままではまた光線が飛んでくる! だが廃墟のどこから飛んでくるのかわから……


「おらぁそこだ!」


 武動は180度向きを変え、後ろを向くと同時に拳を突き出す。すると大気にヒビが入り轟音と共に衝撃波が発生した。その直後建物の壁を貫通し光線飛び出し、武動が放った衝撃波と正面衝突した。どうやら光線と武動の衝撃波の威力はほぼ同格のようでお互いがお互いを相殺し打ち消す。それにしても……


「今の声……どこかで聞いたことがあるような……?」


 この叫び声……僕は聞いたことがあるような気がする。あの響き渡るような重低音……どこかで……?


「そこにいるな! それもういっちょ!」


 今度は武動が先に攻撃を開始する。すでに2回も先手を取られているし、これ以上相手に勢いをつけさせないためだろう。衝撃波は進行方向、つまり光線が飛び出した方向へ向かって邪魔な障害物である建物を薙ぎ倒しながら進撃していった。


『ラアアアアアアアア!!』


 すると先程とは違う中低音の叫び声が辺りに鳴り響く。いや、物理的に本当に鳴り響いている! 建物のガラスは振動でヒビが入り、地べたに落ちている小石も震えている。もう一人TREがいるのか!?


「!? 俺の攻撃が!?」


 家を3軒吹き飛ばしたところで武動の放った衝撃波は急に勢いを無くしていき、ついには力なく消え去った。だがやっぱり……


「今の声もどこかで聞いたことがあるような……」


 最初の光線のTREの叫び声といい、今の叫び声といい、どこかで聞いたことがある。あの独特の低音と中音……。どこかで……


「っ!? まさか!?」


 僕はハッとする。あの大砲のようなバリトンボイスに、響き渡るテノールボイス! まさか声の主って……! 僕は彼らの名前を叫ぼうとしたが既に芸笑が攻撃態勢に入っていた。


「任せろ武動! ワイがやってやる!」

「おいおい! こんな街中でぶちかますつもりか!?」

「ここらは廃墟街や! 誰もおらん! いや! 今から隠れている奴らをあぶりだす! アハハハハハ!」


 人目を避けて行こうと言った僕の作戦が功を奏したのか、芸笑は一般人の被害を気にせずに大声で笑い始めて能力を発動し始める。天を仰ぎ大笑いをした結果、以前見た時とは違い、一か所だけに巨大な竜巻を発生させるのではなく、廃墟の様々な箇所で竜巻が発生し建物を薙ぎ倒していく。建物は破壊され、乾いた土煙が上空に巻き上げられ辺りは砂塵をはらんだ砂嵐のような状態になり視界が効かなくなった。


「ラアアアアアアアア!!」


 そんな中、砂煙の中から中低音の叫び声が辺りに鳴り響く。


「くあ!? 耳が!?」

「痛ってぇ! 超音波か!?」


 芸笑と武動は耳を押さえ苦悶の表情を浮かばながら倒れこむ。だが僕には何の被害もない。明らかに僕を割けて2人を攻撃している。この状況を考えるに、相手はあの方達で間違いない!


「僕の話しを聞いてください! ってうわぁ!?」


 突如、何者かが僕の手を引きどこかへと引っ張られてしまう。


「だ、誰ムグゥ!?」

『お、おい! 奏虎大丈夫か!?』

『返事しろ! くそっ!』


 僕は叫ぼうとしたが何者かに口をテープで塞がれてしまったため2人に何も言えなかった。そして10秒程全力疾走で走らされた後、目の前にあった建物に入る。砂が目に入り少し視力が回復するまでに時間がかかったが、何度も瞬きをして目から砂ぼこり取り払った後に僕の手を引いた人物の顔を見る。


「大丈夫ですか奏虎さん?」

「んんんん! んんんん!」

「あ、ごめんなさい! 今テープを取りますから!」

「ぷはぁ! グアリーレさん!」


 テープを外してもらい、芸笑達に縛られていた腕のロープをナイフで切ってもらう。その女性は口を覆っていた布を脱ぎ去り、束ねていた髪の毛を広げる。見覚えのあるその仕草に見覚えのある顔、それに見覚えのある声。やはり僕の思った通り、グアリーレさんだった。


「危ないところでしたね奏虎さん……よかったぁ!」

「ちょ、ちょっとグアリーレさん!?」


 突如グアリーレさんに抱きつかれる。体勢の問題で僕の顔はグアリーレさんの膨よかな胸に埋もれる形となってしまい、僕はあまりの状況に取り乱してしまう。


「本当にご無事で! あなたまで宝狩りの被害に遭ったら私は……! 私は……!」

「え!? ちょっといいですかグアリーレさん!?」

「あ、すみません奏虎さん!」


 僕が暴れた為グアリーレさんは抱きつくのをやめて解放してくれる。そしてグアリーレさんは僕の正面に座りなおし話を聞く体勢になってくれた。


「あなたまでもって仰いましたよね? ということは皆さん宝狩りの被害に遭ってしまわれたのですね?」

「はい。一昨日の事でした。奏虎さんと別れた後自宅に戻ったら、すぐに宝狩り部隊が私達を襲いました。私達は三人で行動していたので目立つので、きっと尾行されていたのでしょう」

「一昨日……皆さんに助けられたあの日ですか……」


 3人の協力により間一髪宝狩り部隊の被害から免れたあの日だ。僕は助かったけど、3人が餌食になっていたのか……


「すみませんグアリーレさん。僕だけのうのうと助かって……」

「いえ、気にしないでください。今はこうして奏虎さんは無事でいられたのですから……」


 グアリーレさんは左右の指を絡めながら俯き、モジモジと体をくねらせる。


「ということは今外で攻撃をしてきたのは……」

「はい。ラージオ兄さんとオンダソノラ兄さんです」

「やはりそうでしたか……よろしかったら教えてください。一体何が起きたのですか?」

「はい。私達は自宅に戻ったと同時に宝狩り部隊に包囲されてしました。誰にもバレない隠れみのになる森が、逆に彼らが巧みに隠れるための道具になってしまったのです。そして安心して油断していたところをあっという間に襲撃された私達は大した抵抗も出来ずに掴まってしまい、私達は外に出されてホールに火をつけられました」

「そんな……なんてひどい事を……」

「ラージオ兄さんはあまりのショックで放心状態になっていました。けどオンダソノラ兄さんは怒り狂い宝狩り部隊に叫びました。するとオンダソノラ兄さんの体が青白く光出してTRE化し、オンダソノラ兄さんは「声を超音波に変えるTRE」になったのです」

「声を超音波に……」


 成程。だから芸笑と武動は耳を押さえて苦しみだしたのか。それに武動の放った衝撃波が弱まったのも合点がいく。武動の衝撃波は音と空気の振動だ。超音波でその振動が狂わされたのだろう。


「それを見た部隊の人間が良い能力だと目を付けました。我々の仲間になり、真王の下につけと言ってきましたけどオンダソノラ兄さんは聞く耳もたずに叫び続けていたんです。それに怒った部隊長が私を人質にして言うことを聞かせようと銃を抜き、私の頭に銃口を向けた瞬間でした……今度はラージオ兄さんの体が黒っぽい灰色の光を放ち、部隊長に叫ぶと彼の上半身が消え去りました」

「……ということはあの光線は……」

「はい。ラージオ兄さんは私を守るために「大声を光線に変えるTRE」となったのです」


 ホールを壊された恨みとグアリーレさんを人質に取られた強い思いが彼ら2人を強力なTREとさせたのか……。


「私はその時のショックで気を失い、目が覚めると……うっ!」

「グアリーレさん……それ以上は無理に話さなくていいですよ……」


 グアリーレさんは口を押さえ涙目になっていた。よほど凄惨な光景を見たのだろう。それほどの強力な能力を持ったTRE2人が怒りに任せて暴れたのだ。どんな事になったのか想像がつく。


「幸い私は気を失っていたおかげでTRE化せずに済みましたが、2人は完全にTRE化していました。そして私達のホールは全焼して使い物にならないものになっていました。それでそのあと冷静さを取り戻した兄さん達と話し合ったんです。私達が被害に遭ったということは一緒にいた奏虎さんも宝狩り部隊に狙われているはずだと」


 そういえばあの後アルヒテクアさんのお店に大勢の宝狩り部隊がやってきた。あの時はアルヒテクアさんやお店のTREのお客さん達のおかげで助かったけど、そうでなければ今頃僕もTREだったかもしれない。


「そして徹夜で奏虎さんを探し回ってこの廃墟街に来た時に丁度奏虎さんが連行されている真っ最中だったので、私達が助けて今に至るというわけです」

「そうだったんですね……それはありがとうござ……ってまずい!」


 僕はグアリーレさんの話を聞いてすっかり忘れていたけど、今まさに芸笑達とラージオさん達が勘違いで戦っている! 


「どうしたんですか奏虎さん?」

「聞いてください! あなた達は誤解しています!」

「え? 誤解?」

「はい! 彼らは宝狩り部隊ではない! 変装しているだけです!」

「はい? それってどういうことですか?」

 僕は今までの事や、彼らの素性。そしてどうして僕らがこの廃虚街に来ていたのかをグアリーレさんに話した。






「ダアアアアアアアアア!」

「はっはっは! 口から光線とは派手な能力ですなぁ!」


 武動は敵の放つ光線を交わしながら相手を褒める。戦いの最中武動にレクチャーしてもらったが、声の方向がすれば相手の位置がわかるし、それに遅れてビームが飛んでくる。慣れが必要だがお前でも避けられる……と言っていたものの、それは理論的な話や。それでもあれ程まで完璧に避けるのは流石元武術家と言ったところやな。とはいえ……


「おい武動! 相手を褒めとる場合やないで! 真面目に相手しいや!」

「おう! 早いとここの2人を倒して奏虎を探さなきゃな!」


 武動は真下に能力を発動させる。すると武動の体は辺りに砂煙を巻き上げながら、、凄まじい速度で垂直に飛び上がり上空に急上昇した。


「おほっ! 能力の使い方が上手いやないか!」


 本来の使い方は相手を攻撃する能力のはずなんやけど、その推進力を利用して機動力を上げたり、空を飛んだりするっていう応用の仕方は勉強になるなぁ……


「さてと! 敵さんはどこかな!」


 武動は上空100m位まで上昇したあと、体傾け地面に水平にし、再び後方に衝撃波を打ち出す。1回能力を発動するたびに進む距離はざっと20m程か。そうして上空で円を描くように移動し見渡して敵を探す。


「いたぞ! 芸笑! 正面5軒先の家の陰に隠れてるぜ!」

「了解や! まとめて吹き飛ばしてやる! アハハハハハ!」


 武動の指示を聞いてワイは能力を発動。5軒先の家にめがけて笑った。竜巻は目標通りの家で発生し、家を巻き上げるように天に延び始め巻き上げる。


「うおおおおお!?」

「うわああああ!?」


 すると家の陰に隠れていた2人が竜巻に巻き込まれまいと全力疾走で退避してきた。


「ちっ! 見つかっちまったなオンダソノラ!」

「ああ! だが気にすることはない兄さん! 攻撃だ!」


 物陰から出てきたのは髭がある体格のいいオッサンと背が高くて細身のオッサンやった。こいつらが奏虎を攫った連中か! 許さへんで!


「おい小娘! 女と言えど容赦はせんぞ! すううううう……!」

「へ! お気遣いどうも! だがワイを舐めてると痛い目見るでぇ! アハハハハハ!」


 髭のオッサンは腹を膨らませながら大きく息を吸い込み始める。ワイはその動きを確認して先手を取る。大声を出すためにはそれなりの息を吸い込む必要があるもんや! ワイは髭のオッサンめがけて笑い、竜巻を発生させる。竜巻は再び砂を巻き上げ、付近の瓦礫や割れたガラスなどの不純物を取り込み通常状態よりも強力な状態となって襲いかかる。


「髭のオッサンくらえや!」

「髭の……!? この小娘めぇ!」

「どけ兄さん! 僕がやる! ラアアアアアアアア!」

「くおっ!?」


 だが細身のオッサンが髭のオッサンの盾になるように前に割り込み、能力を発動させる。すると鼓膜に激痛が走り、その場にへたり込んでしまう。あまりの激痛に笑いどころやないし、ワイはMやないから痛みで気の高ぶることもない。結果として竜巻は勢いを無くしていき、消滅してしまう。


「でかしたオンダソノラ! ダアアアアアアアアア!」


 竜巻が消えて地面にへたり込む無防備なワイを髭のオッサンが見逃すなんて涙ぐましいわけもなく、腹一杯に空気を取り込み始め、極太のビームがワイめがけて飛んでくる。


「させるか!」


 今度は上空から武動がワイの目の前に着地し、大きく振りかぶり目の前に拳を突き出す。放たれた衝撃波は爆音とともに髭のオッサンのビームと細身のオッサンの超音波を打ち消してくれた。


「ふう……相手も中々やるな」

「そうやな。そこら辺の雑魚とは大違いや」


 武動は相手から視線を外すことなくワイに手を差し伸べ引き起こしてくれる。能力もさることながら、この2人のコンビネーションは中々のものや。ワイらの弱点やいやらしい作戦を講じてくる。武動が能力を発動させると細身のオッサンが、ワイが能力を発動させると髭のオッサンが。その上どちらかがヤバイ状況になるとすぐにカバーに入る。これは強敵やな。せやけど……


「少しずつやけど攻撃の威力が落ちてきてないか?」

「ああ。最初の頃の威力がない」


 オッサン2人は肩を大きく上下に揺らしながら呼吸し、汗の量も尋常じゃない。でも考えてみれば当たり前のことかもしれない。これまでの攻撃を見るに、あの2人は大声を出して能力を発動させるTREなんやろうな。ワイや武動の攻撃を避けながら激しく動き回る上に、呼吸を整える間もなく大声で叫ぶ。これは相当の体力と酸素を使うはずや。


「はぁ……はぁ……腰が攣りそうだぜ。オンダソノラ? 大分息が上がってきたな?」

「ふう……ふう……兄さんこそ……チアノーゼになりかけるなんていつぶりだ?」

「俺ら、音楽家だぜ? オペラの、為に体力を、つけたとはいえ、これはいつも、よりも疲れるな」

「だね。歌ならまだしも、全力疾走で、走り続けながら、大声を出している、ようなものだか、喉にも体力にも負担が大きい……」


 音楽家……? 今あの二人は音楽家と言ったな? ということは……


「あの2人はもしかして奏虎の仲間っちゅうことか?」

「その可能性は高いな。同じ音楽家仲間で面識もあるだろうから、こうやって俺らを攻撃し、奏虎を保護したのだろう」

「おい! 髭のオッサンに細身のオッサン!」

「おい小娘! その髭のオッサンって言うのはやめろ! 俺にはラージオ・ウン・カンターテという名があるんだぞ!」

「そうだ! 僕はオンダソノラ・ウン・カンターテ! それに今年で20歳! オッサンという年齢じゃない!」


 2人はそんな怒りの叫びをワイらに叫んできた。同じウン・カンターテという名前。やけに連携が上手いと思ったら兄弟か……


「へ! そりゃ大層立派な名前やな!」

「どうだ! 俺ら2人の名前も名乗ってやろうか!」

「結構だ! 悪党の名前なんかに興味はない!」

「その通りだ! よくも奏虎君を!」

「だから! この服装は変装だって言ってるやないか!」

「ああ! 奏虎には俺らに協力してもらっているだけなんですよ! これから王宮に攻め込んで……」

「黙れぇえええええ!!」

「「うおっ!?」」


 髭のオッサンはワイらの話など一切聞くそぶりを見せずに今日1番の一際太いビームを飛ばしてくる。


「そうやって僕らを騙すつもりなんだろう! 宝狩り部隊は手段を択ばない連中だ! そんな嘘で彼を誘い出したのだろう!」

「な!? 違……!」

「奏虎はどんな奴だろうと優しく接してくれる綺麗な心の持ち主の良い少年だ! 俺ら2人はもうTREという化け物になっちまったが俺らの妹や奏虎はまだ人間のままだ! その2人の可能性ある輝かしい未来を壊す輩は俺らが許さん!」


 この2人。かなり危なっかしくて向こう見ずなところがあるが、根はかなり優しく真っすぐした人やな。自分達を犠牲にしてまで他人の為に尽くすなんて簡単にできることやない。


「おい武動。どうする?」

「どうするもこうするもない。この人達は引かないぞ?」


 武動は苦笑いを浮かべつつ後頭部を掻く。武動もこの2人が悪人だとは思っていないようで、イマイチやるせなさそうな表情を浮かべている。


「せやろうな。となると方法は一つ……」

「ぶっ倒して言い聞かせるしかないな!」

「おう! いくでぇ!」

「御二方! ちょいと痛いが覚悟してくれよ!」


 ワイは2人に負けないくらい大きい声を出そうと今のうちに深呼吸を繰り返して酸素を体中に巡らせ、武動は四股を踏みながら両拳をぶつけ合い気合を入れる。


「なんの! これで決めるぞオンダソノラ!」

「うん! 絶対に勝つ!」


 おっさん2人も負けずと互いに拳を合わせ、自らの体を手の平で叩き気合を注入する。ワイは心の中で飛び切り楽しい事を思い浮かべながら息を吸い、武動は四股を踏んだ状態で重心を後ろに落とし右拳を握りしめ、オッサン2人は限界まで息を吸い込み、腹を膨らませ……


「アハハハハハハハハハハ!」

「ドリャアアアアアアアア!」

「ダアアアアアアアアアア!」

「ラアアアアアアアアアア!」


 天に昇る竜巻、轟音と共に放たれる衝撃波、口から大砲のように飛び出すビーム、周囲の窓ガラスを破壊する超音波。四つの強力な攻撃一か所で衝突する。


「ちょっと待ったぁ!」

「「「「!?」」」」


ここまで読んでくださりありがとうございます! ニコニコ大元帥です!

戦闘パートです! 本当はもっと書きたかったんですが、これ以上はテンポが悪くなりますし、少し割愛しました。 やはり能力者同士の戦闘は書いてて面白い! そんなこんなで次回もよろしくお願いいたします!

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