第5話 かめの部屋
「それは・・・魔法の槍か」
アイナの目の前に対峙するヴィスレイン王国の軍隊長がそう呟いた。
魔法の槍を構え、軍隊長を見る。大した男ではないという噂だった。人一倍努力はしているものの、それまで。軍隊長という地位さえはあるものの、戦いの腕はまるでよくない、と。
それでも軍隊長という位置にいるのはその頭のよさからだった。
アイナは今、敵国の端にある城にいる。なぜそんな場所にこの軍隊長がいるのかは分からない。でも、それでもその配置には何か意味があるのではないかと考えてしまう。
「その魔法の槍はどういうことができるんだ?」
軍隊長は剣を構え、そう問うた。
アイナは何も言わずに槍を構える。
「敵教える必要はない、ということか。確かにその通りだ。その魔法の槍が本当に魔法の槍と呼ばれるようなものだとしたら・・・な」
消えた。
速度上昇魔法だろう。どこまでのレベルかは分からないが、視力強化魔法によりアイナの目は一時的にそのスピードさえも追える力を得ている。
アイナの国の魔法使いにしてもらったこの強化呪文。切れれば終わり。
アイナに魔法の才能はない。だからこうして騙し騙しで生きてきた。
「・・・・・ッ!」
ものすごい素早さから放たれた一撃を槍でガードする。こちらの方が獲物は長い。それだけ攻撃範囲が広くなる。剣に対しては有利だった。
続けて放たれる剣の一撃。一振り。それもなんとか槍で受け止めていた。
(今のを防ぐか・・・魔法の槍、なるほどな)
軍隊長はそう判断し、自分にかかっていたスピード上昇の魔法を解く。
相手にそれが効かないのならばただの魔力の無駄だ。アイナのその目の力を強化する魔法には時間制限があるということを軍隊長は知らない。
しかしお互いに能力を魔法で上げているとはいえ、ものすごいスピードの2撃を槍で防いだのだ。とりあえず素人ではない、と軍隊長は判断した。
「・・・・・」
アイナは槍の構えをとかない。
魔法の使える相手はどんな相手だろうがアイナにとっては脅威だ。油断は絶対にしてはならないのである。目の能力がはやくも下がり始めている。時間はない。
(もう・・・一気に決めるしか・・・!)
構えた槍を前に突き出し、そのまま軍隊長に向かって走る。そのスピードは人間のそれだが、目の能力を強化していることで相手の反応が遅れた部位をすぐに探し出せる。
そして魔法を解いた軍隊長。その一撃は必ず・・・当たる。そう、まるで魔法のように。その槍は一撃で全てを終わらせるのだった。
○
「で、この先は・・・・・・・・・・・・・・・・・」
部屋で1人何かを呟きながら作業している悲しい俺。
曜日は日曜日。朝から自由だった俺はつい先ほど起きて、お昼真っ盛りな2時の時間を部屋でノートパソコンをいじる時間に費やしていた。
「まるで何も思いつかない」
きっぱりとそう断言できる。
すごい人なんかは登場人物が勝手に動いてくれるだなんて言うみたいだが、今書いている俺の作品の登場人物は俺の操り人形。俺の意思によって動かされる人形のようだった。
別にそれが悪いとは思わない。自分の意思で動かせる作家もまた同じようにすごいのだから。
でも俺の場合は・・・。
「なんというか活き活きとしてない」
そう、まだ何か有り余っていそうなのだ。
それはなぜか。確実に自分の勉強不足である。大した知識もなく、またバトルを書いたこともない。経験不足。普段ならば今から努力すればいいと長い目でみようと思うのだが・・・。
今ばかりはそうもいかない。
俺はあいつの気が変わる前にあいつに認められる何かを書かなくてはならないのだ。
「・・・・・」
無言で魔法の槍の小説情報を見る。
もちろんポイントなんかなく、アクセス解析をしたところ読んでいる人数は少ない。俺はてっきり認められる=他のたくさんの人にも認められる、ということだとばかり思っていたが・・・。
この間の言い方からしてそういうわけではないらしい。
あいつのこともよく分からない。ほぼ初対面で全てを分かろうとするのも不可能かもな。
そんなことを考えて展開の続きを考えていると下からチャイムの音が聞こえた。この家、一軒家の2階建てで、俺の部屋は2階にある。
高校生である俺はもちろん実家暮らしだ。1人暮らしだったり、両親ともに単身赴任、または1週間だけ外国に旅行とか、夜遅くまで帰って来ないとかそういう都合のいいアニメ展開は一切ない。
だからそのチャイムに対応したのは当たり前のように俺の母親だった。
下から俺を呼ぶ声がする。
なんだろう、ネット通販で頼んだものが届いたとか・・・?適当に予想しながら階段を降りていく。
「あ、ほらはやく来なさい」
母親に急かされ、玄関に移動するとそこには・・・。
「亀戸先輩、こんにちは」
「ご、ごめんね急に・・・」
赤石ちゃんと犬飼がいた。
赤石ちゃんは堂々と、犬飼はどこか申し訳なさげに、しかも少し落ち着きがなさそうだった。反応的には犬飼の方が正しい。普通異性の家ってそれ相応に緊張しない?この後輩はそういうのに強いのか、そもそも俺に興味がないのか。
後者だろうな。
母親の「こんな友達がいたなんて」的セリフを全てかわし、2人を2階へと案内する。
何しに来たんだ・・・。
「ここが先輩の部屋ですかー」
俺の部屋に来て早々赤石ちゃんがそう呟いた。この前見たとき小さな2つ結びだった髪型は今日は上の方で小さなポニーテールとなっている。髪がそこまで長くないので本当に犬のしっぽ程度ではあるが。
スカートにスパッツをはいているというのはいつも通りだった。
犬飼はいつものようなショートカットで服も制服だった。その制服の姿が唯一今日の訪問は遊びではない、という印象を俺に与えてくる。
じゃあ、なぜ来たのだろう本当に。
「色々なグッズがあるんだね」
犬飼が当たり障りのないようなことを言う。
犬飼はオタクではないが、だからといってオタクを毛嫌いしているわけではないらしい。
「俺の部屋の事はどうでもいいよ。それよりも2人ともなぜうちに・・・・・?」
しかも日曜日に。
さっきも言った通り親がたまたま数日間いないだとか、帰宅が夜遅いだとかそういう都合のいい話なんてないのである。
親がいる状態で女子が遊びに来る・・・これほどまでに恥ずかしいこともなかった。
「遊びに来ました!」
「ああ・・・やっぱり・・・」
「ご、ごめんね。一応止めたんだけど・・・赤石ちゃん1人より私もついていた方がいいかなって」
「本当その点には感謝しかない犬飼ありがとう」
「納得がいきません」
この後輩、1人だとどこまではめを外すかわかったものではない。
先輩として舐められていない(すでに俺は初対面の時から先輩と思われていないような気がする)犬飼がお目付け役としていてくれれば安心だ。
今も赤石ちゃんは俺のベッドにちょこんと座っていた。いや、普通ベッドに座る・・・?嫌がるものなんじゃないのかな。俺の部屋には椅子という椅子が1つ、しかも1人用のしかないので必然的にそうなってはしまうのだけど。
「で、なにやらすっごい悩んでいる後がありますね」
赤石ちゃんがこのままでは自分に都合の悪い話題へと繋がりそうだと判断したのか、急に話題を変えてきた。もちろん目線は俺の机の上にあるノートパソコン。
そこには魔法の槍の執筆途中の画面がある。
「へえ、これがその途中のお話?」
犬飼もそれに注目していた。
赤石ちゃんとはすでにその話をしており、さらに言えば赤石ちゃんも自分で話を考え漫画にするということを普段からしている。だから同じ境遇にあると思うとそこまで恥ずかしくはない。
ただ、犬飼に見られるのはどうも恥ずかしい。オタクに抵抗がないことと、他人の自作小説を見るのとでは大きく違うような気がする。
「まるで進んでないけどな」
「でも私は何か自分で作ったりとかしたことないから、少しでも書ける事自体がすごいと思うなあ」
「犬飼・・・」
この感じが心地いい。
女子2人が自分の家に遊びに来たという現実を忘れ、いつもの文芸部の部室のように感じる。
「あ、これこの間出た新刊ですか?」
「赤石ちゃんは本当に遊びに来たんだね・・・」
まあ、ないとは思っていたけれどもしかしたらこうして手詰まり状態の俺を応援しに来てくれたのでは?という1つの願望とも呼べるものがあったんだが。
「あれ、でもこっちの漫画の新刊はないですね」
「ああ、それ出たの確か今日だったっけか。明日明後日にラノベの新刊も出るからそのついでに買おうかなあって思ってたんだよね」
なんとなく買いたいものは溜めて、一気に買うことが好きだったりする。ただ、1週間とかあいてしまうと我慢できなくなり買ってしまう。
「そういえば赤石ちゃんも何か絵かなんかを投稿してるんだよね?」
そんなどうでもいい会話を断ち切った犬飼のセリフ。
「はい、一応」
「それってこのパソコンでも見る事ができるのかな?」
どうやら赤石ちゃんの作品に興味があるようだった。
俺の作品や兎塚の作品は文芸部の部室で見た事があったが、確かに赤石ちゃんの創作物を犬飼は見た事がなかったはずだ。ちなみに俺も自分のプライベートで見ただけで、こうして赤石ちゃんのいる前で見た事はない。
「見れますけどいいんですか?犬飼先輩」
「え?いい?とは・・・?」
疑問符をつけまくる犬飼。
赤石ちゃんのそのセリフに明らかに怯えていた。
そして、その赤石ちゃんのセリフの意味に気付いた俺はすぐにその会話をやめさせる。
「ストーップ!それ以上はいけない!」
しかしそんな俺の声を無視し、2人は会話を続けていた。
「あたしの作品、一般向けはもちろんですが、R-18作品もありますよ?」
「え・・・・?」
「ああ・・・」
犬飼は驚き、赤石ちゃんは首をかしげる。
そして俺は頭を抱えていた。
その後も犬飼はしばらく言葉を発することがなく、その間に俺と赤石ちゃんの話題はすでに変わっていた。そう、俺の今書いているもの、魔法の槍についてだ。
「今、主人公が戦っている相手は腕はそこまでではないけど頭のいい相手なんだよね。だからここで主人公がいつものように倒してしまうと、その設定が生きなくなるというか・・・いつもと同じ展開でマンネリというか」
「いつもと同じってそこまで話数書いてないですよね?」
「うん・・・」
「たぶん読者にそこまで浸透してないですよそのパターン」
「それ俺を元気にさせるために言ってるんだよね・・・?」
なんかやけに刺々しくないだろうか。
被害妄想?
「でもほら、少しぐらいいい勝負感出したいじゃん!俺TUEEEもいいけどそんな俺TUEEE主人公が苦戦して勝つって展開も燃えるじゃん!」
「それは否定しませんが。熱い作品の多い少年漫画でも主人公は一度負けて修行して強くなるっていう展開が王道で面白いですからね!」
「さすが赤石ちゃん!」
色々とひどいこと言われてるけど一番理解してくれているのはやっぱり赤石ちゃんだぜ!
「あたしも文章とかあんま書いたことないんで、先輩の執筆とやらを見せて下さいよ」
「え・・・でもほらまだ書いてる途中のを誰かに公開するわけには・・・」
「なんですかその意味分かんない自意識過剰。安心してください、あたし別に亀戸先輩の作品のファンとかでもないですし、見たところですぐ忘れますから」
「そこまで言う必要なくない!?」
一応赤石ちゃんも読者の1人である。
文句を言いつつも、そういう空気になったので自分から執筆を始めた。
○
「なる・・・ほど・・・」
軍隊長はすでに立てる状態ではなかった。
勝負は一瞬。
元々腕のいい方ではなかった軍隊長はアイナの魔法の槍により、反応の遅れた足を狙われ一突き。多くの血を流している足はもう動かない。
しかしこれは戦争。慈悲などない。
「・・・・・」
アイナは軍隊長を見下ろす。
とどめを刺そうと思えばいつでも刺せる位置だった。
「僕はあなたが、軍隊長であるあなたがこんな辺境の城に、兵も大した人数がいないこの城になぜいるのか、それが不思議でしょうがありませんでした」
「その答えは・・・もう分かっているようだな。そう、俺は強くなんかないんだ」
弱い。
弱いからこそ早々に切り捨てられ、相手を足止め、または消耗させるだけのこの城にいたのだ。
「今もこうして生かしているのは・・・情けか?」
「いいえ・・・」
静かにアイナは槍を構えた。
「ただの気まぐれです」
そう言ったときだった。
軍隊長は気付いた。腕は立たないが、頭がいい軍隊長が気付いたこと。それは魔力の発生源だった。殺される瞬間に分かる。殺される瞬間に槍が自分に限りなく近づくからこそ気付けたこと。
(!・・・この槍・・・全く魔力を発していない!?)
もしかしたら今までも気付いたやつがいたのかもしれない。
でもそんな相手も今までその槍で殺されていた。だからその情報はどこにも漏れなかったのだ。
この軍隊長も同じ道を歩む・・・はずだった。
急な地震。
いや・・・これは・・・。
「大規模空間移動魔法・・・!」
通称テレポート。
それが一瞬にして行われた。
そう、この軍隊長は見捨てられたわけではなかった。逆にその頭の良さを買われ、こうして相手の謎を探る役目となっていたのだ。
もちろん、そのことは軍隊長自身にも知らされていなかった。
「魔法の槍の使い手よ。この勝負は俺の負けだ。だが、次は確実に勝つ」
そう言って、その城そのものごとまるまるどこかへと移動していった。
○
「っていう展開が一番いいかなあって」
俺はキーボードを打つ手を止めて赤石ちゃんを見る。
赤石ちゃんはずっと見ていたようでうんうん、頷いていた。
「THE普通ですね」
「それは褒め言葉として受け取るからな・・・!」
普通にさえ至らなかった自分の腕前が普通になった、と。そう思おう。
「もっと読者はインパクトを求めてると思います。よし、ここはあたしの出番ですね!」
「いや、それは赤石ちゃんの求めてるものじゃ・・・てか赤石ちゃんが書くってこと?」
「そのまま採用はまずいでしょうし、軽い道筋みたいなものですよ」
採用されるぐらい自信があるらしいのは赤石ちゃんらしい。
では行きます。と言い俺のノートパソコンのキーボードを叩き始めた。
○
軍隊長の剣技が光る。
強くはない軍隊長ではあるが、その剣技は一応国の、軍隊のものである。その剣がアイナの服を綺麗に切り刻んだ。
○
「いやいやいやいやいや!」
ここで俺はストップをかける。
「え、なんですか?」
「なんですかじゃねえ!なんで軍隊長、主人公の服だけ綺麗に切り刻んでるんだよ!」
「なんでって言われましても・・・ほら、一応軍隊長なわけですからそれなりの技術が」
「そんなわけわからない技術に時間割いてるから弱いんだよこいつ!」
なにそのお色気多い漫画のお約束みたいなの。
服だけ綺麗に溶ける溶解液みたいなの。
しかも男同士だし全く嬉しくない。
「最近サークルメンバーの男同士のそういう同人誌に協力してるせいで・・・どうもあたしの今の価値観は世間とずれているようです・・・」
「別にその本は否定しないけど・・・俺のこの作品はそういうのじゃないから・・・」
どうも赤石ちゃんも無意識のものだったらしく、頭を抱えて少しだけ落ち込んでしまった。
その様子を見ていた犬飼(いつの間にか復帰していたらしい)に赤石ちゃんは注目していた。
「あたしが破れた今、残るは犬飼先輩だけです」
「え?私?」
自分を指差し、驚く犬飼。
「でも私本当にライトノベルは少ししか読んだ事無いけど・・・」
ちなみにその少し、というのは俺が無理やり勧めたやつだったりする。
「そういう意見が重要になるときもありますって」
赤石ちゃんが犬飼をノートパソコンの前まで移動させる。
犬飼はえー、と言いながら少しずつ慣れない手つきでキーボードを叩いていた。
○
アイナが魔法の槍で攻撃を仕掛ける寸前。ふと、目に入った光景。
(あれは・・・ミカ!)
ほとんど兵もいないはずのお城にヒロインの1人であるミカが他の兵士と一緒に笑顔で歩いているところを発見した。見間違いだと思い、首を振る。
もう一度、槍を構え直し・・・突撃する直前。
(あれは・・・エリカ!)
これまたもう1人のヒロインであるエリカが他の兵と歩いているではないか。
驚きのあまり思わず足が止まる。
それだけではなかった。
(ユイにアリサ、それにロコまで・・・!)
なんと今まで会ってきて、自分に思いを寄せているはずのヒロインたちが次々とその城の兵士と楽しそうに歩いているではないか。
アイナはもう一度首を振り、それが真実か確かめるためにも軍隊長に向かう。
「絶対にお前を倒す!」
○
「っていうのはどうかな・・・?」
「却下!」
俺はそう叫んだ。赤石ちゃんに至ってはもう何も言っていない。茫然とするのは自由だけど、正直赤石ちゃんもそれなりの物語だったからね?
「でも一応、最近流行ってるらしいハーレム?っぽさみたいなのを出してみたんだけど」
「え?これハーレム?これハーレムものだったの?」
浮気男の末路みたいになってるけど。
なんか今後すっごいドロドロした展開になっていきそう。
「そういうラノベがないとまでは言わないけど・・・」
いくらなんでも唐突すぎる。
なんかもう軍隊長倒すのがついでみたいになってるじゃんこれ。
「でも、亀戸くんに見せてもらったライトノベル?あれ主人公が特に何かしたわけでもないのにモテすぎじゃないかな?普通あんなに惚れる?だって1人のヒロインなんか頭なでられただけで・・・」
「わー!創作に現実を持ち込むな!」
創作ぐらい夢見させてくれよ!
読んでる方も書いてる方も「あれ、こいつちょっとありえなくね?」とかって思ったりするんだから!
あとチョロインは正義。
完全に俺の好みの問題ではあったが、特に何かあったわけでもなく・・・こうしてこの日の時間は過ぎていった。
本当に遊びに来ただけなのだろう。
「いやあ、でも安心しましたよ。亀戸先輩最近、全然元気なさそうだったんで。でも今日みたいに楽しそうにギャーギャー騒げるってことはまだまだ大丈夫そうですね」
「その騒ぐ原因は誰だったのか今一度考えろ後輩」
赤石ちゃんと言い合いをしていると犬飼がふと会話に入ってきた。
「うん、でも久々に楽しそうな亀戸くんを見れたかも」
「そうか?」
「俺イチャだっけ?あのひどい小説をみんなに紹介してるとき並みに楽しそうだった」
「・・・・・」
まあ、いい。ここは流そう。
書いていて、読んでいて楽しい小説、か。思えばその気持ちを初めて味わったのはあいつの、兎塚の作品である機械仕掛けの魔導士なんだよな。
最近の俺は確かに人気うんぬん、認められるうんぬんを気にし過ぎて余裕がなかったのかもしれない。他の作品を見ても出てくるのは嫉妬。楽しいと、楽しいからこそ悔しいが混ざって最終的には悔しいが勝つ、そんな気持ちも悪くはない。
でも、今は違う。
「俺は・・・兎塚にあの時の気持ちを味わってほしいのかもしれない」
小さく呟いた。
楽しませてもらったからこそ、楽しませる。
簡単なようで難しい恩返し。
その後、赤石ちゃんと犬飼は自分の家にへと帰っていった。
ちなみに後から気付いたことだが、あの2人に俺の家の場所教えたことなかったよな・・・?という重大な事実が発覚。
恐らく赤石ちゃんが探ったんだろうなという答えに安心している俺が信じられなかった。
何者なんだよほんと・・・。
少しだけ間があいてしまいました。
もしよければまた次も見ていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
ではまた次回。