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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
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2.謎のおっさん、内政する

 おっさん率いるギルド【C】は、山頂に堅牢な城を築き上げた。

 城からは城下町となった街、イグニスが見下ろせる。PC・NPC問わず多くの人が行き交い、商人たちが客を呼び込もうと大声を張り上げ、職人の弟子たちが忙しそうに走り回る。公式にプレイヤーが作った街として認められた、最初の街を見物しようとするPC達や、今後自分たちが作る街の参考にしようとメモを取る、上位ギルドのメンバーの姿もあった。


 さて、そんな街と城を作ったギルド【C】のメンバーであるが、その幹部たちは城の作戦会議室に集まっていた。

 街とは、作ってハイそれでお仕舞いという訳にはいかない。

 街を作ったギルドは、街を経営し、外敵の手から守り、発展させていく義務がある。

 ちなみにそういった経営SLG的な物が苦手な場合、NPCを雇って執務を代行させる事ができるが、もちろん【C】の幹部たちは、自らの手で町を経営する事を選んだ。

 とはいえ、一から十まで全て自分たちの手でやっていたのではキリが無い。他人に任せられるところはNPCを雇い、教育した上で任せようという方針だ。


「まずはこの……法律と、税率でも決めるか」


 おっさんは、まずその二点を挙げた。

 街を作ったギルドは、おっさんが言った二つの項目を設定する事ができる。


「とりあえず、産業スパイは見つけ次第射殺で」

「異議なし」

「同じく異議なし」

「可決する」


 ジークの提案に、賛同する声がいくつか上がる。おっさんも決を採りすらせずに、すぐ可決した。

 ギルド【C】は職人のギルドであり、彼らが作り、鍛冶職人が大多数を占めるドワーフも暮らしているイグニスの街もまた、職人の街である。

 その技術を盗もうとする不届きな輩は即、殺すべし。それがその場に居た【C】の幹部たちの共通認識であり、異議など出るわけもなかった。


「盗賊は?」

「見つけ次第殺せ」

「犯罪者PCは?」

「大人しくしてれば何もしなくていい。ただし監視は付けろ」

「関税は?」

「無しだ。誰でも自由に商売が出来るようにする。これに関しては異議は認めねえ」

「採集ポイントの扱いは?」

「俺らが開拓した分はギルドで所有し、外部の人間が使う時は使用料を取る。ただし元からある分は誰でも好きに使えるようにする。不当に独占しようと企んだ奴は射殺しろ」

「工房は?」

「街の工房は誰でも無料で使えるようにして、一般の職人が集まるようにする。設備の整備代は税金で賄おう」


 議論は早いペースで進み、次々に政策が決まっていった。

 元々【C】は、おっさんがその手腕とカリスマで癖の強いメンバーを纏め上げて、直属の幹部たちがそれを補佐する中央集権タイプのギルドだ。

 そういった訳で【C】はその組織柄、またおっさんの性格もあって、とにかく決断が早い。


「それと税金は……基本、収入の七割を収める物とする」

「待ておっさん!?いくらなんでも重税すぎんぞ!」

「そうだな。そこで住人に対しては、俺達からクエストを出す。そいつをクリアするごとに税金の一部を免除し、同時に報酬も出すってのはどうだ」


 そう言っておっさんが、サンプルとして作成したクエストをウィンドウに表示させ、全員の前に提示した。

 その内容は【街周辺のモンスター討伐】【盗賊団の捕縛】といった戦闘系の物。

 【鉱石の納品】【薬草採集】といった採集系や、【インゴットの精製】【薬の調合】【料理を作ってみよう】等の生産系。

 それから【防壁の建設を手伝え】【畑の開墾】【水路の工事】などといった、街を発展させる為の仕事をクエストにした物。

 【片手剣の基本】【新たな生産スキルを習得】【魔法を覚えてみよう】等の、住人が新たなスキルを覚えたり、成長させたりする事で報酬を得ることのできるクエストまである。


「それぞれの適正に合わせてクエストを発行して、こいつを住人達にやらせる。普通の討伐系・採集系はもちろん、街を発展させたり、住人それぞれの成長を促すためのクエストも用意した」


 資料に目を通すギルドメンバー達に、おっさんが説明をする。


「これらのクエスト群を、のんびりこなしても三割程度までには減らせるし……気合入れてガッツリとやりゃあ、税金の全額免除だって夢じゃねえ。勿論サボれば七割取るし、犯罪やルール違反に対しては容赦はしねえがな」

「なるほど……良いかもしれないな」

「やればやっただけ報われるシステムって訳だ」

「そう言葉にするとブラック企業みたいだからやめろ」


「しかし、それで税金が大幅に減れば住人は良いとしても、私達のほうは大丈夫なんでしょうか?このクエストの報酬もギルドから出すんですよね?」


 ユウが手を挙げて疑問を述べる。おっさんはそれに対して頷き、回答した。


「疑問はもっともだ。恐らく最初のうちはろくに利益も出ねえ……どころか、赤字になるだろうな。だが、俺はそれで構わねえと思っている」

「その心は?」

「まずは人を育て、街を発展させる事を第一とする。それが最終的に俺達にとっての財産となると俺は思っているからだ。それに元々、俺らは自分達の生産活動、商売でたんまり稼いでいて、資金は潤沢にある。赤字はそれで十分補えるはずだ」

「なるほど……」

「短期的には損失になるだろうが、これは中長期的な投資だと考えろ。デカい仕事をする為には、目先の事だけ見てちゃあいけねえぞ」

「勉強になりました。ありがとうございます」


 ちなみに結果として、この政策を発表した直後、住人達がクエストをよこせと殺到し、彼らは怒涛の勢いでクエストを遂行していった。

 おっさんの目論見通り、彼らが精力的に仕事をしたおかげで街はどんどん発展。同時に住人たちの持つスキルも磨かれていき、優れた人材が多く排出された。

 こうしてイグニスの街と、そこを拠点とするギルド【C】の発展は更に加速していくのであった。

住人「税金七割とかマジかよ死ねよ」

住人「いやクエストやれば減税らしいぜ。報酬も出る」

住人「仕事以外にもスキル成長させるとご褒美あるって」

住人「マジかよクエスト受け取ってくるわ」


数か月後


住人「ボス討伐クエスト受けたからPT組んで行くべ」

住人「オリハルコン扱えるようになったから剣作って売るか」

住人「今月クエスト頑張ったから税金1割だ。浮いた金でレア装備買おう」

住人「防壁の補修?俺に任せとけよ、一日で終わらせてやる」


つよい(確信)

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