はじまりはじまり
はじめまして。こてぽです。
初投稿なので知らない人しかいないと思います。
アイビスペイントの方でイラスト投稿してるのですが、文章を書くのも好きなので、この作品を書いてみました。
ゆるっともやっと近未来ファンタジー目指して頑張ります。
魔法と科学の融合により起こされた奇跡___アンドロイド。
人と殆ど変わらない、人類の最高傑作。
家事も子守りも出来るアンドロイド。
教師にだってなれるアンドロイド。
友達にも恋人にもなってくれるアンドロイド。
最早人類になくてはならない存在。
但し、そんな完璧なアンドロイドには、たった一つ、あまり有名ではないが、たった一つの欠点があるという____。
からんからん。
「あのう、すみませーん。」
おれは細い路地の横壁にひっそりと張り付いた木材の扉を開けた。しかし、返事は無い。
「“夢喰い”さん、ですよね?おれ、宮守宮守結木研究所から紹介されて来た、結木なんですけど。」
と、大きめの声を発する。ああ、今はあんまり大きい声、出したくないんだけどなあ、と、隣に佇むおれの少年をちらりと見る。こいつも、返事はしない。ただ、橙色に染まった瞳を不気味に輝かせているだけだった。
「あの、おまたせ・・・・・・しました・・・・・・。」
狭い通路、その奥の階段から高校生くらいの女の子が降りてきた。娘さんか何かだろうか。ふわりとした黒髪の、目の下の濃い隈が目立つもの、美少女といえる可愛らしい顔立ちだ。
もう、午後三時頃だったけれど、女の子は寝間着姿で、寝起きで悪いことしたな、と思っていた。
「すみません。“夢喰い”に予約していた結木です。店員さん、いるかな?」
「あ、わたしが、店主なので。」
「は?」
店主?この高校生の女の子が?と、疑問を思い切り顔に出していると、彼女はむっとして、
「わたし、もう二十四なんですよ。」
と言った。
「えっ、あ、何かすみません・・・・・・。」
「いや、別に・・・・・・。ていうか、あなた、そこのアンドロイドのことで来たんですよね?」
この会話で忘れかけていたけれど、そういえばそうだった。
「あっ、はい。こいつ___ソータが・・・・・・!」
「“夢”をを持ってしまったんですね?」
「はい・・・・・・。あ、あの宮守先生も言っていた、“夢”って、何なんですか?」
「はい。話しますよ。でも、とりあえず・・・・・・店に入って。聞かれると、ちょっと良くないんです。」
「ええと、“夢”っていうのは・・・・・・、何から説明すれば良いんですかね。」
まず、アンドロイドは、魔法と科学が融合してできたものであることは知っていますね。あれって実は、九割方科学の力で作られているんですよ。魔法が使われたのはたった一つにして、一番の中枢の部分___自立思考の機能なんです。それによって、アンドロイドは人と寸分違わないものになった訳です。
で、ここからが本題。
自立思考___つまり、感情を持って成長するアンドロイドたちは、わたしたち人や、魔法の影響を少なからず受けるんです。そして・・・・・・、それらの影響を受けすぎて暴走した状態が、世に言う“故障”と言うやつで、ああ、それをわたしは“夢”を持つ、って言ってるんです。
わたしは一応魔法使いの端くれでして、固有技能に夢に潜るというものがあるので、アンドロイドたちの夢に潜って彼らの“夢”を食べるんですね。
「は・・・・・・?」
「まあ、いっぺんに教えたら分かりませんよね。」
アンドロイドは魔法と科学の融合の結晶という事は社会常識として習っていたけれど、どんな所にどちらが使われるかは教えられていなかった。企業秘密だかなんだかで、先生すら知らなかった。それをなんでこの人は知っているのだろう。
それに、彼女は今なんと言った?魔法使い?
魔法使いは現代ではもう全人口のうち十パーセントしか居ないはずで、固有技能なんて持っている人なら国に保護されるはず。
「いろいろ、突っ込みどころ満載なんですけど・・・・・・?」
「ですよねー。まあ、見ててくれればいいです。」
ところで。
と彼女は話を切りかえた。
「あなたのアンドロイドは、一体何の“夢”を持ったんですか?」
「はい。実は・・・・・・。」
___このアンドロイド、ソータは、おれが小さい頃からずっと兄弟みたいに一緒にいた、家族同然の存在なんです。
遊ぶ時も、勉強する時も、辛い時も、いつもおれの隣にはソータがいて、それが当たり前で、これからもそうだ、って思ってたんです。
でも・・・・・・、ソータは、人に、恋をしてしまったみたいで。それから、どんどんおかしくなって、今は無理矢理感情をシャットダウンして大人しくなっているんですけど・・・・・・。
ほとんどの研究所では、もうリセットするしかないって言われて、宮守研究所で、ここを紹介されたんです。
お願いします。おれ、ソータの記憶をリセットしたくないんです。どうにか治してくれませんか___。
「そうでしたか・・・・・・。それは、災難でしたね。わかりました。やってみましょう。」
「本当ですかっ!ありがとうございます!」
「ああ、でも、保証はありませんから。魔法は万能じゃないんです。それに、ソータさんの瞳、もう橙色・・・・・・。かなり“夢”が深くなっています。」
「どういう・・・・・・、こと、ですか?」
「ええと、アンドロイドの瞳の色は故障するにつれて色が変わることは知っていますか?」
「は、はい。それくらいなら。」
確か、正常な時は青色、そして、故障するにつれて赤色に近づいていく、と習ったはずだ。
「“夢”が濃く、深くなるのもその色で分かるんです。橙色はもう、かなり“夢”に支配されていると思います。」
「そ、それじゃあ・・・・・・。」
「いえいえ。まあ、確かに難易度は高いですが、赤色になっていればもう私の手には負えませんから。ぎりぎり間に合った、と気休めではありますがそう思ってくれたら。」
宮守さんめ・・・・・・、と、恨めしそうに彼女は呟いていて、苦笑してしまった。
「では、誓約書を。」
手渡された紙には、よくある“万一の事への責任は当店は負いかねます”といった内容と、“
必ず店主の指示に従ってください”という意味深な内容などが書かれていた。
おれはそれにサインをして、紙を返した。
「お願いします。」
「はい。」
「わたしが施術している間は、絶対にわたしに触らないでください。技能上、失敗してもわたしは戻ってこれます。でも、アンドロイドは記憶を失ってしまいます。ですから、絶対に触らないでください。」
「はい。」
恐ろしい言葉に、思わず声が上擦る。
彼女はそれに気にする事はなく、そして、神妙な顔で次の言葉を紡ぐ。
____また、わたしが潜っている間、獏獏が出てきますけど、気にしないでください____。
「では。」
と言って、彼女はソータの手を両手で握った。
「・・・・・・固有技能“夢潜り”。」
そう能力を発動すると、一瞬、眩い光が目を覆う。思わず目を瞑って、そして、目を開けると、そこには___眠る店長と、淡い桃色の獏がいた。
「はっ・・・・・・!?」
獏・・・・・・?と呟くおれに、そいつは
「よお。」
と何でもなさげに声をかけた。
桃色の獏は、その名の通りで、本来白いところが桃色、黒いところが淡い紫色だった。
「え、誰です、か・・・・・・。」
「おいらはばく。こいつに取り憑いてる邪神。よろしくな~!」
気さくな様子ではあるが、いきなり現れた謎の生き物に対しては、警戒せざるを得ない。
「な、何なんだよ。」
「おいらはこいつに誰かが触らないように見張りをしてるのさ。お前も、変な気を起こしたりしたら、おいらが・・・・・・殺しちゃうかもしれないぞ?」
思わず鳥肌が立つ。こんな見た目なのに、睨まれて、体が竦んで動けない。何者なんだ・・・・・・。
しばらく無言が続いて、気まずすぎて逃げ出したくなったその時、むくりと店主さんが起き上がった。
「ふあ、あ・・・・・・。」
大あくびをして、こちらを向く。
おれははっとして叫ぶように聞いた。
「あっ、あのっ!ソータは・・・・・・!」
「はい。成功ですよ。おめでとう。ソータさんの、恋の“夢”は綺麗さっぱり取り除かれました。」
「あ・・・・・・、良かったあ・・・・・・!」
がくんと膝が折れて、地面にへたり込む。その様子を彼女はくすっと笑って見た。
「良かったですね。では、再起動しましょう。ほら、結木さん。あなたがこのボタンを押すんですよ!」
「う、はい。・・・・・・よし、ソータ・・・・・・。」
ぽちり。
ソータの目が、ゆっくり開く。瞳は空みたいに青い。
目が開ききると、起き上がった。
「・・・・・・蒼弥蒼弥、オハヨウ。」
いつもの声。
いつものソータ。
「っ・・・・・・!ソータ!良かった!うぅ、ひっく、ああ。」
「ドウシタンダ。急ニ泣クナヨ。」
「あぁ、ソータ、ソータ。良かった・・・・・・。おれっ、ソータがいなくなるなんて耐えられなかった。本当に良かった。」
「仲、良いんですね。」
と、にこりと、隈に縁取られたその目で彼女は優しく笑った。
「はい!本当に、ありがとうございます・・・・・・!」
「ええ。わたしも嬉しいです。」
“夢喰い”さん、“夢喰い”さん、わたしに生命を頂戴な。
“夢喰い”さん、“夢喰い”さん、あなたの生命を頂戴な。
「ソータ、おはよう。」
「オハヨウ。」
いつも通り。いつも通りの幸せな日々が帰ってきた。ソータも、暴走せず、今日も青い目が海みたいに綺麗だ。本当に、“夢喰い”さんには感謝しなくては。今度、菓子折でも贈ろうか。
本当、いつも通り。
幸せ。
今まで通りの幸せ。
でも、ソータは?
恋の相手も恋の記憶も、なくなったソータは?
ぶんぶんと頭を降って思考を隅へ追いやる。故障が治ったんだ。ソータだって、幸せに違いない。きっとそうだ。
もやもやとした心で、おれは朝食を机に置いた。
“夢喰い”さん、“夢喰い”さん、わたしに生命を頂戴な。
“夢喰い”さん、“夢喰い”さん、あなたの生命を頂戴な。
ばくさん、ばくさん、わたしの“夢”から離れて頂戴。
ばくさん、ばくさん、わたしは“夢”食うのが苦しくてたまりません。
アンドロイドの“夢”は、吐き気がするほど甘ったるくて、非現実的で、気持ち悪い。
【あとがき】
はじめまして。こてぽと申します。
アイビスペイントでイラスト投稿してましたが、文章を書くのも好きなので、この作品を書いてみました。楽しいです(笑)。
とっても初心者ですが、読んでくださると喜びます。
少しずつ、続きを書けたらなあと思います。
よろしくお願いします( ̄^ ̄ゞ
こてぽ