表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚による日本人拉致に自衛隊が立ち向かうようです  作者: 七十八十
第2章 ふたつめの世界 ~大学生、勇者になる~
12/170

2-6 大学生、終わってもない旅を振り返る

2人の男がぐでっと酒場の机に伏していた。


「お前、そろそろ下半身で物事考えるのやめようか」


我がパーティー随一の後衛火力、魔術師のメルドーズがぐでっとしたまま言った。


「ちゃうねん」


なぜか関西弁で勇者ことこのパーティーのお飾りリーダーの俺は答えた。


「そこに美人がいて誘ってきたら我慢なんかでけへんねん」


日本にいたころは縁もなかったような美人ばかり誘ってくるのに我慢なんてできるはずがない。

まぁ、たいがい一緒に厄介ごともついてくるのだが。


「それでいい思いすんのはお前だけで、俺は毎回毎回厄介事に巻き込まれるだけだろうが!」


くわっと起き上がったメルドーズは俺の首を掴んでガクガクと揺すってくる。

まぁ、なんだかんだ言いながらもパーティーを抜けずについてきているあたりメルドーズはいい奴だと思う。


「いろんなことがあったなぁ」


遠い目をして言ったらメルドーズに頭を叩かれたが、ここまでの旅を思い返していた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


まずアリステイン大公国では狼に経済封鎖された都市の問題解決。

とは言ったものの、実際には第三公女のアレクシアが次期大公を巡る権力争いで権力基盤確保のためのアピールと問題解決を依頼してきたのが真相だった。

王狼が都市を封鎖していたのは次期王狼がその都市に連れ去られたためだったのだが、その次期王狼を連れ去ったのは実は大公継承権をアレクシアと争う第二公子で、アレクシアの力を削ぐために最大の権力基盤である商業都市に次期王狼を監禁していたのが真相だった。

まぁ、いわば傍迷惑なお家騒動だったわけだが、捕まえた魔物商がゲロったおかげで国内最大の経済都市を麻痺させた第二公子は失脚。めでたくアレクシアは次期大公に確定した。

なお、第一公子がいるのではないかと聞いてみたところ、


「絵にしか興味の無い人で、俺は二度と政治には関わらない。と言って出奔してます」


と苦笑いしていた。

その出奔と第二公子の人格や能力から「第三公女を大公として即位させよう」という意見が多くなったのが原因で跡目争いになったらしい。


「あれに国を委ねるとか考えられなかったので、ユーイチ様には感謝していますよ」


といってキスしてくれたアレクシアは無茶苦茶可愛かった。思わずほおが緩んでしまう。


で、いざ次の国に向かおうとした時に問題が起こった。

国内のゴタゴタを治めないことには同行できないとアレクシアが言い出したのである。

ああ、利用されただけだったのかと泣きそうになったが、メルドーズと2人で


「あの狂信者2人だけを連れて魔王討伐なんて無理です」


と泣きながら縋り付いたら、アレクシアは困った顔をしながら


「国内が片付いたら必ず追い付きますので、今は旅を続けてください。他の国の助力を得ることも必要でしょうし、魔族との戦線の維持を考えたら一刻も早く魔王の城に向かうべきです。私が一番信頼しているエリーシャはそのまま同行させますから」


と言ってくれた。

治癒魔法を使えるエリーシャをつけてくれたのはほんとに助かったし、アレクシア自身もほんとに後で合流してきてくれのは驚いた。

曰く、最初は適当に利用して見捨てるつもりだったが、気が変わったとのこと。

国の次期最高権力者がどう考えても危険なこのパーティーについてきていいのかとの問いには


「まだ次期大公というだけですし、魔王討伐した勇者のパートナーというのは箔がつきますから」


とのことだった。

ついでになぜ気が変わったのかも聞いてみたが、はぐらかすだけで教えてくれなかったが、気付かないうちに好意を持ってもらえる何かがあったらしい。


アリステイン大公国を出た後は、その隣で人間の国家では最大のガリア帝国に入った。

ただの旅の冒険者という体で入って帝都までいったのだが、そこで勇者パーティーだということが露見して、ミスティルテイン王国の2人とついでにメルドーズが捕まった。


え?前後の文章が繋がってないって?

なんでも、本来、聖剣ミスティルテインはガリア帝国の聖堂教会の所有物で、勇者召喚はガリア帝国と聖堂教会が共同で行うものだったらしい。

数十年前に聖堂教会の過激派の一派が聖剣を盗み出して設立したのがミスティルテイン教団であり、その教団が辺境で建国したのがミスティルテイン王国とのことだった。


当然のごとく、ガリア帝国とミスティテイン王国は激しい敵対関係にあるが、間にアリステイン大公国があるのと魔王出現で今のところ直接衝突はしていないとのこと。

もっともアリステイン大公国は中立ではなく、ガリア帝国の同盟国なので過去何度かガリア帝国の遠征は行われているらしい。

それでも小国のミスティルテイン王国が持っているのは、僧侶という名の神殿騎士団や王国騎士団といった脳筋武装集団のせいらしい。

なんでも子供のころからスパルタ並の脳筋教育を施された戦闘集団らしく、歩兵だけで騎士の突撃を粉砕するとか。何それ怖い。


「そういうわけですので、ユーイチ殿を勇者と認めますし、最大限の支援をさせていただきますので、魔王討伐後に聖剣を我が国に返していただけないかと」


ちなみに、聖剣の存在も、それがミスティルテインに盗まれたことも一般には知られていないらしい。

じゃあ大衆は勇者をどのように認識しているのか気になるが、帝国や教会が認めれば大衆には本当に勇者かどうかなんて些細な問題だ。と皇帝は言っていた。

異世界に来てまで大衆宣伝の事例をみることになるとは思わなかった。


とりあえず、ガリア帝国21代皇帝だという人物はどっかの王国の国王と違って、事情を話したうえで支援まで申し出てくれた。

見返りの条件も大したことじゃないので二つ返事でOKし、メルドーズは解放してもらい残りの二人は皇帝に任せると言ったら意外なことを聞いた。


「そういうことならあの剣士、ミスティルテイン王国の第一王子は有効利用させてもらおう」


皇帝が嬉しそうに言ったので、俺としても異存はないし頷いておいた。

というか、あんなのが第一王子だったのか。

ガリア帝国入ってから急に大人しくなったので変だと思っていたが、どうやらバレたら捕まる自覚はあったようである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ