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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第2.5部 短編・番外編集
86/140

番外編・ユニコーン捕獲大作戦!

 VRMMORPG「アルカディア」には、百種類を超える数の様々なスキルが存在する。

 それらを鍛え、組み合わせる事でプレイヤー達は、自分だけの戦闘スタイルを創りあげてゆくのだ。


 そんな無数にあるスキルの一つに【テイミング】という物がある。

 モンスターを捕獲し、育て、共に戦うという特殊なスキル。

 モンスターの捕獲・育成・維持に手間と資金がかかり、その分プレイヤー自身の成長が遅れる事から、あまり人気のあるスキルとは言えないだろう。

 だが手間暇をかけた分、育て上げたモンスターには愛着が沸くものだ。大切に育てたモンスターが立派な戦力になり、そんな彼らと共に戦うのはテイマーならではの楽しみ方だと言えるだろう。


 さて、そんなテイマー達だが、【テイミング】スキルは前述の通り不人気で、テイマーの絶対数はアルカディアの人口に比べて非常に少ない。

 その反動か、彼らテイマーは貴重な同志を大切にし、テイマー同士の横の繋がりは固い。パーティーやギルドの垣根を超えて、テイマー同士は常にお互いと、お互いのテイミングモンスターを尊重し、助け合うようにしていた。


 ……オンラインゲームをやった事がある読者の皆様は、所謂【ネタビルド】【不遇職】等と呼ばれる者達が互いに身を寄せ合い、結束する姿を見た事がある、あるいは自分がそうだったという体験があるかもしれない。つまりはそれと一緒だ。作者にも覚えがある。


 話が逸れたが、今回のお話は、そのテイマー達が主役となる。



 城塞都市ダナンの片隅に、一軒の店があった。

 羊の形をした看板に書かれている店名は、ペットカフェ【もふもふ堂】。

 ここはテイマー専門ギルドが経営している、テイマーのみが入店できる喫茶店。すなわち誰にも邪魔をされない、テイマー達の憩いの場であった。

 店内はテイマーの溜まり場となっており、またテイミングモンスター用の食事やテイマー用アイテムの販売、テイマー向けクエストの斡旋なども行なっている。

 そんな【もふもふ堂】にある日、一人の客が訪れた。



「いらっしゃいま……ファッ!?」


 ドアが開かれると、澄んだベルの音が店内に鳴り響く。

 その音に反応し、お客様を出迎えようと入り口へと向かった店員の少女は、現れた客の姿を見て珍妙な悲鳴を上げながら硬直した。

 小さな竜を連れた、背中に一目見ただけで超高性能だとわかる長剣を二本背負った、長身痩躯の美青年。キャラクターネームは【カズヤ】。

 アルカディア全体で見てもトップクラスの実力を持つソロプレイヤーであり、彼の名を知らぬ者は殆ど居ない。

 また、それを差し置いてもテイマー達にとって、カズヤは特別な存在だった。

 何故ならば彼はβテスト、そして正式サービス開始直後において「使えないスキル」のレッテルを張られた様々なスキルを使いこなし、大多数の声に対して真っ向から異を唱え、自らその有用性を証明して見せた先駆者であるからだ。テイマーや二刀流使いにとって、彼はいわゆるゴッドであり決して逆らってはいけない人物であった。


「し、失礼いたしました。お一人様でしょうか」

「いや、待ち合わせだ。ホークは来ているか」

「は、はい。ではご案内いたします」


 しばし硬直していた店員だったが、我を取り戻すと上ずった声でカズヤを案内する。彼女の後に続き、カズヤは店の奥にあるテーブル席へと向かう。そこには、一人の青年の姿があった。


「よっ、カズヤ。わざわざ悪いな」


 カズヤの姿を見つけ、片手を挙げて挨拶をする青年。背は高く、整った顔だが派手な金色の頭髪とラフな服装、ヘラヘラと笑う表情から軽薄な印象を受ける。

 彼こそがカズヤをここに呼び出したプレイヤー。名をホークという。

 彼もまたテイマーであり、この店の常連だ。彼の隣には、鳥系モンスター用の食事をついばむ巨大なハヤブサの姿をしたモンスター【シルバーファルコン】が居た。


「構わん。それで用件は何だ」


 カズヤがホークの対面の席に座り、その膝の上に白銀色の子竜が座った。


「相っ変わらず愛想無えなぁ……まあいいや。実はお前に、あるモンスターの捕獲を手伝って貰いたくってさ」


 そう言いながらホークが一枚の紙を取り出し、カズヤに手渡す。それは情報屋から買った、そのモンスターに関する情報が書いてあるメモだった。

 カズヤがメモ用紙を受け取り、そこに書いてあるモンスターの情報に目を通す。その紙の一番上には、大きな文字でこう書いてあった。


 【モンスター名:ユニコーン】



  ◆



 城塞都市ダナンより東にある、少し前に実装された新エリア【幻獣の森】。

 様々な獣系モンスターが棲息し、価値の高い薬草の採集ポイントが点在する人気の狩場だが、それなりに難易度は高い。


 カズヤに頼み事をした青年、ホークの武器は狩弓ハンティングボウ長弓ロングボウに比べると威力や射程は劣るが、その分扱いやすく、連射性能に長ける。

 彼自身は弓や罠を駆使して戦い、それをテイミングモンスターの隼や狼が援護するというのがホークの戦闘スタイルだった。


「いやー助かったぜ。やっぱ持つべき物は友達だよなぁ」


 道すがら、カズヤへと礼を言うホーク。彼はカズヤの数少ない友人だが、彼自身はカズヤと違って、平凡な中級プレイヤーに過ぎない。

 正直組むメリットなどカズヤ側には皆無であろうに、不愛想な友人は困った事があれば、よくこうして助けてくれる。その事に心の中で深く感謝するホークであった。


「俺一人だと、森の奥に行くまでに死にそうだし……っと」


 話している間にも、繁みの奥から巨大な虎型のモンスター【サーベルタイガー】が二匹同時に突進してくる。慌てて狩弓を構え、矢を番えるホークだったが、その前にカズヤが二本の片手剣を同時に振るい、サーベルタイガーを二匹まとめて斬り払った。

 そして斬撃と同時に、魔法による雷が上空より降り注ぎ、サーベルタイガーに直撃した。どうやら攻撃を行なうと共に、一瞬で魔法を発動させたようだ。


「ヒュゥ、すげぇな。今の無詠唱?」

「詠唱時間0.5秒。無詠唱と呼ぶには遅すぎるが、通常のモンスター相手ならば十分だろう。対人で使うにはやや心許ないが」

「なにそれ廃人こわい」


 初歩の魔法とはいえ十分な速度ではあるが、カズヤにとっては納得のいかない物らしい。実際にそれだけの時間があれば、一部の者達は十分に反応できるだろう。

 とはいえ一般人にとっては反応すら出来ないような代物であり、友人の言葉に軽く引くホークであった。


 そんな二人は森の最奥へと進み、そして目標のモンスターを発見した。


「いたぜ。ユニコーンだ」


 額に長い角を持つ、美しい純白の馬が、泉に口を付けて水を飲んでいる。それを見つけたホークが声を上げ、ゆっくりと近付いていく。


「よーしよし、良い子だ。大人しくしてろよー……」


 アビリティ【モンスター捕獲】を発動し、ゆっくりと優しくユニコーンへと手を伸ばすホーク。彼の手が、ユニコーンの背中に触れた、その時。


「ヒヒーン!」


 ユニコーンが、嘶きと共に後ろ足を勢いよく蹴り上げる。それは必然的にユニコーンの後ろにいたホークに命中し、彼の体を空高く吹き飛ばした。


「ブルルルル……」


 まるでホークに触れられた事を嫌悪するように身震いしながら、ユニコーンは凄まじい速度で逃げ去っていく。

 そして蹴り飛ばされたホークは頭から地面に墜落し、HPを全損して死亡した。



  ◆



「畜生、あの馬野郎……」


 カズヤの蘇生魔法によって復活したホークは、ユニコーンに対する怒りに燃えていた。


「捕獲の手順が間違っていたんじゃないのか」


 そんなホークに、カズヤが冷静なツッコミを入れる。

 モンスターの捕獲には、そのモンスターの性質によって様々な手順が存在する。

 例えば、戦ってHPを減らしてやる事で、こちらの強さを認めさせる。

 或いは、戦闘を行なわずに最初から友好的に接する。

 また或いは、そのモンスターが好む料理で餌付けしたり、アイテムをプレゼントして機嫌を取る。

 モンスター毎に設定されたその条件を満たす事で、はじめて捕獲が可能になるのだ。


「いいや、そんな筈はねぇ。ちょっと前に捕獲に成功したプレイヤーは、ああやって優しく背中を撫でながら捕獲アビリティを発動させたら出来たって話だ」

「……情報の出処は」

「【アルカディア情報局】だよ。あそこの情報なら、ほぼ間違いは無いだろ」


 不満そうにホークが言う。

 表に出ていない稀少な攻略情報を扱う情報屋は、カズヤも何人か知っている。その中でもホークが挙げた【アルカディア情報局】というのは最大手ギルドであり、最も情報の精度に信頼が置ける情報屋だった。


「単純にお前の顔が好みではなかったんじゃないか」


 モンスターの中には、ときおりプレイヤーを選り好みする個体も居る。知能の高いモンスターほど、その傾向が顕著であった。

 半ば冗談混じりでカズヤが言うが、それを聞いたホークが弾かれたように顔を上げ、


「……そうか、わかったぞ!」


 と声を上げた。

 それを見て、カズヤは長年の経験から嫌な予感を感じた。

 そんな彼をよそに、ホークはWebページを開いてそれをカズヤに見せる。そこには神話・伝承におけるユニコーンについて書かれた説明文が書いてあった。


「見ろカズヤ!この説明文によると、ユニコーンってのは高い戦闘力を持ち、人には決して懐かないが、唯一処女の娘にだけは気を許すとのことだ。つまりあの馬野郎は、あの幻想的な見た目でいたいけな処女の娘に近付き、まさしく馬並の【検閲削除】で【放送禁止】をしようと企むとんでもないファッキン処女厨ロリコン野郎というわけだ」

「そうか、なんてやつらだ(棒読み)」


 嫌な予感が当たった事を半ば確信しながら、心底どうでもよさそうにカズヤが相槌を打つ。それにドヤ顔で応えながら、ホークは言った。


「というわけで処女の女の子プレイヤーを用意しよう。そうすればユニコーンの野郎もきっと釣れるはずだ」


 自信満々でそう言い放つホークに、カズヤは絶対零度の視線を向けた。


「……一応聞くが、相手にはどう説明をするつもりだ。まさか処女の女の子が必要なんだが貴方はそうですかとでも聞くつもりか」


 このまま帰ってやろうかと思うカズヤだったが、溜め息を吐きながらそう尋ねる。すると、まるで盲点だったと言わんばかりに驚いた顔で固まるホーク。


「むむむ……」

「何がむむむだ。いいから別の方法を考えるぞ」


 軌道修正を図ろうとするカズヤだったが、そこでホークがポンと手を打ち、


「そうだ、エンジェちゃんに頼むというのは……」


 などと言った瞬間、カズヤが大剣【クサナギ】を抜き放ち大上段に構えたため、ホークは慌てて口を閉ざし、両手を挙げた。


「遺言はそれで良いんだな?」

「オーケー話し合おう親友。冗談だ」

「冗談は顔と存在だけにしておけ。次は無いぞ」

「あれ、酷くね?泣いちゃうよ俺」

「酷いのはお前の頭だ」


 大剣の腹の部分で、ホークの頭を小突くカズヤ。

 その時、そんな二人に声をかける者が現れた。


「おーっす龍王様。何やってんだ、こんな所で」


 木の上から飛び降りて、彼らの前に現れたのは一言で言えば、赤い少女。

 トッププレイヤーの一人で、対人戦闘を好む、様々な武器を使いこなす女性プレイヤー。彼女の名はレッドという。


「レッドか。狩り中か?俺はこの馬鹿の手伝いだ」

「ほーう。俺はちょっと必要な素材を集めてて、さっき終わったトコだぜ。ところで手伝いって、二人して何やってんだい?」


 彼らが何をしているのかと興味を持ったレッドが、そう問いかける。


「ならば説明しよう!実はだな……」


 そんなレッドに、ホークが意気揚々と一から十まで説明を行なった。

 女性が聞けばドン引きするような内容もあったが、レッドはそれを聞くと愉快そうに笑い、


「ふーん。なら、俺がその囮をやってやろうか?」


 と言って胸を叩いた。

 その言葉を聞き、ホークはレッドをじっと観察する。


 まず顔。恐ろしい程に整っている、絶世の美女といっていいだろう。

 次に髪の毛。紅色の髪をツーサイドアップにしており、なかなか派手だ。

 体型と服装。全体的に細身だが、出ている所はしっかりと出て自己主張している。着ているのは真っ赤なドレスで、胸元は大きく開いて豊かな谷間が露わになっており、目のやり場に困るほどだ。下半身も丈が短く、健康的な太腿がむき出しになっている。身も蓋も無い言い方をすれば、かなりエロい。


 そしてホークは愚かにも、受けた印象をそのまま口に出した。


「いやー、なんか見た目ビッチっぽいし、釣れてくれないんじゃね?」


 そして彼がそう言った瞬間、レッドはノータイムで格闘アーツ【昇龍脚】を発動させ、ホークを空高く蹴り飛ばした。ホーク、本日二回目の打ち上げ。

 そしてレッドは蹴りを放ちながらアビリティ【クイックチェンジ】を発動。巨大な大鎌を装備すると、それを鎌と投擲の複合アーツ【クレセントシュート】を使い、ブーメランのように投げ放っって追撃を行なった。

 ホークは空中でどうにか体勢を立て直し、それを回避しようとする。だがその寸前。


「【ライトニングストライク】」


 カズヤがホークへ向けて電撃属性の魔法を放つ。その直撃を受け、瀕死のダメージと共に麻痺の状態異常を受けるホーク。

 身動きが出来ない状態でレッドが投げ放った鎌の直撃を受け、ホークの体が両断された。


「「グッジョブ」」


 拳を打ち合わせるレッドとカズヤ。即席ながら抜群のコンビネーションであった。

 そして、そこに加わるもう一人……正確に言うならばもう一頭。


『グッジョブ』


 それはいつの間にか戻って来ていたユニコーンであった。

 ホーク殺害の現場を見届けると、ユニコーンはレッドとカズヤの傍へと駆け寄って人語を喋り、彼らを讃えた。


「シャベッタアアアアア!?って、こいつがユニコーンか」


 突然現れ、人語を操った馬に驚いたレッドであったが流石というべきか、すぐに落ち着きを取り戻し、興味深そうにユニコーンを見つめた。


『ユニコーンだ。宜しく頼む』


 そう言って、ユニコーンはレッドへと角の生えた頭を下げる。


「どうやら、気に入られたようだな」


 レッドにそう声をかけるカズヤの後ろには、再度蘇生されたホークの姿もある。


「ひでぇオーバーキルだったぜ……つーかカズヤ、何でお前まで追撃入れた」


 ぐったりした様子でぼやくホーク。そんな彼に、カズヤが冷たく言う。


「人に向かっていきなりビッチなどと言う奴があるか、このサノバビッチが。自業自得だ。俺ですらそんな酷い事は言わない」

「言った!今言ったよ!?」

「俺のログには何も無いな」


 文句を言うホークをからかうカズヤ。これも彼らなりのコミュニケーションなのだろう。

 そんな彼らを横目に、ユニコーンがレッドに言う。


『強く勇ましき少女よ。先ほど見せた技の冴えは見事だった。私は貴女と共に行きたい』

「んー……そう言われて悪い気はしねーけど、俺テイミングスキルなんて持ってないぜ?乗馬なら現実リアルで経験あるし、得意だけどよ」


 そんな困った様子のレッドに、カズヤが声をかける。


「習得してみるのも良いんじゃないか?ユニコーンに気に入られる程だ、素質はあると思うぞ」

「そうか?まあ、アンタがそう言うなら、覚えてみるか。そのかわり、今度色々教えてくれよ」

「ああ、覚えておく」


 レッドがスキルウィンドウを操作し、スキル枠の拡張と新規スキル【テイミング】の習得を行なった。既に多くのスキルを習得する事もあって大量の経験値が消費されるが、レッドは迷わずに決定ボタンを押した。


「ハハッ、昨日と今日の狩りで入手した経験値が全部吹っ飛んだぜ。ここまでしたんだから、せいぜい役に立ってくれよ?」


 そう言いながら、レッドが覚えたばかりの【モンスター捕獲】アビリティを発動させ、ユニコーンに触れる。


『その期待に応えられるよう、努力しよう。宜しく頼む』


 こうして、ユニコーンがレッドのテイミングモンスターとなった。



  ◆



「あのー、ところでちょっといいっすか?」


 ホークがおずおずと手を挙げ、彼に視線が集まる。それを受けて、ホークが質問を投げかけた。


「さっき俺が捕獲しようとしたら蹴られた訳だけど、何で俺だとダメだったんですかね?やっぱ男だから?」

『違う』


 彼の質問を受け、ユニコーンが答えを口にした。


『理由は単純にお前の力量が未熟だからだ。我らは自分よりも弱い者には従わない。少なくとも、独力でこの森を抜けられないようでは話にならぬ』


 実に単純明快な理由であった。ホークはユニコーンに認められるために必要なステータスを満たしていない状態でテイミングを行なおうとした為、抵抗されたのだ。


「そ、そうか……じゃあ望みはある訳だな!良かったぜ……」


 ユニコーンが示した答えを聞き、ほっと一息つくホークだった。

 だが、そんな彼をユニコーンはばっさりと切り捨てる。


『だがそれ以外にも、お前からはよこしまな心が感じられる。我々は別に清らかな乙女にのみ懐くわけではないが、それでも不純な心の持ち主を主と仰ぐのはお断りだ』


「……おいホーク。そういえばお前、どうして突然ユニコーンを捕獲したいなどと言い出した?」


 ユニコーンの言葉に固まるホークに絶対零度の視線を向け、そう問い詰めるカズヤ。

 ホークはそれを受け、気まずそうに目を逸らしながらその理由を述べる。


「い、いやぁ実はさ、【戦乙女】の子たちがね、幻獣の森の奥に出るユニコーンって恰好いいよねー、乗ってみたいなー的な事を話してるのを聞いてさぁ。ならユニコーンをテイムできればお近付きになれるかなー、なんて思った次第で……ハハハ」


 ちなみに彼の台詞にあったギルド【戦乙女】とは、女性のみが在籍するギルドであり、構成メンバーには美女・美少女が多く存在している男子憧れの女性の園である。どこぞのおっさんは自由に出入りしていたりもするが基本的には男子禁制であり、彼女達とお近付きになりたいと思っている男性プレイヤーは多かった。


「……どうせそんな事だろうと思ったよ」


 呆れた様子で溜め息を吐くカズヤ。そんな彼に、ユニコーンが声をかけた。


『そちらの貴方は卓越した実力の持ち主であり、また優れた魔物使いであるとお見受けします。神龍族の子が懐く程の方であれば、是非とも我らの里へとご案内したい』


 ユニコーンがそう言い、カズヤが頷く。するとガサガサと音を立てながら繁みが揺れ、そこから様々な幻獣モンスターが姿を現した。


『お前達、私はこれより赤き髪の乙女と共に行く。ゆえに私に代わり、この御方をご案内せよ』


 幻獣モンスター達は頷くと、カズヤを先導するように、ゆっくりと歩き出した。


「という事らしい。行ってくる」

「おう、またなー。うーん、座り心地はイマイチだな。おっさんに鞍とか手綱を作って貰うか」


 幻獣達の後ろに続くカズヤ。レッドはユニコーンの背に飛び乗り、駆けて行った。

 最後に、ホークがカズヤの背中に声をかける。


「あーっと、悪かったなカズヤ。無駄骨に付き合わせちまって」

「別に構わない。見ての通り収穫はあった。それと結果的にお前のユニコーン捕獲は失敗したので依頼の報酬はいらん」

「……やっぱお前イイ奴だわ。じゃ、俺はいつかユニコーンを捕獲する為に修行してくるぜっ」

「まだ諦めてなかったのか……」

「あんな風に言われたまま終われるかっての!すぐに見返してやるから、まあ見てろよ。またな!」


 そう言い残し、ホークは去っていった。

 前向きな奴だ。後はもう少し、考えて行動するようになればいいのだが。

 そう思いながら、カズヤは幻獣達の後に続いて歩き出した。


 この後、カズヤは隠しエリア【幻獣族の隠れ里】へと案内され、そこで一頭の上位幻獣モンスター【キリン】を譲り受けた。ユニコーン同様に、額に角が生えた黄金色に輝く毛並を持った大型の馬だ。また、彼の地にてカズヤに付き従うモンスター達は、幻獣達との交流によって新たな力を得る。

 こうして龍王カズヤは新たなる力と知己を得て、更なる飛躍を果たす事になるのだが……それはまた別のお話である。

【ホークについて】

不愛想なカズヤの相棒枠という事で、逆に底抜けに明るい三枚目というコンセプト。

おかげで書いてるうちに暴走を始め、物凄い残念なイケメンが誕生した。

おっさんや不死鳥とはまた別方向に突き抜けたアホの子。

ちなみにカズヤとは幼馴染であり、ネットカフェ「クローバー」の店員。おっさんとも顔馴染み。


【カズヤについて】

前述のホークとの掛け合いがメイン。

普段と違って毒舌ツッコミ全開ですが、これは彼が、おっさんの事はなんだかんだ言って尊敬していたりするので、本編でおっさんを相手にしている時はあまり毒を吐いたりしない為です。

妹や父親やホークを相手にしている時の方が素の状態。


【進捗について】

番外編幾つか執筆中&第三部はプロット7割くらい完成。

一周年記念日(12月5日)には始められそう。

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