14.謎のおっさん、狙い撃つ(1)
「おっさーん!遊ぼうぜー!」
昼下がりの作業場にて、どかどかと足音を立ててあらわれる闖入者あり。
その人物は、身長はおおよそ165cm程度で、体型は全身を覆うローブに隠されてよくわからない。ローブにはフードが付いており、体同様に顔を覆い隠している。その色は鮮血のごとき赤。そして背中に背負った巨大な鎌により、まるで死神のような印象を見る者に与える。
その者の名はレッド。悪名高きPKK。
ここがPKの巣窟ならば「うわあああああ!レッドが出たぞおおおおお!」とパニック映画のような惨状になる所だが、職人達は彼をちらりと一瞥するだけで、特に大きな反応は無い。
どんな凶悪PKや一級廃人だろうと、作業場で暴れるのは御法度だ。そもそもそのような愚を犯すプレイヤーなど居るはずもない。
一流の生産職人達は皆、高い戦闘能力を兼ね備えている。当然だ。生産に使う素材を入手する為には、危険な場所に赴いたり、モンスターを倒して手に入れたりする必要があるからだ。このゲームは経験値さえあれば、いくらでもスキルを増やし、ステータスを伸ばす事ができる。職人とて、その気になればいくらでも戦闘関連の能力を伸ばす事ができるのだ。
そんな訳でおっさんは言うまでもなく、例えばクックは戦闘用に特別改造した包丁を二刀流で振り回すし、テツヲなどは己の打った名刀――市場に出回っていない高品質な物だ――を振るい、アンゼリカは糸で拘束したり、針を投げたり、戦闘用の人形を操って遠距離から攻撃したりする。
彼ら以外にも結構強い職人は大勢居たりする。本人に自覚はないが、トップ生産プレイヤーでありながら戦闘能力もヤバいおっさんの影響も大きい。
というわけで……ここで暴れるという事は、そんな連中が一斉に襲いかかってくるという事なのだ。
以前、「生産職人なんぞ戦闘じゃ雑魚ばかりだろ、金なんか払わねぇで脅して作らせればいいじゃねぇか」と言って襲撃してきたアホは一斉攻撃によって五秒も持たずに骨になり、その後職人たちに一切物を売って貰えなくなった。
ちなみにその男は、土下座して謝った後に職人達の元でしばらくの間下働きをしてようやく許された。現在は元気に職人生活を送っている事を付け加えておこう。
さて、そんな職人達の巣窟にレッドが襲来した。目当ては謎のおっさんだ。
「ちょっと待ってろ。俺は今忙しい」
おっさんは銃の改造を行なっていた。
これまでの戦闘データ、そして研鑽の結果手にした新技術。それから荒野で入手した様々な素材を用いて、おっさんは改良型の魔導銃剣を作り出す。
これまで同様に、拳銃に銃剣を取り付けたハイブリッドモードに加えて、射撃に特化したガンナーモードと接近戦に特化したブレードモードの三つを瞬時に切り替えられるタイプへと変更したのだ。
当然それだけではなく、様々な新機能も搭載されている。
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【ブラックライトニングⅡ】
種別 魔導銃剣
品質 ★×9
素材 魔鉄・アダマンタイト・ミスリル
銃形態 攻撃力+56 魔法攻撃力+40
STR+10 AGI+10 DEX+10 MAG+10
攻撃時、闇と雷属性の追加ダメージ Lv8
攻撃時、対象の防御力・魔法防御力を貫通 発動確率15%
この武器は変形機能を搭載している
この武器は通常の弾丸を装填できない
【解説】
魔導銃剣・ブラックライトニングの改良型。
第二世代の魔導銃剣、その記念すべき第一号。
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【クリムゾンゲイル】
種別 魔導銃剣
品質 ★×9
素材 炎鉄・ミスリル・風精石
銃形態 攻撃力+48 魔法攻撃力+48
AGI+20 MAG+20
攻撃時、火と風属性の追加ダメージ Lv10
攻撃時、対象のステータスをランダムに低下させる 発動確率10%
この武器は変形機能を搭載している
この武器は通常の弾丸を装填できない。
【解説】
火と風の属性を持つ魔導銃剣。
通常の物よりも魔法攻撃力を重視した作りになっている
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これらの魔導銃剣は、通常の弾丸を装填できず、代わりに専用の特殊なカートリッジを使用する。魔石を加工し、魔力を込めたカートリッジ。それから魔力を抽出して放つ【魔弾】。それがおっさんが新たに作った機能である。
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【カートリッジ:無の魔弾】
種別 弾薬(魔弾)
品質 ★×5
【解説】
無属性の魔弾を放つためのカートリッジ。
使用者のMAG(魔力)により威力が上昇する。
通常のマガジンとは異なり、実弾を使用しない。
込められた魔力が尽きるまで魔弾を発射可能。
魔力が尽きた場合、再度充填を行なう必要がある。
対応した装備にのみ装填可能。
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これらがおっさんが作った新作のデータになる。
おっさんはその後、弾薬を幾つか作成した後に顔を上げ、レッドへと向き直る。
「で、何しに来た。決闘か?」
おっさんの問いかけに、レッドはフードの奥でニヤリと笑う。
「いいや、今日は狩りのお誘いさ」
◆
「新作作ったのはいいが、今日は出番が無さそうだな」
「まぁまぁ、たまにはこういうのも良いじゃねェの」
おっさんのぼやきにレッドが答える。
ここは荒野の第四フィールドにある廃墟。かつては村だったが、現在は盗賊たちの住処となっている。
おっさんとレッドは二人でここに来ていた。
「それじゃ……シューティングゲームの始まりだァ」
「帽子かぶってる奴は3点、兜は5点、ハゲは1点。それ以外は2点だぜ」
彼らはそう言うと、それぞれスナイパーライフルを取り出した。
「そいつはステラの新作か。高かっただろう」
「まーね。おっさんのは自前かい?そっちも良い感じじゃねェの」
お互いの得物を一通り褒めつつ、彼らは狙撃の構えを取る。
リアルシューティングゲームの始まりだ。
さて、ここで視点を盗賊側に移してみよう。
廃墟を歩き、見張りを行なっていた盗賊の三人組がいた。
三人の盗賊達は、やる気がなさそうにだらだらと歩きながら、見張りの当番になった事を愚痴る。どうせ襲撃者など居ないだろうと高を括りながら、形だけの見張りをこなす。
そんな時に突然、前を歩いていた二人――仮に盗賊A・Bとしよう――の頭が弾け飛んだ。
「あ……あ……?」
突然の出来事に混乱する盗賊C。
顔は青ざめ、足ががくがくと震えてその場にへたり込む。
銃で撃たれた。一体どこから。
混乱しながらも彼は、仲間を呼ぼうと声を張り上げようとして――同時に二発の弾丸を頭に受けて死んだ。
盗賊Cは一撃で頭を正確に撃ち抜かれ、その場に倒れる。そしてその体は四角いポリゴンとなって消滅し、虚空に消えた。
「「ナイスショット」」
二人はお互いの腕を称えあった。
新作作ったのはいいですが出番はもう少し先になります。
魔弾はビームライフル的な感じで魔力を銃で飛ばす感じ。試作ビームライフルは魔石内蔵型でしたが、外付けカートリッジを採用した事で汎用性や拡張性を伸ばしました。
あとレッドはとても動かしやすいです。むしろ書いてるうちに勝手に動く。




