2-4 大学生、魔王を倒せるのか不安になる
「あんまりグダグダ言うようだったらお前ら2人をパーティーから外す」
ミスティルテイン王国の騎士と僧侶にそう告げることで、不毛な罵り合いは終結した。
こうして俺のパーティーは6人になった。
勇者こと大学生の俺、滝川雄一。日本に帰りたい。
ミスティルテイン王国騎士団で最強(自称)の騎士、剣士リューベック。
ミスティルテイン教団の僧侶だが、格闘家にしか見えないダンカン。
ミスティルテイン王国に雇われた傭兵の魔術師メルドーズ。
アリステイン大公国第三公女で騎士のアレクシア・アリステイン。
アレクシアについてきた近衛騎士で治癒騎士のエリーシャ・エレステル。
ようやくパーティーとしてバランスがとれたんじゃなかろうか。なおも前衛に偏っている気はするが。
ちなみに、リューベックが騎士なのに「剣士」なのは剣を使うからである。
騎士は通常、騎乗しているときの槍を使う。アレクシアとエリーシャも武器は槍である。
「狼?」
「はい、近辺で主にキャラバンや行商人がエルダーウルフの群れに襲われる事案が多発しています」
さっさと先に進もうと思ったのだが、アレクシアに国内で名前を売りたいから協力してほしいとド直球に頼まれたので、協力することにした。
どのみちアリステイン大公国を通り抜けなければならないので、途中で寄り道するようなものである。
それに、RPG的にはレベル上げも必要だろう。
意味あるのかは知らないが。
今いるのはミスティルテインとの国境にほど近い、小さな街だが、50キロほどいった隣街はアリステインの商業の中心らしく、かなり大きいらしい。
「幸い、水運のおかげで影響は限定的ではありますが、陸路が事実上封鎖されている現状が続くと影響が大きくなります」
護衛をつけたところで、延々追跡されて夜襲を繰り返してくるらしく、陸路は馬車が使えない状態になっているとのこと。
不思議なことに荷車の無い集団は襲われず、襲われた馬車も中身をひっくり返されて食料の肉が持っていかれる程度で、人への被害はないらしい。
討伐隊を編成しようにも、相手は狼。森に逃げられたり、全然違うところが襲撃されたりと効果がないらしい。
「そもそもエルダーウルフって魔物なの?」
「ウルフ系の魔物とされていますが、ウルフ系自体が魔王の配下には入らず、王狼の配下で独自の生態を築いてますね」
じゃあ魔王の命令で何かしてるとかではないのか。
もしこれが魔王の命令で流通に打撃を与えることで各国の力を削ごうとしている。とかだと魔王のイメージを改めなければならないところだった。
「というか、討伐隊がダメなのに俺らでどうにかなるの?」
「それは・・・小回りをいかして山林を虱潰し・・・ですかね?」
それこそ討伐隊に山狩りさせたほうがいいんじゃないか?
そんなことよりも
「なんで狼が執拗にその都市から出る馬車や荷車ばかり狙うのかが気になるな」
話を詳しく聞いてみると、その都市に向かっている者が襲われた事例はないが、出て行く荷車や馬車は例外なく襲撃されるらしい。
都市内にある何かが運び出されるのを防いでいるのか?
「まぁ、とりあえず現地に行ってから考えるか」
そんな軽い気持ちで2日ほどかけてその都市に向かったのだが・・・
「「「「キャー、勇者様!!」」」」
「「頼むぞ!俺たちを助けてくれ!」」
「「「「「アレクシア公女殿下ー!!」」」」」
到着するなりすさまじい歓迎を受けてそのままパレードになった。
アレクシアが打合せ通りと言った感じで街の有力者達と話していたので、どうも事前に打ち合わせていたらしい。
そしてパレードではちゃっかり俺の横に陣取って腕を組んでいた。
別に悪い気はしないのだが、大衆や有力者連中に勇者のパートナーだと印象付ける戦略だろう。
思った以上にしたたかなようだ。
「この都市は私を支持してくれる最大勢力なのです。魔王討伐の前に是非とも足場を固めておきたかったのです」
小声で俺だけに聞こえるようにアレクシアが耳打ちしてきた。
「恐れ入ったよ。俺をこの街に連れてくるのが最大の目的か」
「いえ、例の狼の件も事実ですので、その解決をお願いしたいのも本当ですよ」
どっちにしても自分の権力基盤の強化になるから悪いことなしか。
まぁ、いい思いはさせてもらってるので利用されるのは別にいいけど。
「王狼が目撃されている?」
パレードが終わって警備隊との会合になったとき、アレクシアが声を大きくした。
「それは確かですか?」
なんでもバカでかい白い狼が目撃されていて、それが王狼の特徴と一致するらしい。
「けどただの白い大きい狼なんてそこらにいるんじゃないのか?」
「10m近いような狼なんて王狼以外にいませんよ」
てことはウルフ系の魔物の大ボスと戦うことになるわけですか、そうですか。
「それ、俺らで勝てるの?」
パーティーの方を振り向きながら言ったら全員目を逸らしやがった。
こいつらほんとに魔王と戦う気あんのか・・・。




