0-11 自衛官、休暇終わりを嘆く(ひとつめの世界)
「んあー、もう休暇も終わりかー」
ソファーで寝転びながら、ティーカップの中身を飲み干す。
「というか、どうせ仕事って言っても在クルセイド王国日本大使館の防衛駐在官でしょ。することないでしょ」
仕事中のはずなのに相変わらず同じ中身のティーカップを飲み干すマリア。
そうなのである。
こいつと結婚したせいで、中央機動連隊から外されてこの世界の防衛駐在官にされてしまったのである。
「ああー、もういっそ辞めよっかなー」
「辞めてどうする気なんですか」
「ひも?」
マリアがゴミを見るような目でこっちを見てくる。
いいじゃん別に、遊んで暮らせるくらい稼いでるんだから。
「まぁ辞めないけどねー。特戦群とは言わないから中即連くらいに戻れねーかなー」
延々書類と人に会うのが仕事とか向いてないと思うんだよなー。
「空自でパイロットになった同期は、飛行機から降ろされるときが辞める時だ!って言ってたし、俺も現場に戻してもらえなかったら辞めよっかなー」
「そんなに現場に戻りたいんですか」
マリアが微妙な顔をして見ている。
「そりゃ、別に書類仕事したくて自衛官になったわけじゃないし?」
「結婚したこと後悔してます?」
「別に望んでしたことじゃないし?」
って、ノータイムで返事したらマリア様が泣きそうになっていらっしゃる!?
「嘘嘘、冗談です。マリア様カワイイヤッター」
「棒読みですが、良しとしましょう」
ケロッといつもの無表情に戻るマリア。
この野郎。
「まぁ防衛駐在官の任期は3年だし、終わったら戻れるだろ」
「3年間こんな生活してたらもう戻れないでしょ」
「仕事中に昼間から酒飲むのはお前だけだからな?」
一応、昼間はこんなだが朝は日の出とともに起きて、トレーニングはしている。
恐ろしいのは、朝王都外周を走っているとばったりマリアと会ったことである。
鍛錬は欠かさないらしく、普通にこっちのペースについてきた。コワイ
「けど結局、異世界召喚とか転生ってなんなんでしょうね」
「さぁ?あの適当な世界神もよくわかんないし、なんなんだろうね」
この世界に最初に来た時に会った世界神を思い出すが・・・
「あれ?世界神てどんな見た目してたっけ?」
「知りませんよ。私は会ってないんですから。絶妙なタイミングでスキルやら無くしてくれたことに感謝ですね」
キミ、スキルとか関係なく強いもんね。
「世界神のあの神殿も機能無くなったんだろ?」
「ほんとなんなんでしょうね」
話題にはしたものの、別に興味もないと言った感じで再びティーカップの中身を飲み干すのだった。




