表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
91/140

1.謎のおっさん、城を建てる


 領地システムが実装されたその日、謎のおっさんはアルカディアにログインすると、すぐにギルドメンバーを集合させた。

 彼ら、ギルド【C】はかつて、火山洞窟の入り口に街を作った。それから数ヶ月が経過した現在、街は順調に発展し、その規模はますます大きくなっている。

 大陸西部における冒険の拠点として、またワールド内でトップに君臨する生産ギルドが管理する一大生産拠点、および貿易拠点としても賑わっている状態だ。


 それを一から作り、育てあげたのは彼ら、ギルド【C】であり、それが突然他の誰かの手に渡ったとなれば黙っている彼らではない。

 特例として、最初からこの街とその周辺地域をギルド【C】の領地とした運営チームの判断は賢明であったと言えるだろう。


 彼ら、ギルド【C】のメンバー達は、ログインして集合すると、すぐに引っ越しを始めた。

 城塞都市ダナンに居を構えるギルドハウスとギルドショップは、今後は支店として扱い、西部に本拠地であるギルドキャッスル(城)を建築する準備を始めたのだ。


「よーし、全員【石工】スキルは取ったな?アップデート前に経験値を使い切った馬鹿は居ねぇな?」


 城や砦の建築には、本日新たに実装された【石工】スキルを使用する。

 おっさんの言葉に、その新スキルを習得したギルドメンバー達が頷いた。


「エレガントなわたくしには相応しくないスキルですが、仕方ありませんわね」

「まあまあ。一刻も早く城を完成させる為には、皆の力を合わせなければ」


 ぼやく裁縫師のアンゼリカを、料理人のクックが宥める。


「悪いなゼリカ。おめぇの裁縫の腕は、後で内装を整える時に存分に振るってくれや。クックも、城が完成したら記念パーティーをするからよ。その時は美味い料理を頼むぜ」


 おっさんが二人に声をかけた時、彼の元にやってくる者が二人。


「おっさん、ドワーフの連中から協力を取り付けてきたぜ」

「師匠、街の皆さんにも仕事を依頼してきました。大勢集まってますよ!」


 やってきたのはテツヲとユウだ。彼らはそれぞれ、ギルド【C】と友好関係にあり、この街の片隅にドワーフ自治区を築いているドワーフ族と、この街の住人たちに仕事を依頼してきた所だ。


「俺らは防衛設備を作るのも並行してやらねぇとな。ステラはそっちを優先してくれ」

「ん、任された」


 魔導技師のジークとステラは、城を防衛するための大砲や機銃の準備も同時に行なう。


「わしは土台を整えておくとしよう。その間に石材の切り出しをしておくと良い」


 そう言うのは白い髭を生やした、年老いた木工職人のゲンジロウ。


「よし……それじゃあてめえら、作業開始だ!」


 おっさんの号令で、彼らは一斉に動き出した。




 そして、次の日。


「それでは、城の完成を祝して……乾杯ッ!」


 なんという事でしょう!

 昨日まで何もなかった山頂に、一夜にして巨大な城が築き上げられているではありませんか!

 超一流の職人達の見事な連携によって組み上げられた城は堅牢でありながら、荘厳な雰囲気と見事な装飾で見る者を魅了し、ランドマークとしても一役買っています。

 また城門は非常に堅く、頑丈なアダマンタイト製であり、更に表面にはミスリルコーティングがされて魔法への耐性もバッチリ。

 また周囲を囲むのは五稜郭を参考にした、六芒星の形をした城壁。その角の部分には櫓と機銃が設置され、全方位に対して最高峰の防衛力を誇ります。

 更にその外側には深い水堀があり、水中には機雷が多数設置済み。正門前の橋は跳ね橋になっており、スイッチ一つで収納されて侵入者を拒みます。

 そして屋上には巨大な主砲と複数の副砲が設置されており、近付いてくる敵を遠距離から大火力で砲撃する事が可能。

 そして前述の通り、山頂にあるために天然の要塞となっており、もはや難攻不落といって差支えがないでしょう。


 城内にはギルドメンバー達のための工房と倉庫が完備されており、また大食堂にパーティーホール、作戦会議室のような設備は勿論のこと、遊戯室、ビリヤード、カラオケルーム、バッティングセンター等も取り揃えられています。

 そして最大の特徴として、火山の麓にあるこの街の名物……温泉を利用した大浴場があり、ギルドメンバー達はいつでも、温泉で疲れた心と体を癒す事ができるのでした。


「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」


 おっさんが乾杯の音頭を取ると、集まったギルドメンバー達がグラスをぶつけ合った。

 一夜にして巨大な城を築き上げたメンバー達は互いの偉業を讃え合い、料理に舌鼓を打った。



 この日、ギルド【C】は正式に、このエリアを領土として所有する事を申請。

 また、この街に名前を付け、正式にギルドの傘下に組み入れた。


 新たに生まれた街の名は、【火山と温泉の街イグニス】。

 アルカディアにおいて、プレイヤーが創造した最初の都市であり、またギルド【C】の最初の領地でもあるこの街は、後にこの世界における、職人たちの聖地となった。

 また火山地帯は観光地として開発され、名物である温泉と共に人々に愛され、多くの人が訪れた。こうしてこの街は、益々の発展を遂げていくのであった。



『ギルド【C】が大陸西部エリア8を領地化し、本城を建築しました』

『ギルド【C】が大陸西部エリア8に都市【火山と温泉の街イグニス】を完成させました』

始まります。

何とか連載一周年に間に合わせられてよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ