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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第二部 おっさん荒野を駆ける
36/140

15.謎のおっさん、狙い撃つ(2)

一挙二話掲載の2個目です。(1)をまだ読んでいない方は先にそちらをどうぞ。


今回、ちょっと物騒な会話があります。

あと、物凄い今更感がありますが、私は【残酷な描写あり】タグを(相当がんばってマイルドに抑えてるので大丈夫だと思いますが)別に保険とかではなく普通にそのまんまの意味で使ってますのでご注意ください。

基本ギャグ路線ですので(リアルでの)人死には絶対に描写しないと断言しますが、ゲーム内ではPC・NPC問わず割と容赦なく死にます。ゲームなのでグロ・流血表現はありませんし、すぐに生き返りますが。

「やはり銃は良い」


 容赦なく盗賊達を狙撃しながら、おっさんが呟いた。


「俺は銃こそ最も優れた武器だと思ってる。レッド、それが何故だかわかるかい」


 おっさんの問いかけに、鼻歌交じりで帽子を被った盗賊の頭を撃ち抜いたレッドが答える。ポイント3点ゲット。


「そーだなァ……一番に思いつくのは射程かね。遠くから敵を攻撃できるって事は、それだけで大きなアドバンテージを得られるよなァ」

「当然だな。だがそれだけじゃ不十分だ」


 粗雑な兜を被った盗賊団の幹部、その心臓を正確に狙い撃ったおっさんが頷いた。ポイント5点ゲット。


「現実の話が混ざるが、まず威力。それから剣や弓と違って訓練に必要な時間が少なくて済む。つまり銃さえあれば、銃兵は大量に動員する事が簡単だって事だ。戦場で銃が主役になったのはそこが一番大きいんじゃねェか?後は生産性・整備性」

「おう、そうだな。それもある。だが一番の理由はそれじゃねえ」

「ふむ……じゃあ、その理由ってのは?……っと、ハゲ撃っちまった」


 問いかけながらおっさんに目線を向けるレッド。その拍子に狙いがずれてしまったが、結果的に弾丸は狙ったのとは別の盗賊に命中、ポイント1点ゲット。


「それはな、殺意の簡略化だ」


 高ポイントの帽子や兜を装備している盗賊を優先して狙いながら、おっさんが語る。


「武器ってのは殺すための物だ。剣も、槍も、斧も、弓も、あらゆる武器は殺すために作られ、殺すために使われる。

 だがな……人でも獣でも、何かを殺すってのはえらく大変な事だ。ナイフで刺したり斧で頭をカチ割ったり、そういった行為にはとてつもない労力が要る。相手が人なら尚更よ」

「まァ……そうだろうな。殺意を込めて迷わず、全力で武器を振るう必要があるからな」

「ところが銃ときたらどうだい。離れた場所から指先に軽く力を込めて引鉄を引く。たったそれだけで殺せちまう。返り血も付かねぇ。手に感触も残らねぇ。何ともあっさりとしたモンだ。近付いて直接刺し殺したりするのと比べて、【殺す】って事への敷居が妙に低くなると思わねぇかい」

「成る程。だから簡略化か」

「そういうこった。実に効率的だろう」

「俺としちゃァ、ちょいと物足りねェけどな」


 次々と盗賊の急所をスナイパーライフルで狙撃しつつ物騒な話をする二人組。片や凶悪な目つきの中年男性。片や真っ赤なローブで全身を覆った不審人物。

 余人が見れば一目散に逃げ出すであろう事間違いなしである。


「ただ一つ問題を挙げるなら……あんまり簡略化・効率化し過ぎたせいで、罪悪感やら何やらが麻痺して、殺す事に対して何の感情も抱かなくなりやすい。他の武器に比べてずっと、な。

 そうなったらもう機械と一緒だ。精々そうならねぇように注意するこった」


 おっさんによる忠告のような物を聞くと、レッドは狙撃の手を休め、右手でフードの上から頭を掻いた。


「……悪いねェなんか、心配かけちまったっぽい?」

「どうにも元気なさそうなんでな、飽きてきてるんじゃねぇかと思ってよ。ま、余計なお世話だったかもしれねぇがな」


 普段ならばPK狩りだ、盗賊狩りだ、決闘だとハイテンションで一人で暴れ回っているレッドが、今日はどうも大人しいのが、おっさんは気になっていた。


「別に飽きちゃぁいないさ。まあ……確かに最近は、PKとかブッ殺してもいまいち気分が乗らねぇかもしれねェけどさ」


 レッドはそう言って溜息を吐き、再びライフルを構えた。


「そうだな……一つアドバイスをやろうか。さっき俺が言うような症状にならねぇようにする為の方法だ。ま、傭兵やってるダチからの受け売りなんだがな」

「……へぇ?どうやるんだい」

「殺した事への罪悪感。後悔。そういった物を吐き出してみろ。『あーあ、またやっちまったぜ畜生』ってな。別にそんな事思ってなくても、フリ(・・)だけでいい。そうするだけでも結構、人間らしく居られるらしいぜ」


 そう言っておっさんは、こちらへ向かってくる盗賊の頭に鉛弾をブチ込んで倒す。そしてその後に、思いっきり顔をしかめて、


「ファック!……ってな」


 そう言って笑った。

 それを見てレッドもまた、狙撃銃で盗賊を射殺して……フードの下でしかめっ面を作る。


「ファック!」

「おう、そうだ。ファック!」

「ファック!」

「ファック!」


 ファックファック言いながら狙撃銃で盗賊を射殺しまくる怪しげな二人組によって、盗賊団は壊滅した。対戦シューティングゲームの結果は、僅かな差でおっさんが勝利。

 余談だが、それを見た不幸な通りすがりのプレイヤーが軽く恐慌状態に陥って遁走した。


「つーかよォ、聞いてくれよおっさん。最近PKの連中が冷てーんだ。キモいだのヤンホモ怖いですだのと言いたい放題だし、なかなか相手してくれなくなったし。俺はこんなに皆の事を愛しているっていうのに」


 ストレスを解消して調子を取り戻してきたのか、レッドはおっさんに愚痴を吐き始めた。


「ガハハ、愛ときたか」

「そう、俺は万物全てを愛しているといっても過言じゃない。だが皆は俺を愛してくれない。ゆえに愛は怒りと憎しみに変わり、殺意となる。愛しているが、だが同時に憎悪しているという二律背反。愛しているけど殺す。いやむしろ愛ゆえに殺す?」

「どう見てもヤンデレの発想じゃねーかwww」

「あるぇー?マジで?」


 レッドの愚痴を、おっさんは笑いながら聞く。否定したり呆れたりせずに聞いてくれる事が、レッドにはありがたかった。


「というわけでおっさん、PK達に避けられないようにする良いアイディアは無ェかい?」


 レッドのその問いに、おっさんは少し考え込んだ後に、レッドを指さした。


「そのローブ脱げば、向こうから寄ってくるんじゃねぇか」

「……えっ」


 レッドのトレードマークとも言える、全身を覆い隠す真っ赤なローブ。おっさんはそれを脱げという。そしてそうすれば、PK達が向こうから寄ってくるとも。その発言の意図とは一体?


「オイオイおっさん、意味わかんねェって。俺様のハンサム美少年フェイスが気になるのはわかるけどさ、そんなモン晒した所で、釣れんのはホモと年下好きのお姉様くらいだろォ?」


 そう言ってゲラゲラと笑うレッドは、おっさんの次の一言で凍りついた。


「いやお前……中身、女だろ?」

これ(レッドの中身)予想できた人って居るんですかね(笑)

詳細は次回!

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