表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇妙な体験  作者: 谷口由紀
18/20

シンバルを鳴らす市松人形 ※

※実際の階や数字はぼかしてあります

今現在の職場の話です。


谷口、現在介護福祉士としてとある病院で働いております。


おかげさまで、()()()()体験がそこそこ溜まってまいりましたので、久しぶりに更新してみました。


さて、うちの病棟、少し違和感のある病室がいくつかありまして、今回はその一つのお話です。


残念ながら人の命に関わっている内容なので、苦手な方はここで止めていただくのがいいと思います。







さて、仮にとある階に六号室という個室があるのですが、その病室は他の個室と比較しても「急変」が多いんです。

あと、お見舞いに来る赤ちゃんは、もれなく親があやせないレベルで号泣します。

勘の鋭い患者様は、よく「怖いのいるね……」と言って、枕元に厄除けのお守りを買ってきてもらっていたりします。


そんなお部屋に、去年の春ごろ入られた女性の患者様がいました。

個室希望の患者様で、状態はなんの介助も必要ないくらいの方でした。



入院されて数日目から、夜を怖がる言葉を口にするようになりました。


「夜になると寝かしてもらえないの」


と、毎朝辛そうにしていました。

夜寝付けない場合には、担当看護師に伝えて眠剤を出すことができると伝えると、その日は「試してみるね」と笑ってくれました。


でも、翌朝また「二時くらいになると寝かしてもらえないの」と女性は話します。


私は「眠れない」ではなく「寝かしてもらえない」という言葉が気になって、患者様に尋ねました。


最初は、話すのをためらっていた様子でしたが、一緒に眠る方法を見つけよう! と話すと理由を教えてくれました。


「夜中の二時くらいにね、市松人形が椅子に座るの。小さなシンバルを両手で持って、ちーん、ちーん……って鳴らすから眠れなくて」


その説明を聞いたとき、患者様用の椅子に視線を送りましたが、そこには何も乗っていませんでした。


そして、その音が、私にはとてもシンバルだと思えなかったんです。



それ、仏具なんじゃないかなって。



患者様は、また説明を続けてくれました。


「市松人形の歯がね、犬が怒るみたいにむき出しでね、ちょっと怖いの」と。


夜勤の日、私は患者様と約束をして、二時前からお部屋に居させてもらいました。

二時が近づくにつれ、患者様はそわそわと落ち着かない様子だったので、私も患者様のベッドに腰かけさせていただいて雑談などをしていました。



二時になって、患者様の目が、入り口から椅子へと動きました。


「……ほら、来た」


目線が、椅子で止まりました。

次の瞬間、患者様は耳を抑えて「ほら! 鳴ってる! 鳴らしてるよ! 毎晩まいばんちーん、ちーん……って!」目線がずっと椅子から動いていないことで、これが病気や薬の副作用からくる「せん妄」なのか、事実なのかは調べられませんでした。



ただ、私には何も見えなかったし、何の音もしませんでした。



患者様の様子を担当看護師に伝え、不穏時のお薬が出されてから、その患者様は眠られました。


それでも、毎晩の不眠の訴えで、状況がどんどん悪くなっているのがわかりました。

そして、それが原因かは究明できませんでしたが、その患者様は亡くなられました。


私が休みの日に急変して亡くなったので、状況はわかりません。

介護士なので、必要のないカルテの閲覧も禁じられています。



ただ、あの部屋は、勘の鋭い患者様には勧めたくありません。

それでも、個室希望の患者様には、何もないことを願っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ