表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある意味怖い話  作者: 谷口由紀
11/17

見せられても困る。

※見せられても困る、という話です。




 谷口は介護福祉士です。

 特別養護老人ホームや老人保健施設で働いてました……が、五回目のぎっくり腰をきっかけに仕事を辞めました。

 ぎっくり腰の痛みは「びしっ!!」と腰に(いかづち)をくらった感じ、だと私は思います。



 さてさて、普通の女性は殿方の下半身を見せられたらどんな反応をするでしょう。

 私は仕事上、ほぼ無心で排泄介助に携わっていたせいか正直何も思わないのです。


 あれは私が仕事から帰る途中、バスを待っていた時のことです。

 バスも最終近く、バス停以外あまり明かりもないような田舎でした。月をぼんやりと眺めながらバスを待っていると、いつの間にか隣に人がいるのです。

 バス停には四人掛けの椅子があったので、私が一番右端、その人は右から三番目に腰をかけました。

 スーツ姿の男性が、うつむき加減で座っています。そして肩を上下にさせ呼吸が少しづつ荒くなっていくのです。


 救急救命を習ったりもしているので「何かあったのか?」と隣の男性に目をやりました。

 


 セ ル フ バ ー ニ ン グ 。



 つまり自家発電中でした。

 そして何より谷口が気になったのはスーツの股間部分が、丸く切り取られていたのです!


 そんなところを切ってしまったら、オールウェイズ・ポロリです!

 そもそも何故切った!

 排泄するには効率的かもしれないが、羞恥心への配慮がゼロ!

 ――というか、スタンディング・オベーションしていらっしゃる事を考えたらむしろマイナスなわけです。


(どーしよっかなー)

 谷口は悩みました。

 彼はいったい何がしたいのか、何を望んでいるのか。


 仕事の後だったせいか、介護的な考えが頭をよぎります。

「彼のQOL(クオリティオブライフ)、生活の質の向上とはなんぞや」と。

 彼が今下半身を奮い立たせている、その行動には理由があるのです。何かを求めているからこその行動なのです。

 そしてそれを求めているであろう相手は、深夜のバス停にいる人間が二人しかいないという事実を考えたら、必然的に「私」であることは間違いない。

 私に何を求めているのだろう、彼は……。

 それを知るためには観察が必要になるのです。


 私は男性の顔を見ました。およそ20代前半のやんちゃざかり……というか、色々なことに挑戦したいお年頃の男性、かもしれません。

 そして露出しているそれは、スタンダップ状態ではあるが形状は日本人の平均の幅からはずれておらず、可もなく不可もない。

 つまり「悲鳴をあげる」選択をするほどでもなければ「賞賛に値する」わけでもない。


 どういう行動を選択するのが、この場において正しいのか……そう考えながらやってしまった行動は……


 男性の顔を見る。

 下半身を見る。

 顔を見る。

 下半身を――を幾度となく「真顔で」繰り返してしまいました。



 そして分かったのです、彼は、これは望んでいなかった……と。


 盛り上がっていた一部分が、たった一人の観客を前に頑張っていてくれたというのに……ノリの悪い観客のせいでゲリラライブは失敗に終わったのです。

 しゅるるるる……という効果音が似合いそうなほど、彼も、彼の息子さんも項垂れていきました。


 せめて記念撮影を……と思い携帯のカメラを向けたら、彼は急いで闇の中へと消えていきました。

 カメラ、間に合いませんでした……。



 今度下半身露出系メンにお会いしたら、とりあえず指さして満面の笑みで見てあげようと思います。

 なんなら手ぇ叩きながら応援します。



 しかし、深夜のバス停でいきなりハアハアしだすのは、緊急事態かとびっくりするのでやめていただきたいものです。 

露出計はN市N区多いそうです。

警察の方から教えていただきました。

ちなみに痴漢が多いのもN区とN区。


ってNばっか!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ