11-3 大学生、デートする(ふたつめの世界)
「ユーイチは帰らなくてもいいのですか?」
公都の街をアレクシアと一緒に歩いているとアレクシアに聞かれた。
「帰った方がいい?」
「いえ、そういうことではなく・・・」
アレクシアはごにょごにょとバツが悪そうにしている。
日本での俺の生活を心配してくれているのはわかっているのだが、困ってるアレクシアが可愛いのでついつい意地悪してしまう。
「心配してくれて嬉しいけど、大学は長期休暇に入っちゃったから向こう戻ってもやることないんよ。それならこっちで好きなアレクシアの手伝いしてるほうがいいし」
返事がないなと思ってアレクシアを見ると、顔真っ赤にして俯いていた。
相変わらず直球で言うと弱いね。可愛いけど。
一応、この世界にいる自衛隊には連絡したが、帰りたくないと伝えたら、じゃあ好きにしてていいですよと言われた。
どうせ連れて帰ってもまた召喚でどっかの世界飛ばされるんでしょ、とか言われたが、別に好きで他の世界に飛ばされているわけじゃないんだが。
とりあえず、大学は卒業するまでは通うことにするが、日本に帰った場合、またここに来るのは非常に難しそうである。
異世界間で結婚した桐島さんに相談してみたところ、
「君、いい体してるねぇ」
とか笑いながら言われた。
あれか、自衛官になれってことか。
「あー、ユーイチとアレクシアがデートしてるー」
そんな2人の時間をぶち壊してくる奴が1人。
元パーティーメンバーのルルである。魔王討伐後、元いた世界樹の森には帰らず、ふらふらしているらしい。
ちなみに、公都にはアレクシア曰く、「気付いたらいつの間にかいた」とのこと。
「そう思うんならなんで邪魔してるんですか?」
アレクシアさん、怒ってるの隠せてないですよ。
「んー、私もしたいから?」
そしてこのマイペース娘は何言ってんのかね?
「他人のデート邪魔する奴がデートできるとでも?」
「考えてみたらそだねー、じゃあまたねー」
現れた時と同じようにふわふわと離れていくルル。
ほんと不思議な奴である。
「何がしたいんだ、あいつは?」
「それは誰にもわからないでしょう」
とりあえず、ルルのことは置いておいて、市街視察と言う名のデートを再開する。
俺もアレクシアも、当たり前だが顔が売れているので、何やかんやと声を掛けられるため、完全に2人の時間というわけではないが、のんびりと市場を巡ったり、休憩がてらお茶したりと穏やかな時間を過ごす。
「平和だな」
「あなたのおかげで勝ち取れた時間です。感謝してますよ」
「俺を支えてくれたのはアレクシアだろ。俺は担がれてただけだよ」
3回も異世界に召喚されて、俺も少しは成長できたのだろうか。
できてないと、死んでしまったステインとフィーリスに申し訳が立たないが、いまいち実感がない。
「最初のころよりはだいぶしっかりしましたし、ちゃらんぽらんなところもだいぶ変わりましたよ」
あとは私だけを見てくれると嬉しいんですが、と小声で最後に付け足したのを聞き逃せなかった。
いや、わざと聞こえるように言ったのか。ドリョクシマス。
そんなわけでのんびりしていると、街路を城のほうから走ってくるエリーシャが見えた。
かなり焦っているようだ。緊急事態だろうか。
「アレクシア大公!大変です、ミスティルテイン王国との国境付近に巨大モンスターが現れたと報告が!」
「巨大モンスター?」
アレクシアと顔を見合わせる。
なんだろうか。デカいモンスターの定番と言えばドラゴンだが、そう言わないということは違うのだろう。
「・・・100mのタコです」
エリーシャの報告に、沈黙が周囲を支配する。
「・・・タコ?」
なんでタコ?




