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ある意味怖い話  作者: 谷口由紀
14/17

記憶の中の静寂 ※

 ※ふと記憶の扉が開くことってありますよね。



 あれはまだ中学生だった頃の話です。


 季節は夏。

 当時私の部屋にエアコンなどという豪華な家電は存在せず、暑さのあまり幾度も浅い眠りを繰り返していた。

 その夜は、ベッド脇にあるブラインドの隙間から見えている月が、やたらと綺麗だったのを覚えている。

 

 暑さに耐え切れず目が覚めた時、深夜だからなのか、やたらと静かだと感じた。


 大きな通りに並んでいた当時の実家は、夜でも車の音が止むことはない。しかしその時は静寂がもたらすあのキィンという独特で耳障りな音が頭の奥で響いていた。


 ブラインドのある出窓から下を覗くと、一階の庭がみえる。植木鉢を置いて水をかけられる仕様になっているのか、出窓には下に向かって数カ所穴があいているのだ――が、なぜその日覗いたかは思い出せない。そもそも普段夜中に庭など覗かないのに。それなのに、自然にスッと下をのぞき込んだ。



 四人が十字に並んでいる、もしくは円を書くように並んでいたのかもしれない。

 ただ一つわかるのは、深夜に、月明かりに照らされながら、四人の誰かが、並んで俯きながら一か所の地面を指さしている。それだけだった。



 ……自分で認めるのはアレだけれど、私は割とアホの子だ。


 その不可解な四人を見て「家族だ! 家族みんなで何かしてる!」と楽しそうとさえ感じていた。


 我が家は四人家族だというのに。



 そして今思うと、月明かりに照らされているわりにその方々は「やたら黒かった」。

 某「見た目は子供!――」の有名漫画に出てくる悪い人でさえ白目は白いのに、全員真っ黒。

 黒色の全身タイツ愛好家集団だったらどうしようとも思うけれど、深夜の我が家の庭でオフ会とか勘弁していただきたいので、そのセンはさすがに無しでお願いします。



 さて、話を戻すと、私はその不自然に黒い人たちの元へ行こうととび起きた。

 そしてドアが開いている兄の部屋と、両親の寝室をちらりと覗き、誰も居ないことを確認すると「やっぱりね!」などと確信しながら階段をおりたのだった。


 庭にいるのは家族であると、疑いもせずに。


 玄関をあけるとやたら星空が綺麗で、まるで山頂で見上げる夜空のように星が近くに思えた。周りは何一つ音もなく、そのすべてが神秘的だと感動すらしていた……。



 そして庭に出ようと階段を素足で下りはじめた時、ようやく違和感に気付きはじめた胸が、ざわざわと不快にざわつき始めたのだ。


 綺麗なのに、怖い。

 あと二歩、石段をおりたら庭が見えるのに。


 その時、何故か音を立ててはいけない気がして、ゆっくりと戻り、息を止めながら静かに玄関を閉めた。


 家族の靴は全員分が玄関にあった。そして私はつい先ほど「鍵をあけて」玄関をでた事に気づいたのだ。


 家族であるならば、深夜に靴を履かずに庭に出て、鍵をかけるなんてことをするはずもない。


 家に入ってからも音を立てる勇気はなく、そのままベッドに潜りこんだ。

 暑さも忘れて。

 もちろん、ブラインドから庭を覗くことはできないままに。



 翌朝家族にこのことを話したら「嫌なを夢見たね!」と笑われて終了だった。


 けれど、なぜかベッドには土がついており、足の裏も土でザラザラと汚れていた。


 四人の誰かが指さしていた場所は、調べる勇気もなく、その二年後に引っ越しをしたため、謎のままである。




 私はあの日、誰を、何を見たのか。

 それとも、夢だったのかは、今もわかりません。



 思い出は、突然ふっと思い出しますよね。

 書きながら、ほんのすこしだけ懐かしかったです。 

※ちなみにその家は、現在叔母が一人で住んでいます。地面掘れるかも!!と思ったけれど、事情により絶縁状態の為……。

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