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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第二部 おっさん荒野を駆ける
28/140

8.謎のおっさん、牛を狩る(2)

 その後も良いペースで狩りを続け、暴れ牛を数十匹討伐したおっさん達。

 彼らの手元には狩りの結果、入手したドロップアイテムの山。

 牛の皮や角、骨、尻尾といったアイテム、そして大量の牛肉である。


「それじゃあ……飯にするか」


 おっさんの言葉に目を輝かせる美少女二人。

 元気っ子のナナは勿論、アーニャも牛肉は好きだ。牛だけでなく鶏や豚も……とにかく魚や野菜よりも肉が好きなお年頃である。大人しい顔して肉食系女子なのだ。


 おっさんが取り出したのは鉄板だ。

 それに油を引き、火で熱した鉄板に肉を配置する。

 肉が焼ける音と匂い。良い感じに焼けたら、それを各々の取り皿へ。

 料理人PC達が開発した焼肉用のタレを肉に付ける。

 炊きたてのホカホカご飯の上にその肉を置き、余分に付いたタレを落とす。

 肉を食う。

 タレや肉汁が染み込んだご飯をかっ込む。

 キンキンに冷えた麦茶を喉に流し込む。ビールがあれば最高だが、狩りの途中だしナナとアーニャは未成年ゆえ、お茶で我慢だ。

 以下ループ。

 実に男臭くて頭の悪い、栄養バランス等一切考えていない食事だ。

 野菜とかも一緒に食べるべきじゃないですかね君達。


「そんな軟弱な物は不要です!」


 拳を握りしめてアーニャが叫んだ。

 アッハイ、すみません。ところで口元にご飯粒がついてますよ。

 まあ兎に角そういうわけで、よく晴れた青空の下で肉を焼き、食べる。

 その開放感の前には細かい事などどうでも良いのである。


 さて、そんなこんなで食事を終えて、村への帰路を辿る三人。

 彼らの左側面より、猛然と襲いかかる一団があった。

 敵襲だ。


 それは人間であった。

 とは言っても、彼らはPC(プレイヤー)ではない。

 粗末な服装に身を包んだNPC達だ。

 ただ彼らは一般的なNPCとは異なり、エネミーNPCと呼ばれる。彼らはPCや通常のNPCに対して敵対的な行動を取る、モンスターのような存在である。

 逆に悪名値が高い犯罪者PCに対しては、友好的に接して来る者も多いのだが。


 彼らの正体は山賊。このエリアの村を荒らし、またPCに対しても徒党を組んで襲いかかってくる悪党共だ。

 山賊達は三名の冒険者を補足し、彼らに対して略奪および殺害を行ない、その勢いのまま村へと雪崩込むつもりであった。

 だが相手はおっさんである。無謀にも程があるというものだ。

 本来であれば山賊達は一分も経たずに逆に身包みを剥がされた後に、蜂の巣になるか八つ裂きにされるかしておっさんの経験値になる筈だった。

 しかし、今回に限ってはそうはならなかった。


「何だ……?」


 最初に気づいたのはおっさんで、ナナとアーニャも遅れて気付く。

 ドドドドドドド……!と、地響きが聞こえると共に感じる強烈な殺気。


 三人がそちらを向くと、遠目からでもはっきりと見える巨体がこちらへ向かって迫ってくるのが見えた。それは先ほどまで狩っていた暴れ牛とそっくりな個体。

 ただし、その大きさは通常の暴れ牛とは比較にならない。

 推定、全高8メートルほどか。


「ちょっ、フィールドボス!?」

「ふぇぇ……山賊さん達もこっちに来てますよぉ……」


 前方から迫る山賊の群れ。後方からはフィールドボス。

 不運にも、三人は別々の敵に挟み撃ちを受ける形となった。


「まずは山賊共からだ!」


 おっさんは瞬時に決断する。

 まずは与し易い山賊達を素早く片付けた後にフィールドボスを相手にする事に決めたおっさんは、即座に二挺の魔導銃剣を抜き放ち、山賊達に向かって駆ける。

 ナナとアーニャも戸惑いながらも、おっさんに続いて走り出した。


 おっさんを先頭に、三人は山賊の群れに突っ込もうとする。

 だが、その寸前に群れの中から飛び出し、おっさんの攻撃を受け止める男達が数人。


「糞が!気をつけろ!PK共が混じってやがるぞ!」


 山賊NPCに混じって、悪名高いPK達が十人前後。

 そのうちの何人かは、βテストの時に顔を合わせ、戦った記憶がおっさんにはあった。無論その時は返り討ちにしたのだが。


「イヤッッハァー!その首貰ったぜぇ!」


 PK達のリーダー格の男が巨大なギロチンアックスを振り回す。それと同時に、他のPKや山賊達も各々の武器を構えながら襲いかかってきた。

 彼自身が作り出した優れた装備品や莫大な額のゴールド。それらを持つおっさんを殺害し、彼の持つアイテムを略奪すれば、大きな戦力強化が望める。

 更に理不尽な程の強さと高い名声を持つおっさんを殺したとあれば、PKとして箔が付くというものだ。彼らはこの千載一遇の機会を前に奮い立った。


「幾らアンタでも、これだけの人数を捌ききれるかァ!?足手纏いを二人も抱えてよォ!あぁ!?」


 PKの一人がおっさんを攻撃しながら野次を飛ばす。

 おっさんはそれに対し、冷笑と銃弾で応えた。


「俺は優しいからな……頭の悪い勘違い野郎、つまりお前達にもわかるように、二つほど訂正してやろうか」


 おっさんに対し、無数の武器が一斉に襲いかかる。逃げ場無し!

 否、逃げる必要など無し!

 おっさんは左右の魔導銃剣から次々に弾を連射した。それらは武器を弾き逸らし、質の悪い武器を撃ち砕き、あるいは持ち手の指を正確に撃ち抜いた。


「まず一つ目。どうやらお目出度い事に俺に勝てるとか考えてるようだが……てめぇら如き、何百人来たところで俺にゃ勝てねぇよ」


 諦めずにPKや山賊達はおっさんに向かって武器を振るう。

 しかしそれらは全て、おっさんの体に届く前に、銃弾によって全て撃ち落とされる。同時に攻撃に意識が向くあまり、隙だらけになった敵の眉間を的確に撃ち抜く。


「遅ぇ。弱ぇ。そして単純すぎらぁ。そんな攻撃、見てから撃ち落とせるぜ?こいつが俺のとっておき、おっさん七大兵器の最後の一つ、【弾幕結界】だ」


 凄まじい動体視力と反射神経、戦闘の中で培った勘や洞察力。それらを総動員して、迎撃に専念する事であらゆる攻撃を撃ち落とした上で反撃する。

 それこそがおっさんの最大の奥義。【矢落し】等はこれの応用に過ぎない。


「そしてもう一つだが……誰が足手纏いだって?」


 おっさんは横目で少女達を見る。

 ナナは左右の双剣で敵の攻撃を払い落とし、あるいは回避しながら素早く反撃を加えている。まだまだ技は荒削りだが、スピードと手数、そして思い切りの良さでカバーしている。

 クリーンヒットによる致命傷は避けてはいるが、それでもおっさんのように完全に迎撃するとはいかず、少しずつダメージは蓄積されている。

 しかし、彼女の相棒は優秀な回復役だ。ナナのHPが一定値を下回ると、すぐさまアーニャによる回復魔法が飛ぶ。

 魔法を使った隙を狙ってアーニャに遅いかかる山賊も居たが、彼女は棘付きバットを両手で握ると、山賊が振るう斧に正面からぶつけた。

 鍔迫り合いの格好になり、お互いに力を入れて押し合う。

 普段は気弱なアーニャだが、彼女はこう見えて芯の強い娘だ。強面の山賊に睨まれながらも、気丈に睨み返して力を込め、斧を弾き飛ばす。

 そして、武器を失って隙だらけの山賊を、棘付きバットで殴り飛ばした。


「ご覧の通りだ。俺のフレをディスってんじゃねーぞ馬鹿野郎」


 おっさんの言葉に舌打ちするPK達。

 だがその時、遂に巨大なフィールドボスがおっさん達に襲いかかった。


「おっと危ねぇ」


 おっさんは素早くサイドステップで回避しつつ、山賊達に向かって射撃。PK達も通り過ぎる巨体を回避する。逃げ遅れた山賊が一人、巨大牛によって轢死。

 通り過ぎたフィールドボスはゆっくりと反転し、おっさん達の方に向き直ると再び突進を開始した。どうやらこの巨大牛は、全員を無差別に轢き殺すつもりらしい。


 おっさんのPT、山賊&PK達、フィールドボス。

 三つ巴の戦いが始まった。

なかなか執筆時間が取れなくて現状、週に1~2回更新が限界っぽいです。

そのうち忙しいのが落ち着いたら更新速度上がるかもしれませんが。

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