Nの話
N。
「初めての恋人」というものはとかく厄介なものである。
あれは全力で自転車を立ち漕ぎをした日から数日後のことである。
「M、なんでまだ付き合ってるの?」
そう言いたくなる人もいるかもしれないし、いないかもしれないが……。
その日は他校生の女の子たち二人を含めて七人ほどで遊んでいた。
楽しい時間は過ぎるのも早い。気づけばあっという間に辺りは暗くなっていた。
さあ解散! という時にNは言った。
「M、俺彼女(Aちゃん)を送っていくから!」
――ちょっとまて。付き合っている彼女はMだ。……にもかかわらず、目の前で別の女の子を送っていくとか言っちゃいますか。
AちゃんもNの自転車の後ろに堂々と乗りました。もちろん腕はNの腰にまわされているわけで。
その姿を見たMは流石に呆然としました。
そんなMを見た友人たちは、空気を読んでNに言います。
「ちょ、N! お前の彼女はMだろ? 送ってやらないのかよ?」
ところがNは「Mは大通り通っていけば明るいし安全だから!」と笑顔で言い放ちました。
これにはさすがのMも半泣きです。
今ならば自転車を蹴り倒し「あばよ!」くらい言ってやれるのですが、当時は所詮女子高生! 静かに傷つき涙目になるくらいしかできません。
それをみたS(男子)がNに「もう暗いし心配だからMは俺が送るわ。それでいいだろう?」と言ってくれました。
間違いなくキュンとくるセリフです。
しかし、次に放たれたNの言葉ですべては台無しになりました。
「それはダメだよ。 俺 が 嫉 妬 す る か ら」
何様ですか、Nは。
続けてNは言いました。
「俺は浮気はするけど、Mはだめ。俺は嫉妬するけど、お前はだめ!」
そんな某ジャ○アニズム全開の言葉を残し、NはAちゃんと走り去りました。
残った全員から「あいつと別れたほうがいいよ……」と心配されたのは言うまでもありません。
しかし、高校生だったMは一年半もぐだぐだとお付き合いを続けたのでした。
その時間が黒歴史です。
気づきましたか?
N……「俺は浮気するけど――」と言い放っています。
宣言通りこのときには浮気をしていた、と数か月後に気づきます。
人間の欲?は怖いですね。
鈍いMにもびっくりです。