表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある意味怖い話  作者: 谷口由紀
10/17

グルグルぐるぐる…… ※

※狐に化かされたのかな?




 車の免許取得したての頃って、やたらドライブしたくなりますよね。

 あれは免許を取って半年くらいのころだった。


 友人T(※ヒツウチ、の時のT)は私をよく足として使ったものです。

 そんな彼女と遊ぶたび

「どっかドライブ連れてって」

 とか

「○○行こう!」

 と言われました。


 その日は夕方からTに呼ばれ、気分のままにドライブをしていた。

 そんな時、突然Tが言った。

「なんか呼ばれてる気がするから、H坂トンネル行こう!」と。

 ちなみに「H坂トンネル」とは、A知県の肝試しどころ……というか、ミステリースポットと呼ばれる場所の一つである。

 旧道と新道があり、彼女が行きたがったのは山道を登った先にある旧H坂トンネル。つまり正真正銘の、そういう場所だった。


 彼女は時々「呼ばれた気がする」と言うのだが、そのたび不思議な出来事がついてくるから苦手だ。 

 それはともかく、その日の行先は「旧H坂トンネル」となったため、車を走らせた。


 その日は小雨が降っていたので、かなり安全運転を心がけた。


 彼女がその「旧H坂トンネル」に呼ばれた「気がした」のは二回目で、一度目は昼間だった。その時は車にはねられたばかりだろう黒猫が、山道の真ん中で温かいまま息絶えていた。

 その猫を道路から(くさむら)に移動させた途端「もう用事終わったみたいだから帰ろ」とさらりと言われたのが印象に残っている。


 その日と違い、今回は夜だ。

 時間も九時近かった。

 Tの家に泊めてもらうことになっていたので、多少遅くても大丈夫ではあるのだが、夜のそういうスポットは好きではない。

 というか、そもそもそういうスポットには近寄りたくないし関わりたくもないのだが、私の友人たちはそういう場所に縁がある人間が多い。


「ねえT、今回も動物に呼ばれてるのかな?」

「んー、まだわかんない。行けばわかるよ」

 行ってみてアカン奴だったらどうすんだ! ……と二人とも気づかなかったのは若さゆえです。


 他愛ない話をしているうちに、旧H坂トンネルに入る山道の入り口にさしかかった。

 そこへ行くには、小さなトンネル(?)をくぐってから山道が始まるのだが、そこをくぐった瞬間景色が一変した。


 霧がでていたのだ。

 くぐるまでは確かに視界はクリアだった。

 その小さなトンネルをこえただけで、突然霧がでるものなのだろうか……そう思いTに聞いた。

「山は天気が変わりやすいっていうけど、いきなり霧だねー。 数メートル先までしか見えないんだけど、上行くの?」

「・・・うん。呼ばれてる気がするんだよねー」

 Tは俺様気質なので、この状態で帰ると不機嫌になる。

 突然の霧とTの機嫌を天秤にかけたが、霧は怖くないし面倒じゃないからTに従うことにした。


 くるくると山道を登り始めた。

 昼間なら何度か通った道なので、恐怖は感じなかった。

 

 くるくる、くるくる……

 20分以上経って気が付いた。

 車の中が異様に冷たいのだ。

 小雨が降っていたとはいえ、その時の季節は夏。エアコンの必要ない温度ではあったが、寒いわけがない。

 そして何より、普段ならば20分も走らせたら旧H坂トンネルを通り越し、反対側のふもとに降りている程度の時間が過ぎている。


 違和感は感じたが、霧もあり普段より数倍緩やかに上っているせいだろう……と思うことにした。

 たとえ普段とさほど変わらないスピードだったとしても。


 そしてまたくるくると登り続けた。

 ――隣のTが無言で彼女の膝を見つめている。


 よくある怖い話に、車の中で足を掴まれて……かと思ったが、彼女の足の先には特に何もなかった。

 さすがにこのまま上り続けるのはどうかと思い速度を落としたその時、Tが大声で歌い出した。

 Tはあまり歌が上手くない、と本人が言うだけあって彼女は滅多に歌わない。

 その彼女がこんな風に歌いだす時がどんな時なのかは知っていた。


 怖 い の だ。


 山道ははっきり言って細い。

 しかもガードレールがあるからUターンも出来ない。

 しかし時々山の脇道へと入るためのスペースがあった。

「T、次入れそうな場所があったらUターンして戻ろう! 呼ばれてても戻るからね!」


 Tは返事をすることなく、前を向いて大声で歌っていた。

 

 細い道を使って、何度切り返しをしたか……ようやく向きを変えると、気持ちを落ち着けて安全運転で戻り始めた。

 速度は登ってきた時よりはるかに遅かった。


 しかし、ものの五分もしないうちに入り口のトンネルをくぐり街道へと戻ってこられたことには少々驚いた。

 そしてトンネルをくぐった先は、行きと変わらず霧など全くなかったのだ。


 夕食を食べていなかった私たちは、休憩がてらファミレスにはいった。

 そこで彼女から色々教えてもらったが、突然の霧を見た瞬間「これダメなヤツ!」と感じたらしい。しかし怖がっていると思われるのも嫌だったし、下手に怖がって運転手を動揺させるのはまずいとも思った、と。


 そして山道だが……途中から景色がループしている気がしたが、運転手は全く気付いていないっぽいので黙っていることに決めたとのこと。

 しかし何十分も登って全く気づかないM(私)に対しても「どんだけ鈍感だ! そもそもこいつは本物のMか?」と怖くなったらしく、気分転換に外の景色を見た。……すると、ガードレールの下にスーツ姿の小さなオジサンが集団でいたのだとか。

 そこでパニックになり運転席のMを見たら、Mの後部座席に女性が体操座りをしていた……だから外もMも見れずに膝を眺めていたという。

 

 そしてまた始まるくるくるループに限界を感じ、歌で誤魔化した……という流れだった。


 ファミレスでネタバレされても、どうしたら良いか全くわかりませんでしたが、後部座席の彼女はトンネルをくぐったら消えていたそうなので多分大丈夫です。


 

 私の友達は、いつもネタばらしが遅いから怖いのです。




小さいオジサマってよく聞くけれど、私は一度もあったことが無いのです。

友人いわく「みんな同じ顔をしているよ」とのこと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ