5話 ソーシ
遊戯世界ノーアのシステム管理神であるフェル・シール様の姿が消えたと思ったら別の景色が視界に入ってきた。どうやらチュートリアル・ノーアとやらに到着したらしい。段々と浮遊感がなくなりわずかに落ちていく感覚がしたのちに足の先に床が触れた。浮いていたのは地面から数センチ程だったようだ。
降り立った場所はあたり一面が緑の草で覆われた丘で、なんというか神聖な雰囲気のところだった。神聖な雰囲気を醸し出しているのは僕の周りにある白石群で、直径10m程度の丸い円をして囲われていてイギリスにあるストーンサークルのようだと思った。テレビかなにかで見ただけなので確証はないけど。
「来たか。」
そして目の前には1人の人物が立っていた。
(狐の獣人だ!)
自分から3mほど離れた場所にいたのは人型をした狐だった。背は160cmほどで細身で小柄だ。多分男性だと思う。
「某はソーシと申す。貴殿のチュートリアルに付き合うよう運営に命じられた。一言で言えば某はキャラクターとしての先輩だ。」
「僕はアユムです。よろしくお願いします!」
「アユム、歩か?もしや貴殿は日本人か!」
「ええ、見ての通り日本人です。ソーシさんも?」
「ああ、くくくっ。」
「?」
「すまぬ、昔の自分を思い出してな。その姿では日本人とはわからぬ
よ。」
「……あっ!」
両手を見ると毛深く、人には見えない細長い爪が生えている。顔も触るとやっぱり毛で覆われているようだ。背丈はソーシさんとそう変わらないが、若干僕の方が細身だ。いつのまにか姿が変わっていたらしい、言われてようやく気がついた。想像と違ったな、もっと人間に近い姿だと思ってたよ。
「どうした?獣の姿になったことが気になるか?」
「いえ、あの、……はい。覚悟はしてましたけど、やはりショックです。」
「さもありなん。我ら獣人は月の満ち欠けで姿が変わる。満月に近い日には獣の姿に近くなり、新月に近い日は人の姿に最も近くなる。」
「では、今夜は満月なのですか?」
「そうだ、ふむ、まあそのこともそれ以外のこともそのうちわかるであろう。まあ、それよりもだ。その身体を慣らしをしてろう、付いて来い。」
「えっ、はい!」
急に走り出したソーシさんの後ろを着いていく。ソーシさんは最初はゆっくりと、そしてだんだんと速く。遂には周りが霞むほど速くなった。ちょっとなんてスピードだ。それに追い付いていける自分も怖いが。
それから、ジクザク、ジャンプ、林の中を疾走とか!まるで漫画の主人公にでもなったかのような錯覚を覚えた。身体能力半端がないよ!
「驚いたか?獣人は高い身体能力の中でも特に機動力に優れている。それにな、同じ狐の種族、同じ年頃の者でも此処まで速い者はおらぬ。我らキャラクターは、頭2つ3つ飛び出た存在と思え。」
「はい!」
単純かもしれないけどこういう自分の凄いところを体験すると、テンション上がるね!
お読みいただいて感謝・感謝です(^-^)/