表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある意味怖い話  作者: 谷口由紀
16/17

百物語 ※

 ※学生時代の思い出です、が……


 あれは17歳の夏でした。

 「夏」といったら「海」とか「花火」などというリア充的なものでなく、「怪談」一択となるのが我がフレンズの良いところでしょうか。

 

 通っていた高校は定時制もあるせいか、当時は夜遅くまで教師が職員室におりました。私は普通科なので、基本的には帰宅せねばならないのでしょうが、そこはこう、夏の夜の夢……ということでお許しください。


 さて、色々アウトな部分をぼかしつつ進めていくと、当時わが校には部活動専用のクラブハウスという建物がありました。そこは文化部専用で、五~六種類の部室が入っていました。

 最初は単に「本当にあった怖い話」系の本を音読しては、突っ込みをいれたり怖がったりするだけのものでした。しかし仲間の誰かの発した何気ない一言が、我々を「百物語」という選択に導いたのです。


「そういえばこの本、百話以上あるねー」

「百物語って、百話終わるとなんかあるんだよね!」

「体験談語るなら、この本を音読でもよくね?」


 ――そして手元の本に集まる視線。


 好奇心はノンストップでした。誰一人として「やめよう」とは言いませんでした。

 むしろ「蝋燭危ないから、懐中電灯で代理にしよう」などと簡易バージョンの提案をするものも。


 その夜から始まりました。先生に叱られないギリギリの時間まで、数日にわけての百物語が!



 ……そもそも百物語とは、新月の夜に行い、部屋数はいくつで蝋燭はどこに、衣装は……など、ちゃんとした作法もあるのだが、そこは高校生の浅知恵。自分たちがそれっぽく楽しめたらオールオッケーなのです。


 そもそも百話を数日に分けてる時点で根本的にアウトなのかもしれませんが。



 話を戻し、何日目かの夜。とうとう100話目の音読が終わったその時の事でした。

 沈黙の後……。


「うわぁ!」

「今の音、何?」

「カエルみたいな声したよね」

「アヒルじゃない?」


 皆が突然パニックをおこしました。

 そして我先にと帰り支度をし、クラブハウスを出ていきます。怖がっている姿を見ながら、部室の鍵を閉めたりしていたものの、その時、実は私は何も聞こえなかったのです。

 むしろ同時に驚く姿のほうが「お前ら大丈夫か?」的な怖さがありました。


 後日聞いた話によると、読み終わって懐中電灯を消してすぐ「ぐぇ」だか「げぇ」という短い音がしたのだそうです。


 私以外の全員が聞いた音の正体は、何だったのでしょうか。

 今となっては調べることもできないけれど、ああいう現象は皆仲良く起きてくれないとツマラナイものだな、としみじみ思いました。


 カエルとアヒル。どっちも可愛い生き物だと思うのだけれど、鳴き声(?)でパニックするほどのもの……だったのかな?


 百物語の簡易版。皆さまももし試すとしたなら、その時はアヒルの声が聞こえるかもしれません。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ