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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
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戦火の記憶!

 西暦2020年、欧州は最終戦争の業火に包まれた。

 欧州連合(EU)は崩壊・消滅し、欧州全土や中東・アフリカの一部を舞台に、いたるところで大規模な戦いが巻き起こった。

 一月から始まったその騒動は、その年の年末に、ようやく終局を迎えようとしていた。


 その最終局面において、追い詰められた英国イギリスは恐るべき最終兵器の使用に踏み切った。

 その兵器の名は【ゴライアス】。

 全高およそ300メートル、総重量1000トン超、数多の人員と物資、兵器を搭載した、まさに動く城である。

 コストパフォーマンスは最大限オブラートに包んで言っても最低最悪としか言いようのないキワモノではあったが、その火力は過去のあらゆる兵器を凌駕する、まさに最終兵器と呼べる代物だった。


 だがその英国の秘密兵器は、ドーバー海峡を渡ろうとした寸前に謎の大爆発を起こし、グレートブリテン島の一部を巻き込んで消滅した。

 あまりにも大規模な爆発により現場検証が不可能であり、当然のように乗員も全員死亡していた為、詳細は不明だが搭載されていた兵器が暴走し、自爆したのが原因と見られている。

 それによって英国の敗戦は決定的……というより、最早戦争どころではなくなり、戦いは終わった。

 それから20年後の現在、2040年において件の兵器、ゴライアスは「超巨大パンジャンドラム」「人類史上最大の失敗兵器」「大英帝国失墜の原因」「英国面の極み」等々、様々な不名誉な渾名で呼ばれている。


 だが実際は、歴史の闇に葬られた真実があった。

 2020年12月24日。若き日の不破恭志郎はその日、ドーバー海峡を背に、完全武装で山のような鉄の塊を見上げていた。


  *


 そして時は流れ、2040年の夏。

 あの日と同じように、おっさんは巨大兵器と一体化した雷神を見上げていた。


「全く、そっくりなシチュエーションだ。あん時とは違って、アイザックのアホも煌夜のクソも居ねぇが……代わりにあいつらのガキは居るがな」


 おっさんがそう呟いた時、チャットアプリがお気に入りのロック・ミュージックの着信音を鳴り響かせた。このチャットアプリはVR機器にプリインストールされており、現実世界の人間とも通話や文字によるチャットが可能である。

 そのアプリのウィンドウの、発信者の名前を表示する欄には、悪友でありこのゲームの開発者、四葉煌夜の名前があった。


「なんだクソ野郎」


 おっさんが通話ボタンを押し、開口早々に悪態をついた。


「よう。懐かしい気分にならないか?あの時もこうやって、作戦前にお前に通信したよなぁ」

「そうだな。それで何の用だ?今回も自爆プログラムを用意してくれたのか?」

「いいや、残念ながらそれは無いんだ。勿論ジャミング装置も緊急脱出用の飛行ユニットも無い。今回は身一つで頑張ってくれ。俺は応援する事しか出来ないが、お前なら出来ると信じてるぜ」

「……気色悪いんだよ。さっさと本題に入りやがれ」

「今週末に飲みに行くぞ。負けたらお前のオゴリな!つー訳でさっさと負けろ!」

「オーケー、俺が勝ったらテメーの金で朝まで飲むぞ。ATMで貯金下ろして待ってろハゲ」


 その時である。彼らがお互いを口汚く罵りあったところで、その会話に割り込む者が居た。


「ちょっと待った。その勝負、僕も混ぜて貰おうかな。」


 その声の主は、アイザック・フォークナー。おっさんにとっては数少ない、親友と呼べる男だ。アナスタシアことマリア・フォークナーの父親でもある。


「僕は恭志郎の勝ちに、ロマネコンティのボトルと花京院の魂を賭ける」


 何と言う事か、アイザックはおっさんと煌夜の賭けに割り込み、最高峰のワインと花京院の魂をベットするという暴挙に出た。

 彼の発言に戦慄する二人だったが、そこで臆する彼らではない。当然のように受けて立つ!


「いいだろう、俺はヴォルトの勝利にドンペリ・プラチナと花京院の魂を賭ける!」

「上等だ、俺は当然、俺の勝ちにマッカランと花京院の魂を賭けるぜ!」


 彼らもまた、秘蔵のコレクション酒と花京院の魂を提示し、ここに賭けは成立した。


「ふっ……じゃあ二人とも、僕も週末にそっちに行くよ。それとグッドラック、恭志郎。君の戦いをじっくりと見させて貰うよ。勿論、ポップコーンとコーラは準備済みさ」

「ま、精々頑張れや。そして負けて死ね!」

「カス共が!」


 舌打ちをしながら通話を切って、おっさんは動かない機械の右腕を、力任せに取り外して放り投げる。


(全く、何から何まであの時とそっくりだ。あの時も、馬鹿みたいにデカい敵を前にして、こんな馬鹿話をしたんだったな)


 懐かしい気分に浸りながら、おっさんはアビリティを発動させた。


「【FoW:世界の破壊者(デストラクター)】!」


 黄金の光が溢れ出し、おっさんの身体を包む。

 次の瞬間、そこに現れたのは二十歳の不破恭志郎。人喰い鴉(レイヴン)と呼ばれた、地上最強の男だった。

書籍化作業がひと段落ついたので投稿。幕間&茶番会。

俺は今月中にもう一本投稿できる方に花京院の魂を賭けるぜ。

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