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7話 チュートリアル終了

僕が獣人の体になってもう1ヶ月が経とうとしている。この間、ソーマさんに僕は狐の獣人の身体の使い方と妖術の使い方を徹底的にに叩き込まれた。


まずは、爪の使い方。狐獣人の爪は10cmほど伸短縮自在だ。それだけでなく形や硬さも変えられる。先端だけでなく全体を鋼のナイフのようにすることも可能なのだ。ここはストーンサークルから少し離れた草原で、目の前にはダークウルフが唸り声をあげて今にも襲いかかってこようとしている。


「先制しろ!切り裂け!」

「はい!爪撃!」


飛びかかろうとしていたダークウルフにこちらから飛びかかりすれ違いざまに爪で切り裂く。ズタズタに切りさかれたダークウルフの身体が地面に落ちる。

ふっ、遅いぜ。うわっ!危ない!ダークバッドが上から狙って来ていたよ。


「何気を抜いている、次!突け!」

「はい、貫爪!」


今度は爪先を細く鋭くして相手の攻撃を迎え撃つ。ダークバッドは回避能力が高く、こちらからの攻撃はまず当たらない。しかし、血を吸うため必ず接近してくるのだ。そこに合わせてカウンター的に突き刺す!うん、うまくいった!


そのとき、足元に違和感を感じて大きくバックスステップを踏む。あぶね!ダークスライムがいつの間にか近寄ってたよ。僕を捕食しようとして空振りに終わったダークスライムは崩れた体型をまとめるため一時的に身体を丸くする。今ならば!


「ハードテイル!」


狐の獣人の尻尾はふさふさしていて結構長い。コレを硬くして叩きつける技があるのだ。僕はジャンプして身体を空中で横に倒しながら回転させ、ダークスライムに尻尾を叩きつけた。その衝撃を吸収しきれなかったダークスライムは爆散した。


「爪と尻尾は慣れたようだな。」

「はい、おかげさまで。」


本当に情け容赦なくモンスターをけしかけてくれるんだから。


「なんか言ったか?」

「ナンニモイッテマセン。」

「そうか、次はこいつだ‼︎」

「なにぅあぅっ!」


ソーシさんが無造作に僕に投げて来た玉のようなものを反射的に受け止めたら、巻きつかれました。


「ダークスネークのかなり大きいやつだ。その身体では力不足で逃げられん。どうする?」


辛うじて首の締めは回避したがすごいパワー!身体がミシミシ言い始めた。今は新月を少し過ぎたあたりで、獣人としての身体は耳と尻尾と手足の先くらいである。最も獣に近い状態と今とでは筋力が3倍くらい違う。今はヒューマンより筋力が弱い状態だ。どうするもなにもこうするしかないでしょう!


「ガァァァァァァァッ!」

「シャァァァァァァッ!」


僕は獣に最も近い獣人の体型になり、力尽くで蛇の胴を握り引き剥がす!

ソーシさんは常に最も獣化が進んだ状態を常にキープしている。ソーシさんが扱う抜刀術には体の変化は悪い影響を与えるからだそうだ。そう、獣化はコントロールできるのだ。


腕に噛み付いてきたダークスネークの頭にアイアンクローをお見舞いしてやった。こっちも牙が刺さってて痛いけど爪を深く食い込ませた。ダークスネークは危険を感じて逃げようとしたがもう遅い!獣人の筋力はやばいんだからな!頭を握りつぶしてやったぜ。


「獣化の制御も問題なしか。あとは狐火か。」

「はい、それがなかなかうまくいかなくて。」


爪と尻尾と獣化の制御。ここまではなんとかなった。あとは狐の獣人のみが扱う妖術の狐火に苦労している。


「出すことまでできたんですけどね。」

「某のように魅せて、魂を一瞬でも抜ければ実戦でかなり役に立つ。」

「アレを戦いの最中にやられると相手はきついですからね、僕も速く覚えたいですよ。」

「某も妖術は得意ではない。狐以外にも妖術を扱う者達がいる。機会があればその者達に学びなさい。某がアユムに教授できるのはここまでだ。」


どうやらソーシさんとお別れのようだ。ソーシさんの身体が透けて来た。


「最後に、一太刀だけ伝えよう。」


そう言ってソーシさんは半身の構えを取り左腰に右手をあてがった。腰にある太刀には触れていない。


そして……


「死ぬなよ。」


そう言って今にも消えようとしているソーシさんに僕はお礼を伝えようとした。


「あ……り……」


しかし、僕がお礼を言い切る前にソーシさんは消えてしまった。


本当に照れ屋さんだ、ソーシさん。ソーシさん、照れ隠しにしてはやり過ぎ……。


何故なら、僕は真っ二つにされたのだから。




・・・・・side ソーシ・・・・・



アユムと居た草原から一転、景色が変わる。そこはいつも某が修練のために訪れている山奥の滝壺の近く。チュートリアル・ノーアに向かう前と、全く変わらない。説明では時間も経過しないとのことであったが、おそらくそうなのであろう。


「ソーシ様、お疲れ様でした。」


かけられた声に振り向けば、銀髪の女性がそこにいた。この世界の管理者、つまりは神と呼ぶべき存在がそこにいた。


「フェル・シール様。」

「どうでしたか?久しぶりに日本人に会って。」


見目は大和撫子とは全く異なるも、慎ましいその笑顔には心を魅了されるものがある。


「心に涼風が吹き込んだごとく、久方ぶりに天晴れな気分にござる。」

「そうでしたか。それは何よりです。」


即言葉を返され、やはり、全て心を見透かされていたことに改めて気付く。人智を超えた存在よ。


「改めてチュートリアルでのご指導ありがとうございました。そして可能ならば教えていただけますか。ソーシ様の目から見てアユム様はどのように見えましたか?あくまでもキャラクターとして、ですが。」

「某からみて、アユムは大和のおのこの……雛よ。」

「ヒナ、でございますか。……これから強くなると?」

「左様。フェル・シール様の懸念、某にも判り申す。アユムは戦いの技術も経験もなく、この世界でキャラクターとなるにはあまりに弱く、甘い。しかし、アユムはそれでも生きてゆけるだけのしぶとさを備えていると、某は愚考いたす。」

「……わかりました。それでは失礼いたします。」


フェル・シール様が消えて、緊張が解け、ふうっと一息着いてから立ち上がった。


「アユム、どんなに格好が悪くてもいい、生き残れよ。」


某は修練の続きを始めた。




感謝・感謝です。


少し期間が空くかもしれません。

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