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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第2章 ふたつめの世界 ~大学生、勇者になる~
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2-3 大学生、異世界で初めてイイ思いをする

声をかけてきた美女は、アレクシア・アリステインというミスティルテイン王国の隣国、アリステイン大公国の騎士だった。

そして名前の通りアリステイン大公国の元首、アリステイン大公家の第三公女だという。


いい。実にいい。夜だというのに、長めの黒髪に白と青を基調にした鎧がよくあっていて美しいスタイルを際立たせている。

やはり異世界に来たからには美女がいないといけない。

彼女ともう一人、近衛騎士が勇者召喚の話を聞いて助力のために派遣されたのだという。

パーティーに加わりたいというので、2つ返事でOKした。


一緒にきた短く切りそろえられた茶髪の近衛騎士もなかなかの美女だった。

話がしたいというので酒場に入り直して、酔った勢いで今のパーティーやミスティルテイン王国への不満をぶちまけてしまった。


勇者頼みなくせに碌な支援もしないミスティルテイン王国や、ナルシストの騎士、宗教狂いの僧侶と一通り愚痴を言ったが、彼女らは同情的に相槌をうって、私達でよければ力になりましょうとか慰めて差し上げますとか言われて、同じ宿に入った。

正直、ちょろすぎてかなり怪しかったが、そうそう縁のない美女二人を前にして理性など一瞬で消し飛んだ。


翌朝、外の日差しで目が覚めた。

就寝が遅かったのと、その前まで酒を飲んでいたせいであまり寝た気がしない。正直、酒も残っている感じがする。

装備全部盗られて道端に放り出されてるくらいはあるかもと思っていたが、左に目をやると黒髪の美女が裸で寝ていた。

反対側も柔らかいものが腕にあたっている感触がある。

うーん、異世界最高。

とりあえずその感触を楽しみながら二度寝することにした。



元の宿に戻ってパーティーに合流したが、ミスティルテインとアリステインの2名VS2名が勃発し、罵り合いを続けている。

俺はそれを魔術師のメルドーズと眺めている。


「お前は加わらなくていいのか」


俺は頬杖をついてどうでもよさそうに眺めているメルドーズに声をかけた。


「あ゛?」


心底嫌そうに返事をしてこちらをみるメルドーズ。昨日、ナルシストと狂信者を俺に押し付けて帰ったことは忘れていない。

ささやかな仕返しである。


「俺は傭兵だから、雇用主に従うだけだ」


ぶすっとしてまた罵り合いを眺めている。


「そういえば、昨晩は帰ってこなかったんだな」

「ああ、彼女らのとこに泊まってた」


さらっと返事したが、メルドーズの顔が驚愕に染まる。


「なん・・・だと・・・」


わなわなと震えながら俺を見る。そんなに見つめられても俺はいたってノーマルなので期待には沿えない。


「お前・・・まさか・・・彼女らと・・・」

「ああ、やった」


素っ気なく答えた。

メルドーズの顔はさらなる驚愕に彩られ、凄まじい顔になっている。顔芸かな?


「どっちと?」

「両方」


メルドーズはもう死ぬんじゃねーかなっていう凄まじい顔になった。


「な、なんて羨ましい・・・」


男ならやはりそう思うのか。


「人生で最高の夜だった」


優越感に浸っている俺を、メルドーズは尊敬の眼差しで見ている。


「初めて勇者が羨ましいと思った」


そっちかよ。まぁ、確かにここまで碌な報酬もなく、あのうざい2人に絡まれてただけだからな。

というか、メルドーズと初めてまともに話したが、大学の友人に近いような気安さを感じてほっとした。


「まだ、終わらんな」

「終わるのかね、あれ」


それからしばらくメルドーズと罵り合いを眺めていたのだが、一向に終わる気配がない。

あの2国って隣同士なのに仲悪いのかね。

まぁ、地球でも隣同士って大概仲悪いしそんなもんなのかもしれない。


「勇者様的にはどっちの味方なん」


メルドーズの話し方がだいぶ砕けたものに変っている。こっちが地なのだろう。


「ていうか、その勇者様ってのやめろよ」

「んじゃ、ユーイチはどっちの味方なん」


呼び方は変わったが質問は変わらないらしい。


「普通に考えてどっちだと思う?」


勝手に人を呼び出した挙句、なんの報酬も用意せず、勇者の義務だの自国の都合だのを押し付けてくるミスティルテイン王国と、美女2人つけていい思いさせてくれるアリステイン大公国。

どっちのほうがいいかは明らかである。


「まぁ、俺も報酬が高くなかったらミスティルテイン王国の仕事なんか受けんわな」


ミスティルテイン王国を出てわかったことだが、宗教とほぼ一体化しているミスティルテインは狂信者集団とでも思われているようで、あまりいい印象は持たれていないようである。


「聖剣伝説も勇者伝説も作り話だと思われてたからなぁ」


伝承に残る以前の勇者召喚は百年以上前で、かつミスティルテイン王国は狂信者が創った異端の国とみなされている。

ミスティルテインが唱えるお題目なんて誰も信じていなかったとのこと。


で、ミスティルテインの2人とアリステインの2人が何を言い争っているのかというと、大きくは2つである。

1つはアリステインの2人も魔王討伐の旅に同行すること。魔王討伐はミスティルテイン王国の使命であり、他国の助力は不要と頑強に抵抗している。傭兵はいいのかよ。

もう1つは俺の待遇について。誘拐同然に異世界に連れてこられて無報酬で働かされているのはあまりに可愛そうだというアリステインと、勇者は使命を理解しており世界を救うことは朝が来て夜になるように神の摂理として自然なことで報酬など必要ないというミスティルテイン。


うん、ミスティルテインの奴らそんな風に考えてたのか。背中から斬りつけてやろうか。

アリステインのほうも、「勇者」というブランドを囲い込んで自国の利益になるようにという背景は透けて見えるものの、いい思いをさせてもらえるのだからどうぞご自由にという気になる。


まぁ、最悪ミスティルテインの連中をパーティーから外せばいいだろと思いながら、ぼんやりと罵り合いを眺めるのだった。

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