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第2話

遅くなりました。すいません。

それではどぞ!



 あれからしばらくして、突然神様が叫んだ。


「見つかったぁ!」

「うひゃあ!」


 ビビビ、ビックリした。突然叫ばないでほしい。


「ああ、ごめんごめん。結構時間かかっちゃったけど、ようやく見つけたよ、君が行く世界!」


 俺が行く世界! 何か響きがいいね!


「そうなんですか! どこに決まったんです!?」

「異世界さ!」

「はい!」

「………」

「………」

「………」

「………へ? それだけ?」

「うん」

「……どこに決まったって?」

「だから異世界さ!」

「うんそれは知ってる。というかそういう約束。…で、どこ?」

「………」

「………」


「何で黙るんだよぉおおおお!」


「わっ! 落ち着いて優君!」

「これが落ち着いていられるか! 何で黙るの!? 何、何かあんまりよくない世界だったりするの? それとももしかしなくても見つからなかったとか!? 何とか言えよぉおおおお!」


 俺は神様の胸ぐらをつかみ、ぐわんぐわんと力の限りゆすった。


「ちょ、まっ、落ち着いて! 話しできない!」


 仕方がないので、神様を解放する。


「悪かったよ。別に優君が行くところは良くない世界とかでもなく、見つからなかった訳でもなくちゃんと剣と魔法の異世界さ。ただね、名前がないんだよ」

「名前がない?」

「そ、別にこの世界だけじゃなくてね、そもそも世界に名前なんてない」

「………?」

「分からない? そうだね……例えば、君がすんでいたのは地球だよね?」

「はい」

「じゃあ君が存在していた世界の名は?」


 世界の名…?


「そんなの…知らない。でも、神様は知ってるんじゃないの?」

「知らないよ。というか世界に名前なんて付けてないんだよ。だって無数にあるんだよ? そんなの一々付けてられないよ。だから君が行く世界の名前はない」

「そ、そうなんですか?」

「うん。だって数で言うと…君たちで言う無料対数よりも遥かに多い数になっちゃうよ。めんどくさくてつけてない」


 そういいながら笑う神様。確かに、それなら仕方がないかも……というか、無料対数よりも遥かに多い数って……何? 無料対数ですら想像できないのに、それ以上とか全くわからない。


「でもね、君の行く星の名前なら分かるよ!」

「!! 何て名前なんですか!?」

「アルタナ」

「アルタナ?」

「そう、アルタナ。それが君が今から行く星の名前。いや~探すのに結構疲れたよ。何せ転生とはいってもやることはその場に突然人が発生(・・)するようなものだからね。設定を作るのに最適な環境を見つけるのに苦労したよ」


 何だか思ったよりも大変だったようだ。


「……す、すいません」

「ううん! 全然オッケイだよ! お? 適正でたの? 見せて見せて!」


 何だか子供のようにはしゃぐ神様に、苦笑しつつ渡す。

 神様が「ふむふむ…」といいながら読み進めていく。


 な、何だかドキドキする。これから自分の適性を聞かされると思うとワクワクが止まれない。俺にはどんな適性があるのかな。魔法とか全属性だったりして! 時を止めれたり重力を操れたり空を飛べたり……もしかしたらその世界には存在しないユニークな魔法とかだったりして! それで無双とかしちゃったりして! ああ楽しみだなぁ~!


「優君!」

「はい!」

「君の適性が分かったよ!」

「はい!」


 きた!


「君の適性は………デデン!」


 ごくり。


「水属性魔法と召喚魔法の2種類でした~ドンドンパフパフ!」

「………へ?」


 今、何て?


「あれ? 聞こえなかったの? もう、仕方ないなぁ~優君は。君の適性は水属性魔法と召喚魔法だよ!」

「……それだけ?」

「それだけって…、いい優君。魔法なんてかけらもないような世界に住んでいた君が、二つも魔法の属性があるってかなり凄いことなんだよ? ちょっと前に来た人なんて、一つも適性なくて泣き散らしてたんだからね!」


 そ、そうなのか。俺、すごい方なのか……。

 2属性……。水と召喚……。さっきまでの自分が恥ずかしい!


「も~、反応薄いなぁ~。………あ、もしかしなくても色々期待しちゃった!? 時間止めれたり重力操れたり、全属性があるかもとか思っちゃった!? いや~ごめんね! 先に言っておけばよかったね! そういう結果になることはあり得ない(・・・・・)って! まぁでも良かったんじゃない? だって召喚まブベラッ!」


 ななな、何でそんなに予想的中してるんだよこの神様は!


「い、痛いじゃないか優君。いくら図星だからって殴らなくても……」

「ううううるさい! 図星じゃないもん! 図星じゃないもん!」

「あ、大事なことなので2回言いました? ブベラッ!」

「そ、そんなんじゃないし~、大事なことなんかじゃないし~! というか、早くチートやらを頂戴よ!」


 く、くそう!


「あいたたた。まぁまぁそんなに慌てなさんな。え~……と、優君は水と召喚魔法だよね。………取り敢えず召喚魔法には莫大な魔力がいるから、取り敢えず大抵のものが契約、そして召喚できるようにするために魔力量は多くしてあげる」


 神様がそう言うと、神様の手から何か白いもやもやしたものが流れて来て、それが俺の胸の中にスゥ~と入ってきた。


「分かった! ありがとう!」

「うん、どういたしまして。でも正直それだけじゃあな…召喚魔法で、上げた魔力量がチートの役割をそんなにしてないんだよね。どうしたものか………優君。どんなチートが欲しい?」

「え? そんなに強いのはあげられないってさっき言ってたのに……2個とかいいの?」

「うん。召喚魔法はね、バカみたいに魔力を使うんだよ。契約した魔物・精霊とかを君の魔力でパスをつないで、そうして契約した魔物や精霊とかは魔力体になって君の体内に行く。あ、体内って言っても何か口から入ったりとかじゃないから安心してね? 僕も上手いこと説明できないんだけど、魂的なものになって君の魂に寄り添ってる…らしい。食事とかは契約者の魔力があればいいみたい」

「さっき貰ったチートみたいな感じだと思えばオケ?」

「あ、そうそうまさしくそんな感じ! で、そのさっきあげた魔力は確かに多いんだけど、召喚士だと多いのは多いけど結構すぐになくなるんだよね。だからチートとしては少しばかり役不足。だから君が欲しいチートがあれば言ってみて。ダメならダメっていうし」

「わ、分かりました」


 正直、いきなりそんなことを言われても思いつかない。いや、思いつくのは思いつくんだけど、強すぎなのは無理って聞いているから、例えばさっき考えていた全属性とかはきっと無理なんだろう。時止めとか重力操作とかもってのほか。


「属性をもう一つ増やすとかできます?」

「できないこともないけど、君がもともと持っている適性じゃないからそんなに使えないと思う。例えば風魔法ならそよ風程度」

「え…その程度何ですか?」

「うん。いや、あげようと思ったらあげれるけど、何より君の体が持たないと思う。人にないものを無理やり持たせるってことだから、拒絶反応とかやっぱりあるんだよね」


 …何だかやばそうだ。


「…やめときます」

「賢明な判断だね」


 とは言ったものの、どうするか。

 俺がうんうん悩んでいると、神様が口を開いた。


「別に、無理してもらわなくてもいいんだよ? ま、君がいいならだけど」

「う~ん……。どうせならもらっておきたいので、もう少し考えてみます」

「分かった」


 さて、新しい属性はちょっと無理そう。ということは既存の属性で何とかするしかない。俺の属性は水属性魔法と召喚魔法。召喚魔法の対策として魔力量が増えた。…この際魔力量をもう少し増やしてもらってもいいかもしれないけど、どうせならもう一つの方、水属性魔法に何らかのチートが欲しい。

 でも、何があるだろう。水と言えば……何がある? 氷とか? あと水蒸気? ………状態変化しか思いつかない。

 神様に聞いてみるか。


「神様、水の状態変化ができるようにしてもらうっていうのは、あり?」

「お、それはいい考えなんじゃないかな。うん、そこまで強力な物じゃないと思うし……それでいこうか。じゃあ君は水の状態変化を自由に操れるようにしよう。それでいいかい?」


 できた。これが実際にどんな風に役立つか分からないけど……これでいいか。


「はい。これで大丈夫です」

「分かった」


 神様がそう言うと、またしても神様の手から白いもやもやとした何かが出てきて、俺の胸に吸い込まれて消えた。


「はい、完了!」

「ありがとうございました!」

「どういたしまして。それじゃあ、君の設定を話すよ」

「設定?」

「そう、設定。さっきも言ったけど、君は突然その世界に出現するような形で転生する。だから君が転生しても世界に問題がないようにする必要がある。そこで、君には魔物に襲われ全滅した村の生き残り…という形で転生してもらう。神様の力で君がそこに住んでいたとして、君には一応の母親と父親がいるし、その村で成長したことにする。たださっき言ったけど、君が今から行く村は魔物に襲われ全滅したところ。いきなり人の死体を見ることになってしまうけど、そこは許してほしい」


 いきなり人の死体…。今まで見たことないけど、転生させてくれる以上仕方がない。ここでわがままを言うのは筋違いだろう。


「はい。それは大丈夫です」

「良かった。じゃあそろそろ転生しようか。君が転生する先の村は小さな村【ハートヴィレッジ】………てまぁここで説明しても全部覚えられないよね。君の頭に設定をインプットするよ。ついでにオーバー過ぎる記憶も消そうか。あ、優君の名前はそのままユウでいいよね?」

「はい。大丈夫です」

「分かった。あと、今から君が行く世界は貴族にしか姓名がないんだ。だから風音の名を名乗りたければ、貴族になることを進めるよ」


 それじゃあ失礼、そう言って神様が俺の頭の上に手を置いた。

 そして程なくして神様の手が輝きだす。

 何だか、頭がぼ~っとしてきた。気が遠くなる。


「目を覚ましたら、そこはもう異世界だから。目が覚めるのは森になるけど慌てないで。それじゃあ、お休み」


 最後に見た神様の顔は、まるで子供を寝かしつける母親のそれのように慈愛に満ちているように見えた。




ありがとうございました!

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