表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第一部 おっさん大地に立つ
18/140

謎のおっさん、ダンジョンに挑む(5)

「おう、お疲れさん」

「ああ。おっさんも勝てたようだな」


 おっさんとカズヤは合流し、お互いの勝利を称える。レッドは死に戻り、エンジェもダンジョンを脱出した。どさくさに紛れて、こそこそと宝を狙っていたアナスタシアも既に姿を消している。

 おっさんは部屋の中央に置かれた宝箱に手をかけ、蓋を開いた。おっさんが宝箱を開けると同時に、部屋の隅に次の階層へと向かう階段が出現する。だがまずは、宝箱の中身を確認するのが先だ。その中にあったのは……


「金貨に宝石にインゴット、こいつは魔法の糸か。それから鎧だな」


 大量の金貨と、幾つかの大きい宝石。鍛冶スキル用のインゴット、裁縫の材料になる魔法の糸がそれぞれ複数。最後に、革と鱗で作られた軽鎧だ。


「鎧だけくれ。ゴールドは山分けで、残りはおっさんが取っていい」

「気前が良いこったな。随分とこっちの取り分が多いようだが」

「いいさ。俺は生産スキルは料理くらいしか取っていないしな。それにこの鎧、なかなか良い品のようだ」


 おっさんが鑑定すると、鎧の品質は★×8。神器級だ。素材は獣革と毒蛇の鱗。軽い割に硬く頑丈で、毒に高い耐性を持つ逸品だ。

 カズヤの言葉に甘えて、おっさんは残りの品を手に取る。価値の高いアイテムが多い中で、おっさんは、インゴットに目を惹かれた。黄金に光り輝くインゴット。金のようにも見えるが、違和感を感じる。


「おいおいちょっと待てよ……こいつぁまさか……」

 

 手に取り、おっさんはそれを鑑定した。


――――――――――――――――――――――――――――――

 【オリハルコンインゴット】


 品質:★×8


 【解説】

 非常に希少なオリハルコンの延べ棒。

――――――――――――――――――――――――――――――


「やはりか……」


 おっさんは少し前に、坑道の採掘エリアで掘り当てた奴が居たと聞いた事がある。だが採掘でのドロップ率は0.01%未満とも噂されており、入手できる確率は極めて低い。おっさんも時間がある時に採掘は行なっているが、見たのはこれが初めてだった。


「いいねぇ……何を作るか楽しみだぜ」


 おっさんはそれを仕舞い込み、戻ってからの生産活動に思いを馳せた。だが、それもダンジョンを攻略してからである。

 気を取り直して、おっさんとカズヤは連れ立って次の階層を目指した。階段を降りる前に、おっさんは部屋の壁――そこには何もない――を一瞬見るが、すぐに興味を失ったように視線を逸らし、階段を下りた。


  ◆


「フムフム……なかなか良い物を手に入れたみたいネー」


 おっさんとカズヤが次の階層へ向かった後、彼らが戦っていた部屋に一人の少女が姿を現した。彼女の立っていた場所は、先ほどおっさんが目をやった場所だ。彼女は今まで、【隠密】スキルを使用して姿を消していたのだ。

 その人物は犬耳と尻尾を着け、忍者装束を着た金髪碧眼の少女、アナスタシアだ。


 彼女は最初、先頭のドサクサに紛れて宝箱を狙おうとしたが、それは早々に看破されて他の四人に警戒されていた。その状態で手を出すのは自殺行為だ。最悪、四人が一斉に襲って来かねない。

 ゆえにアナスタシアは、情報の収集を優先した。一切動かず、隠れる事だけに専念すれば彼女を見つけられる者などそうそう居ない。そのおかげで様々な情報を得られた。

 おっさんはどうやったのか看破していたようだが、見逃して貰えたようだ。


「まあお宝は残念だったケド……良いMovieが撮れたしOKダヨネー」


 アナスタシアは嬉しそうにニヤニヤと笑った。犬耳がピクリと動き、尻尾は彼女の上機嫌を表すかのように左右に揺れた。その付け根にある尻は形が良く、豊満であった。

 彼女は先ほどの戦闘の一部始終を録画していたのだ。


「早速Log outして編集するネー」


 なお彼女が大手動画サイトや、アルカディアの公式サイトに投稿した動画は再生数・コメント数共に一日で物凄く伸びた事は言うまでもない。



  ◆



 その後、おっさんとカズヤは危なげなく第三層を突破した。道中の宝箱からドロップしたアイテムは、生産素材をおっさんが、換金アイテムや現金をカズヤが受け取った。


「良い素材が結構出たな……っと、ボス部屋か」

「ああ。準備はしっかりしておこう」


 二人はウィンドウを操作し、新たにスキルやアビリティを習得し、HPとMPを回復させた後、料理アイテムを取り出して食べた。

 ダンジョンに入る前にクックから購入したビーフカレーだ。具材は牛肉と玉ねぎ、人参のみ。シンプルイズベストである。

 スパイスが効いており、とても辛い。

 辛いけど美味い?

 美味いけど辛い?

 いいや違う、そのどちらも間違いではないが正解とは言い難い。辛いから美味いのが正解である。

 その辛さをホカホカのご飯が中和する。圧力鍋でじっくり煮込んだ牛肉もたまらなく美味い。


「相変わらずよく食うなオメー。細い癖にどこに入るんだか」


 おっさんが呟いた。カズヤは細いがとてもよく食べる。ペットの食費も含めて彼のエンゲル係数はかなりやばい事にやっている。彼自身も料理スキルは持っているので、ある程度自力で賄えはするが。

 二人は食事を終え、食器を片付けてアイテムストレージに仕舞う。なおこのゲームの食器は食べ終わると勝手に綺麗になる為、洗い物は不要である。

 二人は全ての準備を整え、そしてボス部屋の扉を開けた。


 ボスは全身を筋肉の鎧と、そして炎に包まれた巨人の姿をしている。炎の精霊【イフリート】であった。その周囲には、取り巻きである数匹の火蜥蜴サラマンダーの姿もあった。


「こっちに気付いてねぇな。取り巻きから殺っていこうか」

「頼む」


 おっさんはアイテムストレージを操作し、新たな武器を取り出した。それは短剣でも、拳銃でもない。

 おっさんが装備したのは、長銃ライフル型の魔導銃であった。

 それは機関部や弾倉がグリップの後方に取り付けられたブルパップ方式になっており、独特なシルエットの狙撃銃スナイパーライフルであった。


「ワルサーWA2000か」

「おうよ。おっさんの正体は何を隠そうジェームズ・ボンドさ」


 ワルサーWA2000とは、1970年代に西ドイツで開発された狙撃銃である。オートマチック式狙撃銃でありながらボルトアクション式のそれに劣らぬ命中精度を誇り、高性能な狙撃銃として知られている。

 しかしその代償として、使用する部品が高精度・高価格で非常に高価な銃であり、また重量も非常に重いという欠点もあり、正式採用には至らず数年で生産が終了してしまった悲劇の銃である。

 スパイアクション映画の主人公が狙撃に使用していたり、近年ではアニメの主人公が使用していたりした為、若い世代でも知っている人は多いかもしれない。

 おっさんの狙撃銃は、そのワルサーWA2000を参考に設計・開発された物で、非常に似通った外見をしている。


 部屋の入口付近から、おっさんが狙撃銃で取り巻きのサラマンダーの内、一匹を狙い撃つ。眉間を狙った弾丸は僅かに逸れて頭に命中した。

 撃たれた火蜥蜴が怒ってこちらに向かってくる。それをカズヤが冷静に冷気属性の魔法で迎え撃った。弱点属性でダメージが倍加された魔法を受け、サラマンダーが力尽きる。

 おっさんは誤差を修正し、二匹目のサラマンダーは正確に眉間を撃ち抜いて一撃で仕留めてみせた。

 狙撃銃は扱いが難しく、手数も少ない。狙撃を行なっている間はほとんど身動きが取れないとデメリットも多い。だが射程の長さと、【魔導銃】スキルには弱点を狙った時にダメージを増加させるアビリティが充実しているのが強みだ。上手く嵌まれば、遠距離からの一撃必殺も可能である。


「一匹は残しておいてくれ。全滅させるとイフリートが再召喚してくる」

「おう、わかったぜ」


 一匹を残して、おっさんは火蜥蜴を狙撃して射殺する。時折僅かに狙った箇所から逸れるものの、それはカズヤが冷静に処理した。


「悪いな、狙撃は拳銃に比べると得意じゃねえんだ。銃の品質も7だしな」

「十分じゃないか?ソロだとまだ使いにくいかもしれないが」


 会話を交わしながら、二人は攻撃を開始する。おっさんがボスの頭を狙撃銃で撃つ。それと同時にカズヤが切り込んだ。

 イフリートの弱点である冷気属性の追加ダメージを与える剣、氷龍を入手できたのは、カズヤにとって幸いだった。カズヤは氷龍による攻撃と、氷属性の魔法を付与した魔法剣を軸に戦う。

 おっさんは狙撃銃から二挺の魔導銃剣へと武器を変更し、イフリートの側面へと移動する。連続で銃弾を撃ち込みながら、更にイフリートの背後を取った。火蜥蜴が鬱陶しく攻撃を仕掛けてくるが、そちらは回避しつつ放置する。


「【ファイアマジックシールド】」

「【クアドラショット】!」


 イフリートが炎を吐くが、カズヤは攻撃の手を緩める事なく、魔法で障壁を作ってそれを防御。同時にアーツで連撃を行ない、発動した魔法剣により更なる追撃を行なう。

 おっさんは左右の魔導銃剣から合計四発の弾丸を一気に放ち、それを背中の弱点に全て命中させた。

 やがて二人は、イフリートのHPが半分まで削るが、その時……


「ガアアアアアアアアアアッ!」


 イフリートが咆哮を上げる。そして取り巻きの火蜥蜴を、なんと自らの、炎を纏った巨大な拳で叩き潰した。それによって、取り巻きが全滅する。


「しまった……!召喚が来るぞ!」


 カズヤが言うやいなや、イフリートが取り巻きを一斉召喚する。その数――合計12匹。それらが一斉におっさんへと殺到する。


「チッ……まあいい、任せろ!おめーはそのまま本体を削れ!」


 おっさんは迫りくるサラマンダーの群れを、二挺の魔導銃剣を構えて迎え撃つ。

 まず四匹のサラマンダーが同時に襲いかかる。それをおっさんは格闘アーツ【旋風脚】で迎撃。回転蹴りで周囲を薙ぎ払う。

 だがその間にも右から左から、そして上から次々と火蜥蜴が飛びかかってくる。おっさんは未だ、システムによって設定されたアーツの動作中であり、成す術なし。

 しかしおっさんは、その最中に強引に体を動かそうとする。


 本来アーツを使用する際には【システムが設定した動きを、体が勝手になぞる】為、それ以外の動きをする事は出来ない。せいぜいが、攻撃の軌道を僅かに逸らす程度である。

 ――と、誰もが思い込んでいた。


「【出来ないと思い込んでいるから出来ない】。要するにそういう事さ」


 【マルチアクション】なるスキルの習得方法について、レッドはメールにそう記した。


「動け……動きやがれッ!!」


 おっさんの体はシステムによって設定された動きを忠実に繰り出している。軸足を踏みしめ、体を捻りながら回し蹴りで周囲を薙ぎ払う。一度発動したアーツの動きに、逆らう事は出来ない。

 だが少し待ってもらおうか。システムによって設定されているのは、あくまでも「その場で水平方向に度回転しながら、回し蹴りを繰り出す」という点のみだ。

 その場合、足腰は自由に動かせない。システムが設定した動きをなぞっているため、動きが制限されているからだ。

 ならば他の部分、たとえば目はどうだろうか。答えは、アーツ発動中であろうと自在に動き、周囲を見回せる。

 指は?折り曲げたり、伸ばしたり、握って拳を作ったりもできる。手首は?自在に動く。肘は?肩は?やはりそちらも自在に動く。

 ならば、やれる。おっさんは自由に動かせる部分を使い、アーツ発動中に更なる攻撃を繰り出した。


 右手で前方の敵へ射撃。その反動を利用し後方の敵へ肘打ち。左手で真上の敵へ射撃。そのまま左の敵を銃剣で切り裂く。右腕に噛み付かれるが、即座に左手の銃剣で頭を刺し、零距離射撃。

 そこで【旋風脚】のモーションが終了した。


「なんだ、やってみりゃあ簡単じゃねぇか。どうも年取るとアタマ固くなっていけねぇな」


 答えさえ分かっていれば、実に簡単な事だった。

 要するにおっさんも、アーツやアビリティを使用している間はシステムが体を勝手に動かしているため、全身の自由が効かないのだと思い込んでいただけに過ぎない。

 続いて更に三匹、左右と前方からサラマンダーが襲いかかるが、


「【チャージショット】」


 おっさんが銃のアーツ発動する。左右の銃から、同時に強力な弾丸を発射された。

 そして、それを行ないながらも足は自在に動く。おっさんは、チャージショットを放つと同時に前方の火蜥蜴を蹴り上げた。


『【マルチアクション】スキルの習得条件を満たしました』

「スキル習得・マルチアクション!」


 システムメッセージが表示されると同時に、システムコマンドを叫び迷わず習得する。初期アビリティとして二種類のアーツを同時に発動可能になる【ダブルアーツ】と、魔法の詠唱中に自由に行動する事が可能となる【フリースペル】が追加された。


 早速おっさんはその性能を試す。

 右手の魔導銃剣で短剣のアーツ【ライトニングダガー】を使用。雷を纏った素早い斬撃が火蜥蜴を斬り裂くいた。同時に左手の魔導銃剣で拳銃のアーツ【ダブルショット】を発動。別の火蜥蜴に向かって素早く銃弾を二連射する。


「成る程、こいつぁ便利だ……お?」


 そんなおっさんの前に、新たなシステムメッセージが流れた。


『システムによる新たな武器スキル【魔導銃剣】の作成を完了しました。同時にプレイヤー名【謎のおっさん】に【魔導銃剣】を付与する準備が整いました。今すぐに習得しますか?』


 おっさんは迷わずYesを押した。


『【魔導銃剣】スキルを習得しました』

『アビリティ【魔導銃剣マスタリー】を習得しました』

『これまで通り、魔導銃剣では銃と短剣のアビリティおよびアーツを使用可能です。それ以外にも、魔導銃剣専用のアーツ・アビリティが登録されました』

『魔導銃剣専用の奥義アーツ【ストームラッシュ】を習得しました』


 おっさんはシステムメッセージに一瞬で目を通し、二挺の魔導銃剣を握りしめて残る火蜥蜴を掃討した。


 一方その頃カズヤは、急激に激しさを増したイフリートの攻撃を受け流しながら、打開策を練っていた。火蜥蜴は全ておっさんの元へと向かった為、どうにか抑える事が出来ている。とはいえ両手の剣は防御に回しており、魔法でどうにかイフリートのHPをちまちま削っているのが現状だ。

 しかし、そこにおっさんが全ての火蜥蜴を片付けて戻ってきた。それと同時に取り巻きを全て倒されたイフリートの攻撃が更に激しくなる。イフリートは腕を大きく振り回しながら、火属性の範囲魔法を連発する。

 おっさんは戻ってくるなり、カズヤに向かって言う。


「待たせたな。一気に決めんぞ」

「それはいいが、倒し切れるか?」

「どっちにしろ、このまま防御に回ったらジリ貧だ。ならリソース全部ブチ込んで、勝負を決めに行こうじゃねえか」

「……尤もな意見だ。従おう」


 おっさんとカズヤはそれぞれの武器を構えながら、イフリートの懐へと飛び込む。


「早速使わせて貰うぜ!【ストームラッシュ】!」


 おっさんはイフリートの懐に飛び込みながら、新たに習得した魔導銃剣専用の奥義を使用した。その効果によりおっさんの移動速度・攻撃速度が大きく上昇し、【バレットカーニバル】には劣るものの銃の連射性能も大きく上がる。

 その効果によって、おっさんは次々とイフリートを切り刻み、また機関銃のように銃弾をバラ撒きながらイフリートの体を蹴り、その巨体を登っていく。


「行くぞ、【パーフェクトエンチャント】」


 カズヤが、一分間だけ魔法剣の発動率を100%に、効果の減衰率を0%にする魔法剣の奥義を発動。更に彼は、続けて二刀流の奥義を発動した。


「【ダブルエクスキューション】!」


 片手剣二刀流専用の奥義。大きく飛び込みながら、左右の剣で同時に強烈な刺突、更に交互に振り回しながら舞うように連続で切り刻む、十七連撃技。パーフェクトエンチャントの効果によって、それら全てに魔法剣が乗り、更にその間に通常の魔法による攻撃も同時に行なっている。

 おっさんはその間に、イフリートの体を駆け上がって頭の上へと到達する。当然おっさんも、その間にも連続で攻撃を行なっていた。

 そしておっさんは、イフリートの頭を蹴り、大きく上空へ。真上からイフリートに向かって、銃に装填されている、残った銃弾を全て撃ち尽くす。


「GOAAAAAAAAAAA!!」


 イフリートは大きくHPを減らしながらも、上空のおっさんに向かって、咆哮と共にその炎を纏った巨大な拳を全力で突き上げた。

 おっさんに逃げ場は無い。そこでおっさんは上空で、なんと自身の体へと銃口を向け、引き金を引いた。

 すると、おっさんの体が大きく上へと吹き飛ばされる。おっさんが使ったのは銃のアーツ、【ウィンドショット】だ。本来は銃口より風を放ち、ごく小さいダメージと共に敵を大きく吹き飛ばす事で、敵と距離を取る技。おっさんはそれを自身に向けて使用する事で、自らの体を吹き飛ばして高く跳躍したのだ。

 それによってイフリートの拳は空振り、おっさんは天井近くまで吹き飛ぶ。


「こいつで……」


 おっさんは空中で回転し、上下逆さになって天井に足を付ける。そしてその足は、天井を力強く蹴った。同時に、左右の魔導銃剣に銃弾を再装填する。


「終わりだ!【ピアッシングダガー】!」


 おっさんは急降下しながら、二挺の魔導銃剣を突き出す。それはイフリートの頭に、根元まで垂直に突き刺さった。

 同時に、おっさんに気を取られていたイフリートの足元では、カズヤが彼の最も得意とする奥義を放つ準備を、既に終わらせていた。


「終わりだ!【飛天龍王撃】!!」

「合わせるぜ、【バレットカーニバル】ッ!」


 カズヤが、彼の二つ名の元となった、最も得意とする奥義【飛天龍王撃】を放つ。それと同時におっさんはイフリートの頭上で、銃剣を深く突き刺した状態で彼の愛用する奥義を発動させた。

 上下からの凄まじい連打をまともに受けて、イフリートの体が崩壊していった。


「グ……オ……ォォ……」


 二人の奥義が終了し、おっさんがカズヤの隣に着地する。虫の息のイフリートは、それでもなお二人に向かって拳を振るおうとするが……


「しつけぇんだよクソ野郎!」


 おっさんはその拳に手を添え、イフリートの巨体を投げ飛ばした。それでイフリートのごく僅かに残ったHPが0になった。イフリートは地面に叩きつけられながら「解せぬ」とでも言いたそうな表情を浮かべて消えていく。まさかの合気〆であった。

 

 二人に大量の経験値やゴールド、豪華なドロップアイテムが入った。そして、それと同時にシステムメッセージが流れる。


『【カズヤ】さん、【謎のおっさん】さんにより、【火霊窟(上級)】がクリアされました。これにより新エリア【大陸西部エリア】が開放されました。』

『上級ダンジョンを最初にクリアし、新エリアへの道を拓いたプレイヤーの方々には称号スキル【大陸西部の解放者】が付与され、更に名声値が大幅に上昇しました』


 そして、ふたりの前には『今すぐに、新たなエリアに転送しますか?』のメッセージが現れる。

 カズヤは「No」のボタンを押し、おっさんに尋ねる。


「俺は一度落ちて、後から向かうとしよう。おっさんはどうする?」

「そうだな……折角だから俺は行ってみようかね」

「そうか。それじゃあまたな。世話になった」

「おう。先に行ってるぜ」


 二人はパーティーを解散し、ドロップアイテムを分配する。そして、おっさんは、「Yes」のボタンを押した。するとおっさんの体が、光に包まれ転移する。


 転移は一瞬で終了した。光が収まり、おっさんはゆっくりと目を開く。おっさんの目の前広がっているのは、新たに解放された大陸西部エリア。

 そこにあったのは、一面の荒野であった。


(第一部 完)

今回長ぇ。

そして微妙にスランプ気味です。後で手直しするかも。


とりあえずダンジョンやっと終了&第一部おわり。

おまけ少しやった後に第二部に入ろうと思います。

第二部はおっさんが新エリアの荒野を進みます。その先に何があるかは次回以降のお楽しみって事でひとつ。


(2015/3/1 改稿)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ