プロローグ3~強大な能力者~
次の日の朝。真王が王宮中に命令を出した。
『ただいまより城にいる者は全員中庭集まる事。異論、拒否はない。必ず全員来ること』
やはり非戦闘員も全員能力者にするつもりのようで、給仕や料理人、庭師に音楽家など戦闘には不向きとされる職業の者達も分け隔てなく集められた。
「さて皆の者。良く集まった」
真王は王宮に仕えている者達、目測で大体1000人はいるだろうか? その全ての者を中庭に集め、話を始めた。正直私はこの場にいるのはとても気分が悪い。戦う意思もない者達を強制的に能力者にするなんてどうかしている。だが、もう後戻りできないという兄さんの目を見てしまうと、私も頑張らねばと思ってしまう。兄さん一人に重荷を背負わせるわけにはいかない。そう心に言い聞かせ私は真王の話を聞いた。
「今から皆の者には能力者になってもらう。異論は認めない。これは命令だ」
真王の言葉に一同は驚き互いに顔を合わせ話し始め、一気に騒がしくなった。そんな彼らなど気にも止めず、真王は話を続ける。
「知っての通りここにいるメタスターシ殿とアンティズメンノ殿は、遠い宇宙から来た者達だ。なんでもこの宇宙には生命体が住む星が数万もあるそうなのだが、そんな星々を破壊している『奴』と呼ばれる者がいる。彼らはそんな『奴』を倒すために全星を飛び回り、時間すら超えて我々や宇宙を救おうとしているのだ」
そんな真王の言葉を聞いている一同だが、軽いパニックを起こしているところにそんな聞きなれない事を話すため、多くの者は全くと言っていいほど理解できていない顔をしている。
「『奴』は我々の兵器では殺せない。そこで『奴』を倒すために能力者の軍隊を作っているのだが、強力な能力者は皆言うことを聞かない犯罪者共だ。兵士達も能力者にしているのだが大して強い能力者にならんのだ。そこで給仕のお前達にも能力者になってもらおうと思う」
給仕の方々は真王の言葉の9割近く理解できていないだろうけど、最後の自分達が能力者にさせられるということは理解できたようで、全員が思い思いの言葉を口にし始めた。
『俺達……超能力者にさせられるのか?』
『その上よくわからない宇宙人と戦わされるのか?』
『そんな! 私、今まで掃除や雑務しかしたことないのに!』
給仕達は口々に不安や不満、憤りの思いを言葉にし、直接ではないにしても真王に聞こえるように話す。だが真王はまるで聞く耳を持っていない顔をしている。そんな中、真王は彼らの発言を遮るように更なる命令を下す。
「なお、能力者になった暁には王宮から出ることを禁止し、より良い能力者になった者にはそこから戦闘訓練を行ってもらう」
その発言に給仕を含め、私も驚きを隠せなくなり目を見開く。そんな話……私聞いていない!
「兄さん!? 今の話はなんですか!?」
「なんでも真王が能力者の者達を王宮外に出したくないそうだ。勝手に能力者にされた恨みから徒党を組んで王宮を襲撃されたり、暗殺されるのを防ぐためらしい」
「その真王様のお気持ちはわかりますが、いくら何でも横暴すぎます! そんなことをしたらますます不信感を増して暴動がおこるのでは!?」
「アンティズメンノ殿。その件については皆に爆薬首輪をつけさせるので安心してくれ」
真王は笑みを浮かべながら言ってくるが、そのあからさまな作り笑顔に酷い不信感を抱いてしまう。そしてこの騒ぎの中、ある男女2人が一歩前に出て真王に食い下がってきた。
「真王様いくら何でも横暴すぎます!」
「その通りです!」
『貴様ら! 無礼であるぞ!』
『そうだ! 牢屋にぶち込まれたいのか!』
「いや、気にするな。こうなることは想定内だ。言わせてやろうじゃないか。さてお前らは……確か音楽家の奏虎夫妻だったか」
音楽家という夫妻は近衛兵の制止も真王の冷たい目線にも臆することなく更に真王に詰め寄り、真王の足元で手足を着くと真王に話し始める。
「真王様! 我々が能力者になることはまだ構いません! それが真王様のご命令であれば受けましょう!」
「ですがどうか! 私達の国、息子の待つ家には帰らせてください!」
奏虎夫妻はものすごい剣幕で真王に言い放つ。この星の王に言い寄るなど、本来ならば投獄や場合によっては死刑になりかねないものだ。だがそんな危険を冒してまで真王に言い寄る理由。それは彼らを待っている息子がいるからか……
「まだ八歳になったばかりの息子なのです! あいつは私達を待っているのです!」
「来週には家に帰るはずだったんです! きっと寂しがっているはずです! どちらにしても1人では生きてはいけない!」
2人は両手を地に着き、何度も頭を地面にこすりつけながら真王に懇願する。子を守る親なのだから当然の行為だ。そして私もそんな姿に触発されて真王に発言する。
「真王様。私からもお願いいたします。彼らを……いえ、この者らの外出を許可なさってください」
「アンティズメンノ? お前何を……」
「兄さん申し訳ありません。しかし言わせてください。彼らにも家族や帰りを待っている人々がいるのです。確かに能力者を生み出したり、『奴』を倒すことは重要ですが、これはあまりにも道を外れすぎています。だからどうか……外出だけは許可なさっていただけませんか?」
「おお! どなたか存じ上げませんがありがとうございます! 真王様! お願いいたします!」
「真王様の招集には絶対従います! それに今まで以上に音楽活動に励みますし、戦闘訓練にも尽力いたします! なのでお願いいたします!」
『真王様! 自分からもお願いいたします! 病気の妻が待っているのです!』
『お願いいたします! 私の家にも足の悪い父がいるのです!』
「……………………」
真王は目を閉じ無言のまま私や奏虎夫妻、そして給仕達の言葉を聞いていた。その間も給仕達の願いは合唱となって1分近く真王に投げかけられ続ける。そして真王は片手をあげて全員を黙らせ、ゆっくりと目を開き言葉を発した。
「皆の者の言葉はしっかりと聞いた。そこで私から提案する」
提案。その言葉を聞き全員が安堵の表情を浮かべる。きっと良い案なのだろう。きっと外出を許可してくれるのだろう。そんな期待を胸に真王の次なる言葉を待った。そして真王は全員に聞こえるよう、ゆっくりと、そしてはっきりと言い放つ。
「その者らを王宮に連れてこい。そして全員を能力者にする」
絶句した。私だけじゃない。その場にいる全員が一気にどん底に突き落とされた顔をしている。
「待ってください! それは息子を能力者にして、宇宙人と戦えと言うのですか!?」
「息子はまだ8歳なのですよ!?」
「その通りだ。家に帰らなくて済むのだぞ? それに家族皆で過ごせるのだぞ? いい案ではないか。他の者もだ。全員王宮に連れてくるがいい」
なんて奴なの……! そこまでして彼らを王宮から出さないつもり!?
「それはいくら何でも……!」
「黙れぇ!」
何か言おうとした奏虎夫妻を激昂した真王は一括し黙らせる。
「黙って聞いていればいい気になりおって! 我は真王だぞ!」
「「「………………」」」
全員自分の立場や身分の違いを思い出したのか一様に黙り込んで俯いてしまう。
「不服か! ならば貴様らの家族を皆殺しにしてやる! そうすれば家庭に帰るなどという未練はなくなるだろう!」
「「「っ!?」」」
ひとしきり怒鳴り散らした後、真王は一呼吸おいて気持ちを落ち着かせる。髪や乱れた服装を整え、元の表情に戻る。
「それが嫌ならば黙って言うことを聞け。これは命令だ」
「真王様! それだけは……!」
「息子の命だけは見逃して……!」
「またお前達か。兵達よ。奴らを取り押さえろ」
『「はっ!」』
「くそっ! 離せ!」
「は、放してください」
奏虎夫妻は近衛兵10人に取り押さえられ、強制的に地べたに突っ伏されてしまう。それでもなお暴れ、真王を睨みつける奏虎夫妻に、真王は近くにいた兵の腰から拳銃を抜き撃鉄を起こして夫妻に銃口を向ける。
「これは反逆だ。まずは貴様らを能力者にしてやる」
「「!?」」
そんな言葉を聞いてしまっては私も黙っていはいられない。この王には何を言っても無駄だ。だが私の力ではこの状況を打破できない。ここは兄さんに何とかしてもらわねば!
「兄さん!? 兄さんも何か言ってください!? こんな事許されると思ってらっしゃるのですか!?」
「アンティズメンノ。よく考えてものを言うのはお前の方だ。感情に流されて我々の使命を忘れてしまったのか?」
「使命はわかっています! しかし子供や体の不自由な者まで強制的に能力者にして戦わせるなんてどうかと思います!」
「そんな事……いままで何度もあっただろう?」
「た、確かにありましたがそれは最後の最後、追い詰められた時に彼らが自ら選んだ選択です! 今回のこれは強制的で横暴すぎます!」
「いままでの星の住人たちの事を思い出してみろ。今この星の人々が犠牲になれば他の星の種族は生き残るのだぞ?」
「ぐっ……! それはその通りかもしれませんが……!」
「この星に来た時も、この前も言ったが我々には後がないんだぞ。少し冷静になれアンティズメンノ」
「冷静になるべきは兄さんではないのですか!」
「何?」
「『奴』に囚われ過ぎです! 以前はこんなやり方取る方ではなかった! 以前は……きゃあ!」
その瞬間左頬に硬いものが当たり、私は地に倒れこんでしまう。私は頬を押さえしばらく放心状態になってしまう。そして私の左頬に当たったそれが兄さんの手の平だと気づくのに数秒かかり、ふと顔を上げ兄さんを見つめる。
「アンティズメンノ! 誓ったはずだ! この戦いに勝って笑顔で各星に行こうと! 今まで戦ってくれた人々に礼をしに行こうと! 情に流され立ち止まるな! それが我々に課せられた責務だろう!」
兄さんは目に涙を浮かべ激しく叫ぶ。それにつられ私も涙を流してしまい、手で拭う。そして兄さんは私に手を差し伸べながら続ける。
「叩いてすまなかったアンティズメンノ。だがわかってくれるね?」
「……はい兄さん」
私は立ち上がり暴れる二人の元に歩いてゆく。
「アンティズメンノ殿。それではやってくだされ」
「……はい。……ごめんなさい……」
奏虎夫妻に手をかざし能力を発動。私は彼らに能力を授ける。
「「ああああああああああああああああああああああっっっ!!!」」
2人の体が青白い閃光で包まれ始める。2人はそんな中でも抵抗を続け、人間の声とは到底思えない程の叫び声が王宮中に響き渡る。
「「真王ぉおおおおおおおおお!!!」」
2人は真王を睨みつけ叫ぶ。真王はそんな夫妻に更に腹を立てて言い放つ。
「貴様ら……まだそんな反逆的な態度をとるか。もう我慢の限界じゃ。能力者になった暁には見せしめにお前らの息子を殺してやる」
その真王の言葉を聞いた瞬間……青白い閃光は一変し、ブラックホールのようにあらゆる光を飲み込んでしまいそうなほど深い漆黒の渦が2人を包み込む。
「な、なんだこの反応は!?」
「なにが起こっているの!?」
「メタスターシ殿、アンティズメンノ殿!? これは一体!?」
「わかりません! こんな黒い渦が発生するなんて今まで見たことが……!」
私達は今まで起きた事のない現象に慌てふためき、その黒い渦の中いる奏虎夫妻は生物の限界を超えた声を上げる。
「息子には手を出させんぞぉおおおおおおお!!」
「あの子は私達が守るぅううううううううう!!」
直後王宮がとてつもない地震に襲われる。その場にいる者達は全員立っていられず、膝をつき四つん這いになったり、近くの石柱にしがみついたり、お互い抱き合ったり、身の安全を確保する。
「「「うわぁああああああ!?」」」
2人を押さえていた兵も黒い渦に巻かれた上に、この世の終わりかと思うほどの地揺れを味わい、恐怖のあまり拘束を解いて逃げまどう。戦闘訓練を積んだ者達ですらそれほど取り乱すのだ。今まで戦ったとのない給仕の者達の恐怖は計り知れず、全員神に祈りを捧げながら頭を抑え地に伏せる。
「「ああああああああああああああああああああ!!!」」
2人の絶叫は更に増し、揺れはどんどん激しさを増してゆく。石柱にはヒビが入りパラパラと石くずが零れ始め、地面には亀裂が走り、土の中に埋まっていたミミズやアリなどが地中から這い出て、近くに祀ってあった真王の石像はバランスを崩し倒壊する。
「アンティズメンノ! 何が起きているんだ!?」
「わかりません! でも! わかることは1つです!」
「アンティズメンノ殿! 何がわかるんだ!?」
「彼らは……強大な力を持った能力者になろうとしています……!」
手は焼けるような熱さに襲われ、気を抜くと意識が飛びそうになるほどエネルギーを吸い取られている。そしてついに石柱は倒れ始め、何人かの人が下敷きになり、ここから見える王宮の屋根が陥没して建物内に落ちていく。更には落とし穴のように空いた地割れの隙間に給仕の人間が飲み込まれる。先程まで雲一つない晴天だったにも関わらず、上空には薄暗い雲が発生し、辺りはどんどん暗くなっていく。そんな中、兵の1人があることに気が付き空を見上げる。
『お、おい! 雲が! どんどん迫ってきているぞ!』
その言葉につられその場にいる全員が空を見上げると、兵が言った通り上空に浮かんでいる雲がどんどんと王宮に迫って降下してきた。
「なんだ? 雲が王宮に降下しているのか?」
「違う……そんなレベル話ではない」
「何……?」
兄さんはテレポートでその場を後にし、どこかに消えてしまう。取り残された真王や兵、給仕達はどうすることも出来ず、ただ地面にしがみつくことしかできなかった。その間に降下した雲が王宮内を埋め尽くし、気温が急激に落ち始めた。気のせいか呼吸もしづらくなり、めまいや頭痛もしてきた。そんな時、兄さんがテレポートで我々の前に戻ってきた。
「た、大変だ……」
「メタスターシ殿? いままでどこに……」
「テレポートで王宮の真上や成層圏からこの地球を見てきました……」
「兄さん!? 何が起きているのですか!?」
「この王宮は地盤ごと上に押し上げられている……。まるで木が急激に成長しているように地面が上空に伸びているんです」
「な、なに……?」
雲が王宮に降りてきたと思ったのは、こちらが逆に上空に上がっていたということか……。ということは呼吸がしづらくなったのも、めまいや頭痛がしてきたのも高山病のようなものが原因なのだろう。
「それだけではありません。世界各地の島々が地殻変動して一つに統合し、この王宮を中心に左回りの渦巻き状に広がっていっています」
「ば、馬鹿な……! 世界の形が変わっているのか……!?」
流石の真王もこの状況においては冷静さを欠き、挙動不審に陥ってしまう。
「そして渦巻きの間の海には巨大な竜巻が発生していて、海を越えることは不可能な状態になっています」
「そんな……まさかその原因とは……!」
「ええ……彼らです」
真王や兄さんは夫妻を見つめる。この地球規模の地殻変動と天変地異は目の前にいる、星から見たら本当にちっぽけな人間であるこの二人の能力で起きているのだ。だとしたら……この二人はとんでもない能力を発現した能力者に変わってしまったということだ。
「息子には近づけさせんぞぉおおおおおお!!!」
「あの子は私達が守るぅうううううううう!!!」
2人の体を包む黒い渦は更に大きく、暗く、速さを増している。もしかして……ここまでの能力者になった原因は……
「子を守るため……」
真王に近づけさせないために、子を遠ざけるために渦巻き状に島を広げ……
真王が海や空から近づかないように、子を守るために巨大な竜巻で壁を作り……
何が何でも真王を我が子に近寄らせない、子を守る親の思いが、これほどの能力者にした……というのだろうか……
「このまま宇宙まで付き合ってもらうぞ真王ぉおおお!!」
「あの子を守るためなら喜んで死んでやるぅうううううううう!」
王宮は更に上空へと持ち上がっていく。髪の毛や睫毛は凍り、吐く息は白くなる。更にいくら吸っても肺に酸素が取り込まれず、過呼吸に陥る。2人はここで自分達の死をもって真王を殺そうとしている。これ程の力だ。それも可能だろう。私の視界はどんどんかすみ、頭痛も酷くなり、このまま目を閉じたら数秒で深い眠りにつきそうになる。
「「うっ!!」」
その時銃声が2度鳴り響いた。それに伴い夫妻は糸が切れた人形のように地面に倒れこむ。
「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」
呼吸が荒くなり、頭痛やめまい、寒さに震えた手で真王は銃を発砲した。自分が殺されると知った真王は、自らの命を守るために2人の頭を打ち抜いたのだ。
『お、おい! 揺れが収まっていくぞ!』
『2人が死んだからか?』
『た、助かった!』
この揺れの原因である2人が死んだことにより王宮の上昇と揺れは完全に止まり、王宮には安堵のため息や歓声が上がっていた。
「何て力だ……」
兄さんは地べたに倒れこみながら一言呟く。これ程の力……言うまでもなく過去一番の力だった。これ程の芸当はおそらく『奴』にもできない。それほどの力だった。
「っ! 奏虎さん!」
私は倒れこんだ2人の元に駆け寄り、その顔を見る。眉間には銃痕の後があり完全に命を落としていたが、その眼は死してなおまだ強い輝きを放っていた。
「…………安らかに……お眠りください……」
私は2人を寄り添うように並べて寝かし、見開いた瞼を手で閉じて、胸の前で腕を組ませた。傍らに咲いていた美しい花を摘んで彼らにお供えし、私は祈りをささげた。
「真王様……」
「メタスターシ殿」
「「話合いをしましょう」」
アンティズメンノ・アルダポースがここに記す第9万4891冊目の手記。
今日は……とても書く気にはなれないが、書かなければならないと私の直感が言っている。私には記録する義務があるのだ。きっかけはただの楽しみで始めた手記だが、いつの間にかこれが思い出にもなり、記録にもなる。
だから私は書く。
今日は奏虎夫妻が驚くべき能力を開花した。地殻変動と天変地異を起こす能力だ。そのせいでこの世界は地形を変え、環境も変わった。
兄さんのテレポートにより上空から見た報告によると、王宮は夫妻の能力により地盤ごと高さ1万mにまで持ち上げられ、元は数十あった島が一つに結合し、左回りの渦状に広がっており、その渦を描く中心部に我々のいる王宮があるらしい。
渦の周回は1周にも満たず、約半周程だが、途中で数十キロほど島が離れている部分がある。これは島がくっつく前に能力者が死んでしまったからだろう。そして渦の間、つまり海に当たる場所は対岸まで1万キロほど離れている上に沖には厚さ10㎞にも及ぶ巨大ハリケーンが発生してとても通れそうにない。
これ程の力を持った能力者が生まれた理由は子を守る親の思いが生んだ力なのだ。
そのあとすぐに会議が開かれた。とは言っても兄さんは行った事のある場所や、行き先が正確にわからないとテレポートが出来ないので各王の場所がわからず兄さんと私、真王、そして王宮にいた学者たちで会議が行われた。そして会議が開始し、どうして夫妻はこれ程の超能力になったのか? 他の能力者達との違いは何か? 弱い能力者と強い能力者との違いは何か? 夜通し行われた会議の結果、ある結論にたどり着いた。
それは……
何かを奪われる。何かを奪われていた。ということだった。
多くの死刑囚達は人殺しや放火などで捕まっていたが、ここに捕らえられていた為に大好きな火や殺しが出来なかった。つまり自分の大好きなことが奪われていた状態にあったのだ。そして夫妻の場合は、自分達の宝と言える息子の命が奪われそうになった。そしてその状態で能力者になったために強力な能力者になった。という結論になった。
怒り、恨み、など強い思いが強力な能力者を生み出す。今までの星の種族は、皆気のいい方々で、自ら進んで能力者になったからあまり良い能力者にはならなかった。だがここの星の人間は他の種族と違い、様々な感情を持ち合わせている上に無理やり能力者にさせられたのだ。悲しい結果だったが、強力な能力者を作りだすヒントを得られた。というところで会議は終わり解散となった。明日は一体どんな事が待ち受けているのだろうか?
これ程憂鬱な気分で明日を迎えるのは、『奴』と戦う前夜のような……いや。それ以上か……。もう寝るとしよう。