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謎のおっさんオンライン  作者: 焼月 豕
第三部 おっさん戦場に舞う
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36.女体化テロリスト(2)


 炎神イグナッツァをTS弾で狙撃し、トップレス褐色美女へと変身させたおっさん(現・幼女)は、そのままイグニスの街から飛び立った。

 そして各地で通りすがりの、罪の無いプレイヤー&NPC達に次々とTS弾や子供化弾をシューッ!する暴挙を働きながら、おっさんは気の向くままに各地を放浪していった。

 すぐに【アルカディア放送局】をはじめとする情報屋たちによって、その事実が各プレイヤー達に伝えられ、彼らはそれを聞き、すぐに対トッププレイヤー用警戒態勢を取った。



 さて……ところ変わって、ここは大陸北部にある大森林。その中心にある、エルフの村付近である。

 現在、ここではギルド【流星騎士団】とエルフ達が共同で防衛戦を行なっていた。


 先日実装された、ランダムで発生するモンスターによる拠点襲撃イベント。その対象にはエルフ達の集落も含まれており、割と頻繁に襲撃されている。

 そして、そのエルフ村を狙うモンスターだが……その正体は、エルフと同じく大森林に棲息し、拠点となる村を持つモンスターである。

 そのモンスターの名は……


「エルフ村を襲撃するブヒイイイイイイ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」

「エルフの美少女をお持ち帰りするブヒイイイイイ!」

「持ち帰って嫁にするブヒイイイイイイ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」


 彼らは二足歩行の人型タイプの魔物であり、粗末な鎧や斧を装備している。やけにテンションが高く、ブヒイブヒイと欲望にまみれた下品な叫び声を上げている。そしてその顔は、どこからどう見ても豚のそれであった。

 もうお分かりであろう。彼らの名はオーク。ファンタジー物では定番の雑魚モンスターであり、触手生物と並ぶエロ担当だ(偏見)。

 オークは一般のイメージとは異なり、普段は物静かだが、エルフ村を襲撃する時や、視界に好みの女性キャラクターが入った時に限り、その本性を露にする。


「豚どもが来たぞおおおお!」

「盾構え!防衛開始ぃ!」

「弓隊、斉射用意!まだ撃つなよ……もっと引きつけてからだ……」


 エルフ村の手前にて、待ち構えていた防衛部隊とオーク軍団が接敵し、戦闘を開始する。盾を構えた流星騎士団のメンバーがオークの突撃を受け止め、エルフ達は後方から弓や魔法でそれを援護する。

 そんな防衛隊の先頭にて、シリウスは最も多くの敵と同時に戦いながら全体の指揮を執っていた。


「もうすぐボスが来ます!回復とバフのかけ直し、大魔法の詠唱準備を!」


 自身の周囲を囲む三匹のオークを、魔剣カオスジェノサイダーで纏めて薙ぎ倒しながら、シリウスが叫ぶ。

 いつものパターンだと、このタイミングで敵の中ボス、オークジェネラルが取り巻きと共に出現するはずだ。

 次の瞬間、シリウスの思惑通りに、だが彼の予想の遥か斜め上を行く存在が、彼らの目前に現れた。


「フハハハ!進め豚共ぉ!進撃せよ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」


 シリウスの予想通り、現れたのはオークジェネラルと、その取り巻きのオーク達だ。

 だが普段とは異なる点が一つ。彼らは集団で神輿みこしを担いでおり、その神輿の上には鞭を振り回し、オークに命令を下す幼女の姿があった。


「あれは……報告にあった、幼女化したおっさん!?」

「ちょwwおっさん何やってんすかwwwww」

「おいwwwあのオークジェネラル、おっさんにテイムされてるぞwww」


 異常事態を目の当たりにして、防衛に当たっていた流星騎士団のメンバーが一斉に噴き出した。ちなみにオークジェネラルは先程、出現すると同時に偶然そこを通りかかったおっさんに幼女ブヒイイイイと襲いかかり、あっさりとボコられた挙句にテイミングされ、おっさんの下僕テイミングモンスターと化した。

 そしておっさんの命令により、配下のオーク軍団と共に幼女神輿を担ぐ羽目になり、今に至る。


「おっさん、何しに来やがりましたか!?」

「知れた事!シリウスよ、お前を女体化させに来た!」


 シリウスの問いに、神輿の上から堂々とそう返し、おっさんはTS弾の装填された狙撃銃を構えた。


「ぜ、全員カバーリング準備!」

「団長を守れー!」

「でも団長のTSならちょっと見たいかも」


 シリウスを守るべく、騎士団員がおっさんの前に立ち塞がる。だが……


「邪魔だ三下ども!」

「「「うわああああああああ!」」」


 おっさんが錬金術で地面に大穴を開け、彼らを地の底に案内する。それと同時に、おっさんはシリウスの額に狙いをつけ、TS弾を放った。


「その程度!」


 性格無比な射撃。だが、その程度ならば防げないシリウスではない。最小限の動きで素早く騎士盾を構え、防御アビリティを発動させて射撃を無効化する。やはり、彼の守りを突破するのは生半可な攻撃では難しいだろう。


「団長、援護します!背中は俺に任せて下さい!」

「ああ、よろしく頼……」


 その時、シリウスの背後から騎士団のメンバーらしき、赤い髪の青年が声をかけてきた。

 シリウスは咄嗟にその言葉に頷き、彼に背後の守りを任せて、おっさんの攻撃に集中しようとして……そこで、ふと違和感に気付いた。


『こんな奴、うちのギルドに居たか?』


 ふと浮かんだその疑問。シリウスは百人を超える大規模ギルドのマスターでありながら、そのメンバー全員の顔と名前、特徴をしっかり把握している。

 緊急事態のため、ちらりとしかその姿を見ていないが、たった今、背後から話しかけてきた男は、シリウスが知っているギルドメンバーの誰とも一致しない。

 だが、どこか見覚えがある顔と雰囲気だ。


 そこまで考えたところで、シリウスは自分の首筋に何かが刺さるのを感じた。


「お、前、は……」

「クックック……計 画 通 り」


 振り向いたシリウスが見たものは、空になった注射器――中身は既にシリウスに注射済みだ――を手に、ニヤニヤとゲスい笑顔を浮かべる赤毛の青年。

 非常に端整な、よく見覚えのある顔だ。そして、その頭上に目をやれば、やはり見慣れたプレイヤーネームが表示されている。シリウスは怒りと共に、その名を叫んだ。


「レッドぉぉぉぉぉぉぉ!謀ったなレッドぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ふははは!シリウス、君は良き友人だったが、君の父上がいけないのだよ」


 シリウスが振るう魔剣をひらりと躱して、赤毛の青年――シリウスの目を欺くため、既にTS薬を飲んでいたレッド――はおっさんの乗る神輿に飛び乗り、おっさんとハイタッチを交わした。


「グッジョブだぜレッド!正面からあいつの防御を抜くのは骨が折れるからなァ」

「いいって事よ。俺とおっさんの仲じゃねえか」

「よし、それじゃあずらかるぜ!オーク神輿隊、反転後退せよ!」

「ブヒイイイイイイイイ!」


 おっさんの命令に従い、神輿を担ぐオーク達が向きを変える。


「全員、逃がすな!すぐに追撃を……」


 シリウスは、そんな彼らの逃亡を阻止すべく、騎士団員に追撃命令を下そうとする。

 しかし、そんなシリウスの行く手を阻む者達がいた!


「姫騎士ブヒイイイイイイイイ!」

「お持ち帰りブヒイイイイイイ!」

「嫁にするブヒイイイイイイ!」

「「「ブブブブヒイイイイイイイイイイ!!!」」」


 オーク軍団だ!

 シリウスは現在、TS薬を注射された事によって女性と化しているのは既に知っての通り。

 それに加えて思い出してほしい。彼が元々【王子】と呼ばれているように、線の細い金髪の美少年である事。そして片手剣と盾、重い鎧を装備して防御主体の戦い方をする騎士である事を。


 そんな彼が元になって、女体化した現在のシリウスの姿は……金色の長い髪に、小柄でスレンダーな体型の、騎士甲冑を身に纏った美少女であった。

 そう、オークの大好物……姫騎士と呼ぶに相応しい、高貴で可憐な姫君と、勇敢で清廉な騎士という二つの異なる魅力を併せ持つ、そんな姿へとシリウスは変化していた。


 それを見たオーク達は奮い立ち、空前絶後の勢いでシリウスに襲いかかった。

 そんなオーク達をどうにか撃退し……気付いた時には既に、おっさん達の姿は影も形も見当たらなかった。

 シリウスは城に戻り、泣いた。

 なお、カエデに膝枕で慰められて機嫌は治った模様。もげろ。

もげろと言ったけど今はもぐべき物が無かったという事実。

カエデの方も姫騎士っぽい妹が出来たみたいで満更でもなかった模様。

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