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異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第1章 ひとつめの世界 ~はじめての異世界~
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1-2 自衛官、異世界に行く

派遣当日、派遣部隊は米軍を含めて東富士演習場に集結していた。

集結地の真ん中には、何やら見慣れぬ塔が立っていたが、その塔が異世界への転移装置という話だった。

塔を中心に半径数百mを転移させることができるらしい。


「あの塔も一緒に向こう行くんでしょ。壊れたりしたら帰ってこれるんですかね?」


うちの分隊で一番下っ端になる秋月三曹が心配そうに塔を見上げている。

塔の根元では技官があれやこれやと何かしている。


「まぁ、こっちにはもう1個残していくし、通信手段や小規模転移用の装置は別にあるし大丈夫だろ」


装備品を確認しながら秋月に応える。


「んなもん技官や偉い人たちがいろいろ考えてやってるよ。そんな心配してないで自分の心配をしろ。忘れ物はないだろうな」


鴨野が秋月を注意する。


「ドラゴンとかいるんですかね。楽しみですねー」

「モンスターとかもいて魔法もあるんだろ。どんななんだろうな」


他の分隊員は完全にピクニック気分である。

事前偵察の報告では、銃器は存在せず、魔法はあるものの攻撃に必要な時間、威力、射程、精度ともにせいぜい先込め式の榴弾砲とのことだったので仕方ないのかもしれない。


「相手が装備で劣っていても反撃してこないわけじゃないんだ、もうちょっと気を引き締めろ」


余計なお世話だとは思うが、分隊長として注意しておく。


「転移開始5分前、総員最終確認を行え」


設置されているスピーカーから音声が流れる。

それを契機に、全員黙って持っていく装備に漏れがないか確認に戻った。




転移は一瞬だった。

例の塔から光が溢れたと思ったら、転移は終わっていた。


最も、周囲は森や原野なので、富士山が見えなくなったのと何か様子が変わったので転移したらしいと判断できるだけだった。

そういう意味で富士山が見える東富士演習場は、転移したかどうかわかりやすいというメリットがあった。


隊員の点呼をしていると周囲に爆音が響きだした。

当初の予定通り、偵察のために回転翼機を離陸させるようだ。

もっとも、事前偵察部隊が転移先を選定しているので、場所に間違いがないか確認するための偵察で、ついでに周辺に敵対勢力がいないか確認するのだという。


「桐島一尉、双木一佐がお呼びです」


名前は知らないが連隊本部で何度か見かけた顔が呼びに来た。


「曹長、連隊長に呼ばれたから行ってくる。全員いつでも出られるように装備を確認しておいてくれ」


副長の鴨野曹長に声をかけて、連隊本部に向かう。

陣地設営中の本部管理大隊施設中隊が慌ただしく行きかう中、連隊本部に向かう。

塔の脇にあるプレハブ施設が現状の連隊本部である。

施設ごと転移できるなら基地ごと転移すれば設営の手間がないんじゃないかと思ったが、転移可能範囲内に部隊を詰め込むので、防御壁や塹壕の設営は転移後のほうがいいらしい。


「桐島一尉、入ります」


連隊本部の扉を開けると、作戦図を前に連隊長以下本部要員があれやこれやと無線を聞きながら記入したりしている。


「早々で悪いな、一尉」

「いえ、かまいませんが、何かありましたか」


ここがバタバタしているということは、何かイレギュラーが起こったということだろうか。

着いて早々ということは、転移場所が予定と違うとか、そもそも違う世界にきてしまったとかが考えられるが。


「王都を偵察中の事前偵察隊から、王都の動きが慌ただしいという連絡が入ってな」

「こちらの動きが察知されていると?」

「いや、それはないだろう。偵察隊は動きからして、政変かクーデターではないかと予想している」

いずれにしても面倒な話だが、救出を強行するならチャンスだろうか。

「悪いんだが、君の分隊は至急王都の事前偵察隊と合流してくれ。状況次第ではいきなり強硬策になる」

「確か王都まで80Kmほどありますよね。移動はどうしましょう」

「UHを確保してあるから至急向かってくれ」


それほど急な動きがあるということか。


「UHだと全員は無理ですね。2人残します」


乗れないことはないだろうが、装備も運ぶことを考えたら12人は無理だろう。


「いや、米軍が運んでくれるらしい。代わりに海兵隊員4人をオブザーバーとして連れていけとのことだが問題ないだろう。弾はいるだけ持っていけ」


気付いたら連隊長の横に立っていた海兵隊の偉いさんがぐっと親指を立てていた。階級章を見ると大佐だった。

多分日本側のトップと階級を揃えることで云々という政治的配慮で米側のトップなんだろう。米軍の派遣規模から考えると高すぎる階級である。

まぁ、階級で言うと一尉の自分が分隊長もおかしいのだが。


「わかりました、大佐よろしくお願いします」

「人質救出だろう、しっかりやってこいよ。俺も行って看守をぶっとばしてやりたいぐらいだ」


HAHAHAとアメリカ人らしく笑った大佐は日本語がペラペラだった。

当たり前だが元の所属は在日米軍なんだろう。

何にせよ、少なくとも日本人救出に関しては米軍も協力的ということのようだ。多分、世間的にアピールできるからだろうが。


「では情報分隊、進発します」


連隊長に敬礼して本部のプレハブを出る。

外に出て気付いたが、本部はエアコンがついていた。

じっとしていれば暑いというほどではないが、御殿場の10月より気温が高いようだ。


「総員、出発準備。王都で政変の動きがあった。強行突入も視野に装備を準備しろ、急げ」

「「「了解!」」」


持ってきた装備の点検をしていた隊員が一斉に散らばった。

不測の事態に備えて、転移時に行軍用の基本装備は整えてあるので、あとは突入用爆薬やスタングレネードといった人質救出用の装備を追加するだけである。

30分後には部隊は米軍のUH-1Y2機に分乗して王都へと向かっていた。

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