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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第二部 おっさん荒野を駆ける
48/140

25.謎のおっさん、ゴリ押す


 おっさんがそれ(・・)を見つけたのは偶然だった。

 火山洞窟を一人で探索し、採集を終えて拠点に戻ろうとしたおっさんは、たまたま通りかかった場所で違和感を感じた。


「ん……?」


 周囲を見回す。今来た道の他に二つ、合計三つの道が合流する地点であり、広い空間が出来ている。モンスターの姿は無く、不自然なほど静かだ。

 部屋の北・南・東側にそれぞれ一本ずつ道。

 西側は洞窟の壁に沿って溶岩の滝が流れており、その下には真っ赤な溶岩の池が出来ていた。不用意に触れれば大ダメージを負うであろう。


「何かあるな」


 おっさんはマップウィンドウを開いた。

 この数日で、火山洞窟内の地図は七割ほど完成していた。おっさんはその地図を見て、


「この部屋の西側に、不自然な空白地帯がある」


 火山洞窟のマップはまるで蜘蛛の巣のように入り組んでいて、非常に迷いやすい構造だ。だが、その地図の中に一点だけ、何もない空間があった。それが、この部屋の西側だ。


 おっさんは目をこらして、溶岩の滝の向こう側を見つめた。

 するとぼんやりとだが、うっすらと扉のような物が見える。


(なるほど。さっきの違和感の正体はこれか)


 おっさんは納得したように頷くと、迷う事なく溶岩の池へ向かって跳んだ。

 一足飛びに溶岩の池の半分ほどまで跳躍したおっさんは、更に軽業スキルのアーツ【エアリアルステップ】を師用して空中で二段ジャンプをする。

 更におっさんは手にした魔導銃剣で【フリーズショット】を放ち、溶岩の一部を凍らせた。その氷はすぐに周囲の熱で溶けてしまうが、おっさんにとっては一瞬だけあれば十分である。

 氷の足場を踏み台にして、おっさんは火山の滝へと突っ込んだ。

 【シャドウステップ】による無敵時間を利用して溶岩の滝をすり抜けた彼の目の前には、予想通りに隠し通路があった。

 そして、その奥には巨大な扉が。


 おっさんはその扉に手をかけ、開けようとする。しかし重厚な金属の扉はぴくりとも動かない。

 施錠されているのか。そう思い、ピッキングツールを取り出すおっさんだったが、鍵穴らしき物も見つからなかった。

 ならば如何にしてこの扉を開けるのか。おっさんが思案し始めたその時、おっさんの目の前、空中に文字列が浮かび上がった。


 『汝にこの扉を開く資格なし。断片を全て集めよ』


 この扉は、隠しクエストの条件を満たす事で開くタイプの扉であった。そのクエストを進めた者にはこの場所のヒントが提示され、扉を開く資格が与えられる。

 だがおっさんはそんなクエストを受けておらず、この場所もクエストとは無関係に見つけた為、扉を開く事はできないようだ。


「ふん!」


 だが突如、おっさんは全力で扉に蹴りを叩き込んだ。本職の方もビックリなほど見事なヤクザ・キックである。ガンッ!と音が鳴り響き、扉がわずかに揺れる。


 『汝にこの扉を開く資格なし。断片を全て集めよ』


 しかし、扉は再び無機質なメッセージを表示するのみであった。

 それに対し、おっさんは更なる暴挙に出た。

 取り出したるは――彼の体よりも巨大な魔導銃剣。決戦兵器、メメント・モリ。


「真っ二つだ!」


 おっさんはメメント・モリに【大魔弾:エクスカリバー】を装填し、トリガーを引く。すると、その銃口より長大な、黄金の光の刃が形成される。

 おっさんはメメント・モリを振り回し、光の刃で扉を斬り開いた。


 『汝にこの扉を開く資格なし……』


 無残に切り裂かれた扉は、それでもなお同じメッセージを繰り返す。

 しかし、おっさんはフン、と鼻を鳴らしてそれを一蹴した。


「しゃらくせぇ。俺の行く先を決めていいのは俺だけだぜ。止めたきゃ力づくで止めてみやがれってんだ」


 傲慢にもそう言い放ち、おっさんは扉の奥へと向かうのだった。

必殺脳筋ショートカット。

TRPGでゲームマスターをやった事のある方には、似たような事をやられた経験のある方も居るかもしれません。

私はあります。

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