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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第一部 おっさん大地に立つ
5/140

謎のおっさん、武器を作る

「ういーっす」


 適当な挨拶をしながら、おっさんが作業場に入る。


「ちわー」

「おっさんチーッス」


 すると周囲で作業中の生産者達から、返事が返ってくる。彼らは皆それぞれ、習得した生産スキルを使用しているが、サービス開始直後だけあって、どうにも上手くいっていないようだ。


 このゲームの生産は、レシピを選んで材料入れて自動で完成……といった、簡単な仕様では無い。

 どの材料をどのタイミングで、どれくらい入れるか。全てプレイヤーが判断し、加工もプレイヤー自身の手で行なう。そして、それによって出来る物や、完成品の品質は大きく変わる。

 武器や防具であれば、形状や、各部分ごとにどんな素材を使うかも、細かく選択できる。

 自由度が非常に高い反面、難易度も実際高い。

 おっさんもβテスト当時は数多くの失敗を重ね、試行錯誤したものだ。


 おっさんは溶鉱炉の前に立ち、【精錬】アビリティを使用する。


 素材を投入するためのウィンドウが出現し、おっさんは選択した素材をその中へ移動させた。

 そして、その後に材料の比率を選択。


 選択したのは、銀の延べ棒(シルバーインゴット)銅の延べ棒(カッパーインゴット)

 通常、精錬とは鉱石から不純物を取り除き、インゴットにする作業になる。

 だが、おっさんが今やっているように、複数の金属により合金を作る事も可能なのだ。

 現時点でこれを知る者は一部のβテスターのみである。とは言っても、現在おっさんがやっている事を覗き見て、周囲のプレイヤーは今まさにそれを学習しているのだが。


 おっさんは銀の中に銅を僅かに混ぜる事で、銀の強度を増そうと考えた。

 うろ覚えの知識ではあるが、純銀は化学変化しやすく、強度にも不安が残る。

 その為、合金を使ってその問題を解決しようとした。


 更におっさんは、完成直前のタイミングで、先ほど入手した聖水を投入する。

 そして少しだけ待つと……新たなインゴットが完成する。


 それは一見、先ほど素材に使ったシルバーインゴットのように見える。

 しかし、よく見れば精錬前のそれよりも綺麗な白色をしている。

 更には、インゴット全体が青白い、聖なる輝きに包まれているではないか。


――――――――――――――――――――――――――――――

 【聖銀のインゴット】


 種別 素材(金属)

 品質 ★×7

 属性 神聖


 【解説】

 祝福された銀の延べ棒

――――――――――――――――――――――――――――――


 ニヤリ。

 おっさんは満足げな笑みを浮かべる。

 だが、未だ品質は★×7。まだまだ改良の余地はありそうだ。

 スキルを鍛えると共に、素材も更に見直さなければなるまい。


 だが、現時点ではこれで満足としておこう。

 おっさんはこの聖銀を素材に、新たな武器を作り出す。


 おっさんは前もって作っておいた図面を取り出す。

 NPC商店でも武器や防具の図面は売っているが、そんな物はおっさんに言わせれば、素人ビギナーの練習用に過ぎない。

 折角、形状も自分で選べるのだ。そこはしっかりとこだわらねばなるまい。

 おっさんはNPCから【白紙の図面】を購入し、自らの手で図面を引いていたのだ。


 おっさんは聖銀のインゴットを、鍛冶用ハンマーで叩いていく。

 ハンマーを振るう腕は力強く、それでいて繊細だ。

 その強面に似合わぬ繊細さ、精密さをもって、物言わぬ金属に命を吹き込む。


 「く」の字に湾曲し、その内側に刃を持つ独特な形状。

 肉厚の刃部分は、短剣ナイフでありながら力強さを感じさせ、それでいて短剣特有の鋭利さも併せ持つ。


 ククリ。あるいはグルカナイフ。そう呼ばれる短剣である。

 かつてグルカ王朝の兵士達が、白兵戦で使い猛威を振るった武器。また狩猟や収穫、家事などにも使われた、彼らの日常生活に根ざした汎用性の高い刃物だ。

 戦闘以外にも使いでがありそうだ。


 更におっさんは【細工】スキル内の【金属細工】アビリティを併用。

 刃の付け根に「チョー」と呼ばれる独特の細工を施した。ククリである以上、これは欠かせない。おっさんのこだわりである。


 完成したそれは、刀身がうっすらと青白く光っていた。

 最後に、柄に革を巻く。友人のの裁縫職人に加工して貰ったイノシシの革だ。

 丁寧に巻いていき、握りを確認。おっさんは、確かな手応えを感じた。


「良い出来だぜ……」


 左手に握った短剣は、吸い付くように手に馴染む。

 間違いなく、現時点で作れる最高傑作ができた。

 周りの職人PC達から「おぉ~……」と歓声が上がる。


――――――――――――――――――――――――――――――

 【ホーリーシルバーククリ】

 

 種別 短剣

 品質 ★×7(精巧級)

 素材 聖銀

 耐久度 17/17

 製作者 謎のおっさん


 【装備効果】

 攻撃力:切断+32 刺突+30

 耐性:暗黒+10%


 【付与効果】

 [聖刃3]物理攻撃時、神聖属性の追加ダメージ Lv3

 [炎刃2]物理攻撃時、火炎属性の追加ダメージ Lv2

 [幸運2]装備中、アイテムドロップ率上昇 Lv2

 [精密2]クリティカル率+10%


 【解説】

 「く」の字に曲がった刃を持つ、独特な形状を持つ短剣。

 グルカナイフとも呼ばれる。

 扱いは少し難しいが、様々な用途に使える。

 高品質な聖銀を使って丁寧に作られた良品。

――――――――――――――――――――――――――――――


「……よし!」


 品質は★×7止まりだが、高望みはすまい。

 ここから先は鍛冶スキルを更に上げ、腕を磨いてからだ。8から上はそう簡単に作れる領域にはないのだ。

 制作時に素材の特性によって付与されたり、品質によってランダムで付与されたりする特殊効果も上々。アイテムドロップ率の増加に、神聖属性に加えて火炎属性の追加ダメージ。特にアンデッドへの効果は絶大だろう。

 十分だ。暫くの間はこれ一本で戦える。


  ◆


 次は【細工】スキルを使ってのアクセサリ作りだ。

 銅や、銅と錫を混ぜて作った青銅を使用して練習用の指輪を幾つか作る。

 最も出来の良い物を自分で使い、残りは売却する事にした。


――――――――――――――――――――――――――――――

 【青銅の指輪】


 種別 アクセサリ(指輪)

 品質 ★×5

 素材 青銅

 耐久度 6/6

 製作者 謎のおっさん


 【装備効果】

 STR +3 AGI +2


 【解説】

 青銅で作られた平凡な指輪。

――――――――――――――――――――――――――――――


 指輪を装備すると、おっさんは生産設備【魔法工作機】へと向かった。

 旋盤やフライス盤に似た工作機械。

 【魔法工学マジッククラフト】スキルを使用する為には、この機械が必要になる。


 魔法工学は、魔導銃のような魔法と科学を混ぜ合わせたようなアイテムの作成に使うスキルだ。

 弾丸の作成や銃の修理も行える為、魔導銃使いには欠かせないスキルであろう。


 おっさんは鉛と聖銀を、通常用の鉛弾と、聖属性を持つ聖銀弾へと加工する。

 そして、出来上がった弾を、空の弾倉マガジンへと入れていく。

 鉛と聖銀、それぞれの弾倉が複数出来上がった。



 最後に、おっさんは銃の作成へと移る。


 インゴットを工作機械にかけて、小さなボルトやナット、歯車、スプリング、銃身にグリップと、様々な部品を作ってゆく。

 そして、それらを工具袋から取り出したスパナやドライバーで組み立てる。

 魔導機械の動力であり、必須である【魔石】も組み込んだ。最下級の品だが、サービスが始まったばかりの現時点では、それでさえ希少品だ。


 魔石はたまに採掘で採れたり、一部のモンスターのドロップ品として手に入る。

 高品質の魔石は現時点では非常に稀少レアで、入手に苦労しそうである。すなわち、高品質な魔導機械を作るには、とてもお金がかかるという事だ。

 弾薬費もかかるし、そういった理由で銃使いは序盤が厳しい。そのため、銃はいまひとつ不人気な武器であった。

 ただ、おっさんは自分で作る技術や、稀少な材料でも自分で取ってこれる戦闘力を持っているため、そういったデメリットは大した問題ではなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――

 【試作型魔導銃・拳銃型】


 種別 魔導銃(拳銃型)

 品質 ★×3

 素材 鉄

 耐久度 10/10

 製作者 謎のおっさん


 【装備効果】

 物理攻撃力 +9


 【解説】

 鉄製の拳銃型魔導銃。

 魔石に込められた魔力で弾丸を発射する魔導兵器だ。

 簡素な構造であり、品質は今ひとつ。

――――――――――――――――――――――――――――――

 【鉛弾の弾倉】


 種別 弾丸

 品質 ★×5

 素材 鉛

 製作者 謎のおっさん


 【装備効果】

 装弾時、物理攻撃力+5

 装填数25発。


 【解説】

 魔導銃のリロードに使用する弾倉。拳銃型専用。

 無属性の基本的な弾丸。

――――――――――――――――――――――――――――――

 【聖銀弾の弾倉】


 種別 弾丸

 品質 ★×5

 素材 聖銀

 製作者 謎のおっさん


 【装備効果】

 装弾時、物理攻撃力+3

 神聖属性の追加ダメージ LV1

 装填数25発。


 【解説】

 魔導銃のリロードに使用する弾倉。拳銃型専用。

 威力はやや低いが神聖属性の追加ダメージを与える事ができる。

――――――――――――――――――――――――――――――


 どうにも、いまひとつの出来であった。

 初作品ならばこんな物か、と溜め息をつくおっさん。

 現実の銃とはだいぶ構造が異なる為、どうにも勝手がわからない。素材や設計段階からの見直しが必要だろう。

 部品の精度も荒いため、もっと精密な工作機械が欲しいところである。

 この工房内にある魔法工作機も、内部に取り付けてある魔石は下級品であり、作りもイマイチだ。


 世界観的にも、【魔法工学】はまだ世に出てあまり時間が経っていない、発展途上の技術であるためPC・NPC問わず技術者の絶対数も少なく、なかなか良い品は作れていないそうだ。

 鍛冶の方とは異なり、こちらはだいぶ難航しそうな予感がするおっさんだった。

 だが、発展途上という事は、己の手で開拓する余地が大いにあるという事だ。おっさんはやる気に満ちていた。


 さて、この完成品の試作型魔導銃。

 出来は今ひとつだが、初心者用魔導銃に比べれば大分マシな性能ではある。

 とりあえずコレを使用しながら、更なる改良を重ねる事にした。


「先にあがるぜ。お疲れさん」


 他の職人PC達に挨拶をして、おっさんは作業場を出る。

 新たな狩場で新兵器の試験と、次の品を作る素材を集めるために。

金属とか武器については割とうろ覚えだったりするから、間違ってたらゴメンなんだぜ!

海外に居るせいで資料が不足しておってのう……

だったらもっとぼかして書けよ、とか書き上げた後に思った。

(ゝω・)てへぺろ←精一杯の誤魔化し


(2015/2/15 加筆修正)

(2015/2/25 表記修正)

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