ヤミの巫女、光のミライ 15章 『覚醒』
誤字脱字の指摘、感想お待ちしてます!
追記:ユニーク140突破ありがとうございます!
「一度の失敗は無能を意味する。だが二度の失敗は・・・・・・」
「ミライ!!!」
ヴァイス・ド・ペインハートの攻撃は、軽々とミライの体を貫いた。この俺が見えないほどの速度で、ヴァイスは剣を振り下ろしたのだった。
ミライは動かない。地面に倒れたまま、ぐったりとしている。血が地面に広がっていく。
こんなことが。
「こんなことが・・・」
──こんなことが。
「あっていいのか・・・っ!!」
────こんなことが。
「ミライ・・・ミライ!! 頼む。返事を、して・・・くれ・・・・・」
──こんなことがあっていいのか?──
白銀の夕夜との戦いのあと、きづついた俺を看病してくれたのもミライだった。
帝都を襲ってきた水刀八雲を撃退できたのも、ミライの助けがあったからだ。
ミライを失いたくない。失わない。失うものか。そのためには何をすればいい?
──何を?
「その女は二度失敗した。だから死んだ」
倒れたミライを見下ろしながらヴァイスは笑っていた。剣に着いた血を払いながら、俺を見ている。
「所詮ランクDの祈りなどこの程度というわけだな。貴様はどうだ? ランクA」
──違う。ミライは失敗作なんかじゃない。
「次は貴様だ、天牙。この【無風残撃】を受けて、無傷で生き残った者は居ない。ここで殺させてもらうぞ。天牙ぁぁ!!!」
奴は剣を振り上げたのだろうか。俺には何も見えない──何も聞こえない。
奴の能力のタネは割れている。【血塗れの四人】の一人、『黒』のヴァイス。剣の表面に施された装飾が奏でる風切り音が詠唱の代役を果たすので、ヴァイスは詠唱無しで魔技を使える。『黒』というのは、彼と戦った者が一瞬で意識を黒塗りにされることから付いた二つ名だ。
単純で、しかも絶大な効果を発揮するヴァイスの魔技。俺を両断しようとしている。それに気付かせてくれたのも──
「・・・・・・イ」
「何だ?」
「・・・・・・ミライ」
「うわ言か・・・。追い詰められて精神が崩壊したか。それも仕方あるまい」
「せめて楽にしてやろ「ミライ!!!!!!!」
」う「
」 「 !
「 「」 」 「 「
」 」
「 何だ !? 」
な、 起こ って 「い る!?
」 何が
地面が。空が。歯科医が。時間が。
捩
れ
捻
じ
れ
て
ゆ
く ──
白に飲み込まれてゆく意識の中、感じるのは巨大な力だった。ミライ。ヴァイス。剣。【無風残撃】。血の色。自我。空。敵。重力。天牙という存在すら。
全ての束縛を離れ、支配から許された、巨大な無の鳴動。
力の奔流、無の潮流の中心にあるのは、他でもない・・・・・・俺だ。
まるで世界自体と一体化したような感じの後、残ったのは俺と倒れたミライだけだった。
返事は無い。ヴァイスだったものは、ヴァイスが居た場所は、ヴァイスが存在したと言う事実は、消えた。
──何が起きた?
理解できる。何故? それは俺が起こした現象だから。
「死」
原理は無い。理屈も無い。
何も。
何も残っていない。
唯
「──それが、お前に起こったものの正体だ」
「あ、あれはっ?!」
楓瑠が見たのは、巨大な白の塊だった。塊としかいえないような、ただただそこにあるとても大きな白。
「あそこは天牙たちの居るところだ! あんな光・・・・・・何が起きてんだよ!!」
「分からない! でも・・・急ぐわよ!!」
「オッケー。俺たちが駆けつけるまで死ぬんじゃねえぞ! 天牙のヤロウ!!!」
「天牙・・・・・・・無事で居て・・・・・・!」
「まさか、あの学園のAランクにあれほどの者がいたとはな」
「これで『白』『黒』の二人に加え、我らのアジトが潰されました。被害は甚大・・・」
「無駄なあがきだ。どうなろうと、覆せんよ。この世界の上に私という王がいる限り、彼らに勝ち目など無い」
「は、ははっ!」
「フフ、奴ら・・・・・・この水刀八雲を本気で退けたとでも思っているのか? 【世界審判】《ふるいにかけるせかいのしずく》が私にある限り、負けることなどない・・・・・・ということを教えてやろうではないか」
天牙無鉄
能力:【王は時を戴く】《クラウン・ザ・クロック》
威力:∞
【破壊の王】《クライシス・サトゥルヌス》の真の姿。本質は時間の操作。
今までの【破壊の王】は物の時間を加速させて破壊していただけに過ぎない。
前の能力:【破壊の王】
威力:A+
物を破壊する能力。天牙がヴァイスのバリケードを破壊したのも全てこの力。
水刀八雲
能力:【世界審判】《ふるいにかけるせかいのしずく》
威力:???