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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第1章 ひとつめの世界 ~はじめての異世界~
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1-3 自衛官、現場に向かう

ヘリに大型スピーカーがついていないことを嘆く海兵隊パイロットのUH-1Yは高度をある程度とって王都を目指した。

偵察行動中なんだからスピーカーついてても鳴らせないだろ。

SAMやレーダーを気にする必要がないので、目的地付近までは高度をとって発見をさける作戦である。


「いつでも援護してやるからすぐ無線で呼んでくれ」


ヘルメットにスカルボーン(海賊旗)のマーキングをしたガンナーが、機体脇のロケット弾ポッドを叩きながら英語で話しかけてくる。


「その時はよろしく頼む」

「ロケット弾と12.7mmで何が来てもぶっ飛ばしてやるぜ」


ヒャッハーとやたらにテンションの高いガンナーはGAU-21のベルトリンクを確認している。

ちなみに僚機は、ロケット弾は同じだがドアガンはGAU-17(ミニガン)である。

どっちにしてもRPGはおろか小銃すら持たない相手に過剰火力である。


「あと5分」


パイロットが到着5分前を告げる。

いったん、事前偵察隊と合流したうえでどうするか決めることになっている。その間ヘリは待機になるので、素早く結論を出さねばならない。

情報収集継続なら、ヘリは一度帰還。二手に分かれて偵察活動を続行。

猶予なしとなれば、事前偵察隊は王都外縁部で陽動を行い、我々はヘリで王城地下牢を急襲という流れになる。

直にヘリは高度を下げ始め、着陸した。



「状況は?」


事前偵察隊の小隊長に状況を確認する。


「これを見てください」


防塵防滴耐衝撃のタブレットが差し出される。

画面にはある程度の高度から地面を見下ろした映像が映っている。

映っているのはどうやら王都の城壁内市街地のようである。


「ドローンが使えるんだな」

「GPSが使えないので自律飛行は不可能ですけどね。ラジコンヘリみたいなものです」

「たしかに兵力移動は活発なようだが・・・?」


隊列を組んだ歩兵が歩いているが、通常の行軍のようで、特に政変というような印象は受けない。


「今朝からかなりばたばたと動き回っていたのですが、先ほどから動きは落ち着いて、整った行軍が続いています」


「戒厳令という感じも受けないし、どこかで有事があって増援を派遣するとかじゃないのか」


外出禁止などはないらしく、むしろ兵士が行軍する脇には見送りと言った感じで大勢の市民がでている。

部隊は全て王都から出ていく方向で、群衆は手を振ったりしているのでクーデターとかではなさそうである。


「政変でないのなら偵察活動を継続でいいのでは?」


疑問に思ったことを口にする。


「そうとも言ってられなさそうなんですよ」


小隊長の視線を追うと、その先には両手を後ろに縛られて転がされている現地人と思しき男が2人いた。


「なんだあれ」

「敵の斥候ですね。見つかったので捕縛しました」


あっさり言っているがそんな報告あったっけ?


「彼らが言うには、魔王討伐のため勇者が派遣されるそうです」

「あれ、魔王って帰還者が倒したんじゃなかったか?」

「復活したようです。どうやら召喚した勇者全員が魔王にとどめを刺さないとすぐ復活するらしいです」

「面倒なシステムなんだな」


半ば呆れながら斥候を見やる。

武装解除されて下着姿で転がされているので、うるさいマスコミや市民団体が見たらめんどくさそうである。

まぁ、この世界にはいないわけだが。


「で、相変わらず戦うことを拒んでいるらしい拉致被害者2人を無理やり魔王の本拠地まで連れていくみたいです」

「拒んでるって、こっちに連れてこられて10年だろ?何してたんだ?」

「日本にいた時から筋金入りの引きこもりだったらしいですからね、引きこもってたんじゃないですか・・・?」


つまり、軍隊で魔王の本拠地に殴り込んで止めだけやらせようということだろう。

・・・最初からそうしとけばいい話じゃないのか?

なんでゲームみたいに勇者が少数の仲間と魔王を倒しにいかないといけなかったんだ?


「というか、そんな奴が勇者とかこの世界大丈夫か?」

「まぁ、我々には都合がいいですよ。わざわざ王城を襲う必要がないですから」


確かにその通りである。問題は


「昼間に行軍中を狙うか、夜に野営地を狙うか・・・」


昼間なら強襲、夜なら隠密になる。


「まずは所在確認か。ヘリは帰ってもらうか?」

「斥候が戻らないとなると警戒されませんか?速攻すべきでは?」


・・・こいつ斥候に見つかったから強硬策とるために俺らを呼んだんじゃないだろうな。


「拉致被害者の所在はわかっても現状こちらの火力支援はUH2機のロケット弾とドアガン、60mm迫が1門。さすがに厳しくないか」


相手の数を考えるとせめて火力支援中隊の120mm迫は欲しいところである。


「拉致被害者の乗せられた馬車の隊列前後をUHが強襲、機関銃の援護下で突撃、拉致被害者を確保してUHで吊り下げ離脱ってことでいかがでしょう」

「作戦もクソもないごり押しだな」

「火力優勢ですから」


そりゃ火力だけで言えば相手が何人いようが優勢だろうが。なんせ相手の火力はせいぜい弓矢と攻撃まで時間がかかるという魔法である。


「どのみち話し合いには応じてくれなかったのでごり押しになりますよ」


そういえばこいつらは一応穏便な解決を試みて解放を求めはしたらしい。

遠方の国を装って、勇者はうちの国民だから引き渡せと言ってみたが、無視されたらしい。正規の外交チャンネルを経由しない要請なんてそんなものだろう。


「要救助者の位置はわかってるのか」


ここまで話を黙って聞いていた海兵隊のジャネット少尉が話に入ってくる。


「隊列をドローンで見た限り、荷馬車を除けば人員輸送用の馬車は1つだけ、しかもご丁寧に外から施錠するようなので間違いないかと」

「2人とも乗せられてるという確証は欲しいなぁ」


1人しか乗せられていない場合、もう1人の奪還が困難になる恐れがある。できれば2人まとめて救出したい。


「人質というわけでなし、敵に殺される恐れがないのだから仮に1人しか乗ってないとしても問題ないのでは?」


ジャネット少尉の意見も一理ある。


「とはいえ、それでもう1人を隠されて見つけられません。ではどうしようなくないか」

「とりあえず野営までは追跡して2人乗っているか確認しますか」

「それだとお前らが捕まえた斥候が戻らないのがばれるだろ」


結局のところ事前偵察隊が不意遭遇とはいえ斥候2人を捕まえたのが問題なのである。


「司令部の判断に委ねるしかないだろ」


堂々巡りになりそうだったので、とりあえず状況を上に報告して判断を仰ぐしかなくなった。

司令部の返答は


「UHに2機と海兵隊のAH2機を増派するので強襲せよ」


とのことだった。

上は人質救出をさっさと終えたいらしい。

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