百物語 ※
※学生時代の思い出です、が……
あれは17歳の夏でした。
「夏」といったら「海」とか「花火」などというリア充的なものでなく、「怪談」一択となるのが我がフレンズの良いところでしょうか。
通っていた高校は定時制もあるせいか、当時は夜遅くまで教師が職員室におりました。私は普通科なので、基本的には帰宅せねばならないのでしょうが、そこはこう、夏の夜の夢……ということでお許しください。
さて、色々アウトな部分をぼかしつつ進めていくと、当時わが校には部活動専用のクラブハウスという建物がありました。そこは文化部専用で、五~六種類の部室が入っていました。
最初は単に「本当にあった怖い話」系の本を音読しては、突っ込みをいれたり怖がったりするだけのものでした。しかし仲間の誰かの発した何気ない一言が、我々を「百物語」という選択に導いたのです。
「そういえばこの本、百話以上あるねー」
「百物語って、百話終わるとなんかあるんだよね!」
「体験談語るなら、この本を音読でもよくね?」
――そして手元の本に集まる視線。
好奇心はノンストップでした。誰一人として「やめよう」とは言いませんでした。
むしろ「蝋燭危ないから、懐中電灯で代理にしよう」などと簡易バージョンの提案をするものも。
その夜から始まりました。先生に叱られないギリギリの時間まで、数日にわけての百物語が!
……そもそも百物語とは、新月の夜に行い、部屋数はいくつで蝋燭はどこに、衣装は……など、ちゃんとした作法もあるのだが、そこは高校生の浅知恵。自分たちがそれっぽく楽しめたらオールオッケーなのです。
そもそも百話を数日に分けてる時点で根本的にアウトなのかもしれませんが。
話を戻し、何日目かの夜。とうとう100話目の音読が終わったその時の事でした。
沈黙の後……。
「うわぁ!」
「今の音、何?」
「カエルみたいな声したよね」
「アヒルじゃない?」
皆が突然パニックをおこしました。
そして我先にと帰り支度をし、クラブハウスを出ていきます。怖がっている姿を見ながら、部室の鍵を閉めたりしていたものの、その時、実は私は何も聞こえなかったのです。
むしろ同時に驚く姿のほうが「お前ら大丈夫か?」的な怖さがありました。
後日聞いた話によると、読み終わって懐中電灯を消してすぐ「ぐぇ」だか「げぇ」という短い音がしたのだそうです。
私以外の全員が聞いた音の正体は、何だったのでしょうか。
今となっては調べることもできないけれど、ああいう現象は皆仲良く起きてくれないとツマラナイものだな、としみじみ思いました。
カエルとアヒル。どっちも可愛い生き物だと思うのだけれど、鳴き声(?)でパニックするほどのもの……だったのかな?
百物語の簡易版。皆さまももし試すとしたなら、その時はアヒルの声が聞こえるかもしれません。